2024年度 電気通信大学 情報理工学域 Ⅱ類 編入試験 合格体験記(一般)

こんにちは。
この度、電通大の編入試験に合格したため、体験記を書こうと思います。
受験から1年以上経って書き始めているので、若干不正確なところがあるかもしれませんがご容赦ください。


自己紹介

名前:T
出身高専:小山高専
席次:1-5年までほとんど3位
TOEIC:835(4年10月時点)

受験した大学
・筑波大学 工学システム学類(不合格)
・電気通信大学  情報理工学域 Ⅱ類(合格)
・東京都立大学 システムデザイン学部 機械システム工学科 知能機械コース(合格)
・小山高専 専攻科(合格)

志望動機

第一志望は筑波大だったのですが、滑り止めとして何校か受験しようと考えていました。電通大(と都立大)に決めた理由としましては、
・都内の大学であること
・受験科目が筑波大から大きく逸脱しないこと
・興味のある研究室があったこと
などがあります。

受験までの流れ

1-3年半ば

 1年生から3年生の間は、これといった受験対策はしていませんでした。というのも、低学年の頃は進学ではなく就職を考えていたので、特にリサーチ等は行っていません。ただ、TOEICだけは1年生の頃から何度も受け続けており、これが後の自分を助けることになりました。1年の終わりに受けたIPテストが450点ほどで、そこから何度か受験を重ねて3年8月に初めて公開テストを受け765点でした。

3年春休み

 確か3年生の後半、面談か何かの時に担任の先生に「この成績なら当然編入するんでしょ?」的なテンションで言われて、そこで初めて編入を選択肢に入れ始めました。その後、編入対策の参考書などをいろいろ調べて、春休みに「編入数学徹底研究」に手を出しました。ですが、章末問題などが難しすぎて歯が立たず、3章ほどしか進められなかったと思います。

4年前期-夏休み

 学期の初めは勉強する気満々だったのですが、4年から実験が始まり、レポートに追われて5月ごろからほとんど編入勉強に手を付けられませんでした。性格上高専の定期テストを捨てられなかったのも影響していると思います。夏休みに入っても、インターン×3・部活の大会準備・研修旅行などイベントが多くあり、勉強に手が回せませんでした。

4年後期

 夏休みが終わり、全然勉強できていないことに焦りを感じていたので、勉強を徐々に再開していきました。まず、受験で使うTOEICのスコアをいち早く確定させておきたかったので、10月にTOEICを受験しました。スコアは835だったので、これを提出することに決めました。
 徹底研究の勉強も進めていたのですが、あまり集中して勉強できている感じがしなかったので、自らを追い込むために数検1級を申し込みました。今となっては、あまりいい選択とは言えないと感じています。というのも、数検1級は大学レベルの微積・線形等を含んでいるため編入試験と被るポイントもあるのですが、自分が使う予定のない確率統計などの問題も出題されるため、そのような分野の勉強に真剣になることができませんでした。(結果、数検にも受かりませんでした…)
 徹底研究は、サボりつつも12月くらいまでには1周終わらせていたと思います。物理の勉強は春休みに入るまでほとんどしていません。

4年春休み

 学年末試験も終わり、ここから本腰を入れて勉強を始めました。電磁気の理解が圧倒的に足りないと感じていたので、マセマをノートにひたすら書き写すという狂気の勉強法をしていました。並行して力学や熱、複素関数などを勉強していました。3月には過去問にも少しづつ手を出していたような気がします。時間は測らず、とりあえず自分の持っている知識で解けるかを試していました。
 春休みが終わるころに、受験校を筑波大・電通大・都立大・専攻科に確定しました。個人的には、最低でも3校、できれば4校以上を受験するべきと思います。というのも、編入試験は受験者数も少なく科目数も少ないため、運の要素が強いからです。スケジュールや受験科目の被りなどを意識して、多めに受験しておくことでリスクを減らせます。国立大学を併願可能な編入の強みを生かしましょう。(受験料はその分かかるので受けさせてくれた親に感謝)

5年4月-本番

 授業が始まったので春休みに比べると勉強時間は減りましたが、なるべく取り組むようにしていました。4月は電磁気学演習(黄色い本)をメインで行い、編入数学過去問特訓などもやっていました。5月からは時間を測りながら過去問に取り組む時間を増やし、理解の足りないところを復習するというスタイルで本番まで勉強しました。専攻科の試験のみ専門科目が出題されるため、その対策も行いました。
 勉強とは直接関連ないですが、いくつかの大学に研究室見学をしに行きました。具体的には、3月に東北大、5~6月に筑波大・電通大に行きました。東北大のオープンラボで見学に行った際に、行きたい研究室の先生が定年が近く大学院まで指導を受けられないと聞き、スケジュールとも相談し受験を断念しました(東北や東工は8月後半のため)。筑波大は直接教授の先生にメールでアポを取り、見学に行きました。研究にかかわる様々なお話に加えて、編入試験に関することも少し教えていただきとてもありがたかったです。電通大は5月ごろにオープンラボを行っていました。こちらでも様々な研究室のお話を聞かせていただいたほか、過去に編入した先輩からもいろいろ聞くことができ、とても有意義でした。編入を考えている人は、ぜひ研究室見学に行ってみることをおすすめします。大学や研究室の雰囲気を知ることができモチベーションが上がるほか、編入試験に関する情報もゲットできるかもしれません。

試験本番

前日

前日は、調布の隣駅近くのホテルに宿泊しました。ホテルでは電磁気学の問題や英作文等を軽く復習しました。

当日

かなり緊張はしていましたが、面接試験がないのでそういった意味では気楽でした。

〇試験内容
・数学
1. 三次正方行列の逆行列、n乗に関する問題
2. 連立四元一次方程式の解および線形写像の核と像に関する問題
3. 2変数関数の極値、陰関数の接線、陰関数の微分
4. 重積分、広義積分
5. 複素関数、留数定理
当初は線形代数を捨てるつもりでいましたが、問題を見たときベクトル空間を含む2.の内容が解けそうに感じたことと、複素関数の問題でぱっと開放が浮かばなかったので5を捨てて1,2,3,4を選択しました。広義積分でミスしてしまったこと以外は、悪くない感触でした。
自己評価:100/120

・物理
1. 速度の二乗に比例する抵抗を受ける質点の運動
2. 平行に並べた円筒導体の間の電位、電場、はたらく力など
3. オットーサイクルの熱量、仕事、熱効率
力学はちゃんと解けて、アツい!ってなってました。運動方程式解いてグラフも書かせる問題でした。微分方程式解ければいけるやつ。電磁気はつかみどころがない問題で、一応解けましたがあまり自信はなかったです。熱は少しミスったかな程度でした。
自己評価:70/90

・英語
1. 英文を要約した日本語の文章の穴埋め(ロボットに関する文章)
2. 自由英作文、2テーマから一つ選ぶ
1番はなんとなくで穴埋めをしました。2番は文法の間違いを気にしすぎず、書きたいことを書きまくりました。文量は多くかけましたが間違いは多かったと思います。書けないよりはマシ。
自己評価:70/90

受験直後は、かなり好感触だったので受かっただろうと思っていましたが、合格発表が近づくにつれ自信がなくなっていきました。

合格発表

研究室で友達と一緒に発表を見ました。(専攻科を除いて)最初に頂いた合格だったので、とりあえず大学に行けるということでとても安心しました。

点数

編入した後に点数を開示してみました。

結果、まさかの1位でビビってます。(Ⅱ類受験者35人中)
物理が思ったよりだいぶ高く、英語が低かったです。
このくらい取れる力があれば、余裕をもって合格できるかなと思います。

出題傾向

電通大の編入試験は、数学・物理or化学・英語の3つで構成されています。物理と化学はどちらか一つを選択する形式なのですが、化学の問題は大学レベルの難しい問題のため、化学を専門としている人以外はほとんど物理を選択する印象です。私も物理を選択しました。
ちなみに、面接試験についてはⅠ類とⅡ類は面接がなく、Ⅲ類のみ面接ありという形になっています。

数学

数学は大問5つで、大まかに
1・2:線形代数
3・4:微分積分
5:複素関数
という分類になっています。このうち4つを選んで回答する形式です。
分野別に詳しい出題傾向を説明します。

〇線形代数
線形代数は大問が2つあり、片方が行列の演算に関する問題、片方がベクトル空間の問題です。線形代数でベクトル空間まで出題範囲に含まれている大学は多くないので、難しい印象です。基底や表現行列、核と像なども出題されます。パターンとしては、線形代数の2問のうちどちらかを捨てて、それ以外を回答するという方が多いです。

〇微分積分
微分積分の出題傾向は様々ですが、出やすい分野としては
・偏微分、陰関数
・重積分
・微分方程式
などがあります。難易度は標準か、やや難しい程度だと思います。個人的には、微積の2問は両方解くのを目指すことをお勧めします。

〇複素関数
複素関数は、主に留数定理を用いて積分を求めるオーソドックスな問題が多いです。複素関数を授業でやらない高専も多いので捨てたくなるかもしれませんが、一度勉強してしまえばそこまで問題を解くことは難しくないのでぜひ勉強することをお勧めします。

物理

物理は、
1:力学
2:電磁気学
3:熱 or 波動
という大問構成となっています。(1と2は逆になるかも)大問3に関して、募集要項では現代物理学なども出題範囲としていますが、一度も出たことがないので勉強する必要はないと思います。波動についてもH31年度の試験で一度出たきり出題されていないので、他の大学の試験で波動が出題される人以外は勉強しなくてもいいと個人的には思っています。自分は波動ノー勉で行きました。


英語

英語は大問2問構成です。1つ目が英語の長文を和訳した文章の穴埋めで、2つ目が英作文です。英作文は、あるテーマに対して賛成か反対かなどの立場をとって作文する形式です。
正直なところ、英語がそれほど苦手でなければ大問1のための勉強はほとんど必要ありません。というか簡単すぎて差がつかないと思います。逆に、大問2の英作文は、しっかり練習をしていないと書くのは厳しいです。自分は英作文対策のみをしっかりやりました。後述する参考書を使用して英作文の型を覚えこみ、過去問で書いた英作文を先生に頼んで添削してもらったりしていました。


使用した参考書

自分が編入試験対策で使用した参考書をまとめます。個人的評価も5点満点で載せておきます。

数学

〇編入数学徹底研究 ★★★★☆


 言わずと知れた編入受験生のバイブル。とりあえずこの本の内容をしっかり理解して問題を解けるようになっていれば、たいていの大学の編入試験に必要な知識としては十分だと思います。「徹底研究ぐらいはできて当たり前」みたいなスタンスの頭いい人たちもいますが、僕個人としては初見は結構難しかったのでわからなくても焦らず勉強していけば大丈夫です。

注意点としては、以下が挙げられます。
・章末問題を無理に解く必要はない
・試験の出題範囲に絞って勉強する
 特に前者に関しては、自分が一番引っかかったポイントなので注意してもらいたいです。特に1章の章末がゲロムズで、まじめに理解しようとして何日も費やしてしまった記憶があります。(これで出鼻をくじかれました…)      この本の目的は、編入試験に出題される数学の基本的知識を演習を交えて網羅的に理解することだと思います。本格的な演習を行う際は、編入試験の過去問や後述する過去問特訓などの参考書を利用することをお勧めします。

 また、あくまでこの本は演習問題がメインなので、教科書のような詳細な解説が載っているわけではないです。この本でわからないことがあったらまずは高専の教科書などに立ち返って理解するのが良いと思います。加えて、徹底研究の解説を中心に様々な編入数学の解説をyoutubeで行っているわんみんというチャンネルがあります。この方は2023年度に東大に編入された方で、解説動画がすごくわかりやすいのでお勧めです。自分もたくさん助けられました。


〇編入数学過去問特訓 ★★★★★


編入数学徹底研究と並んで編入受験生に人気の参考書です。この本には大学編入試験の過去問が大量に載っており、簡単な順にA, B, Cとランク付けされています。電通大編入を目指す方であれば、B問題までは解けるようになっておくといいと思います。この本のメリットは、「解答付きの」過去問を使って演習を行える点です。誰しも過去問には取り組むと思いますが、基本的に過去問には解答解説がありません。この本で様々なパターンの問題に慣れておくことで、本番に対応できる力がつくと思います。


〇工学系学生のための 複素関数攻略への一本道 ★★★★★


個人的に、複素関数の参考書の中でおすすめしたい本です。特に、複素関数を手早くパパっと勉強して留数定理を利用した問題が解けるようになりたい!という方にピッタリの本だと思います。自分は最初マセマの複素関数を使用して勉強していたのですが、留数定理の章に到達するまでが長い印象を受け、途中でやめました。その点、こちらの教科書はあまり脱線することなく一本道で学習を進められるので、電通大の編入試験対策としては優れていると思います。自分はこの本と、ヨビノリというyoutubeチャンネルの授業動画を並行して視聴し勉強を進めました。

〇マセマ 複素関数 ★★☆☆☆

こちらは有名なマセマシリーズの複素関数版です。最初は自分もこちらを使って勉強していたのですが、複素関数の性質や等角写像・リーマン面などあまり受験では必要のない知識が多く出てきて、モチベーションが保てなかったので乗り換えました。とはいえ複素関数を勉強するには良い本だと思うので、マセマのスタイルが合う人は使う価値があると思います。

物理

〇大学生の初等力学 ★★★★★


この本は大学の編入試験の過去問を題材とした演習本です。編入試験でよく出るパターンの問題を網羅していて、非常に役に立ちました。力学版の「徹底研究」ともいえるんじゃないかと思います。解説も丁寧でわかりやすく、ぜひおすすめしたい一冊です。
(余談ですが、2024年度の筑波大工シスの編入試験ではこの本と全く同じ問題が出たため勉強していた人は簡単に解けました。)

〇演習 力学 ★★★☆☆

大学生の初等力学と並んでよく使われる力学の問題集です。こちらは少しレベルが高く難しい問題が多い印象です。電通大のレベル感であれば大学生の初等力学で十分だと思いますが、もっと上のレベルを目指す人や大学生の初等力学が終わってもっと演習を重ねたい人におすすめです。自分は最初この本で勉強していたのですが、途中で大学生の初等力学に乗り換えました。


〇マセマ 電磁気学 ★★★★★

マセマシリーズの電磁気学版です。受験までの流れのところでも触れましたが、自分は電磁気学の基礎的な知識が抜け落ちている自覚があったので、問題演習を始める前に一度しっかりとインプットをしようと思い、この本で勉強しました。

〇電磁気学演習 ★★★★☆

いわゆる「黄色い本」。編入試験で出題されるような問題をほとんどカバーしているので、非常に役に立ちました。難易度は結構高めで、この本の内容をマスターできれば電通大より上のレベルの大学も全然目指せると思います。

〇基礎物理学演習Ⅱ ★★★☆☆

電磁気学演習が図書館になかったので最初はこの本で電磁気の演習をしていました。これ自体はよい参考書だと思いますが、こと編入試験の電磁気の演習においては電磁気学演習の方がカバーできる範囲も広く解説も丁寧なのでこちらを使う理由はあまりないかなと思います。


〇マセマ 熱力学 ★★★☆☆

熱の問題の対策のために少しだけ読みました。ただ電通大の熱はあまり難しくない上に範囲も広くないので、この本の内容はだいぶ過剰です。高専の教科書などで勉強しつつ過去問を解くのがいいと思います。

英語

〇英作文ハイパートレーニング 自由英作文編 ★★★★☆

大学入試の自由英作文対策の参考書。自分は自由英作文をほとんどやったことがなく、英作文能力が中3で止まっていたためこの本で書き方を勉強しました。英作文の経験があまりない人は、こういった本で一度型を覚えておくと書きやすいです。


〇電気通信大学 赤本 ★★★☆☆

英語の問題は大学入試と同じような問題が出るらしいという噂を聞き、メルカリで300円で購入。一応似た形式ではあったので多少は役に立ちましたが、まあやらなくてもいいかも。編入試験の過去問の英語は著作権の都合云々で問題が載っておらず勉強のしようもないため、不安な人は数年前の赤本を中古で買ってみるのもいいかもしれません。

その他勉強法Tips

おすすめのYoutubeチャンネル

参考書で勉強していてもいまいち概念がわからなかったり、頭に入ってこないときはこちらに紹介するYoutubeの解説動画を見て理解を深めていました。

〇わんみん

先ほども紹介した、編入数学徹底研究を中心に大学数学の解説を行っている方です。徹底研究で躓いたらとりあえずこのチャンネルを見よう。


〇予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」

理系ならだれもが知ってるヨビノリ。主に複素関数の講義動画でお世話になりました。複素関数勉強したことない人はとりあえずヨビノリの授業動画を見よう。


〇細川敬祐 先生

電通大で電磁気学を教えている先生で、授業の様子をyoutubeにアップロードしてくれています。電磁気の授業動画が非常にわかりやすいです。


〇高橋ユウコ 先生

高専の数学教員をされている先生ですが、youtubeに編入試験の数学の過去問解説動画をアップしてくれています。過去問は解答がないのがとてもつらいので、このチャンネルには本当に助けられました。電通大の試験の解説もいくつか上げてくださっています。



おわりに

ここまで見ていただきありがとうございました。参考になることがあれば幸いです。
質問等ありましたらTwitterのDMまでお願いします。過去問等ほしい方も遠慮なくご連絡ください。


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