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現役機材レビューその1 Studiologic Numa X Piano73

売っ払う機材のレビューだけではアレですので、現役で使っている機材のレビューも書いておきます。


制作テーブルに鎮座ましますNuma Piano X 73
DTM用入力機兼任

今のメインの鍵盤、Studiologic Numa X Piano73です。動画は上位機種のGTという木製鍵盤のモデルですが、僕のはTP110というセミウェイトのプラスチック73鍵を搭載したモデル。音源はGTと同じです。

動画でも言ってますが、StudiologicというのはFATARという部品としての鍵盤を作っているイタリアのメーカーの楽器ブランドで、FATAR製鍵盤はNordやらKurzweilやらといった、海外の、ある程度鍵盤にお金掛けているメーカーに採用されています。只、私見ですが決して高級鍵盤メーカー、という訳ではなく、FATARだったら何でも良い、ってことではないです。

とはいえ自社の製品に載っけるんだから半端なモノではなく、セミウェイトとはいえ良く出来ています。セミウェイトってシンセ鍵盤と何が違うの、ってのが多い中、これは決して重くないタッチながらもピアノと同じような感覚で扱えます。僕は元々クラシックを真面目にやっていないので、タッチは必要以上に強めに出してしまうのですが、mf~ffくらいのタッチのコントロールが今まで弾いたモデルの中では一番やりやすい気がします。ところがネットの感想見てると評価は結構別れていて、素晴らしい、大絶賛な人もいれば全然ダメ、すぐ返品した、って人もいて賛否両論な感じです。
また、最近はシンセでもエレピでも廉価モデルはアフタータッチが省かれる傾向にありますが、これはちゃんとついてます。ポリアフタータッチではないものの、反応も良好です。
ちなみに僕は何故か昔からYAMAHAのエレピが苦手で、全然思ったようにタッチが出せないんですが、そういう人に向いてるのかな?ちなみにシンセ鍵盤はYAMAHAが好きなんすけどね。エレクトーン育ちの性か。

88鍵木製鍵盤モデルのGTについては概ね絶賛な感じですが、何故73を買ったかというと。。。やっぱりGTだと22kgあって持ち運びが厳しいんすわ。。。
その点この子は11.7kgと軽くはないですがギリ持ち運べる重さ。その点では73にして良かったです。

FATAR TP100LR

上の図はFATARの前モデルのTP100ですが、鍵盤の良し悪しって図の赤で囲ったボディの中の部分の長さがどれだけあるかで変わる部分が大きいです。ここが短いと白鍵・黒鍵が混じったフレーズがめっちゃ引きにくくなります。最近はCASIOのエントリークラスのデジピでも支点長17.5cmは取ってあるので、プロユースのステージキーボードなんだったらそこはそれなりに確保してほしいところです。筐体開けたことないのでわかりませんが、これもまあそのぐらいの支点長はありそうです。

音は最近の楽器らしくダイナミックレンジは広くハイファイな感じで、それ故に薄く感じる部分もありますが、十分使える音だと思います。基本的にはサンプリング+モデリングの音源で、アコピについてはドイツスタインウェイ、NYスタインウェイ、YAMAHA、FAZIOLIが基本サウンドで、あとは恐らくそれらのサンプルを加工して作ったと思われるRockPiano等のバリエーションです。現状19種類、サイトからダウンロードして新しい音源の追加も可能です。それぞれDSPのパラメーターとしてTONE(全体のトーン)、STRING RES(弦の共鳴)、DUPLEX(筐体内の反響)、 PED.NOISE(ダンパーペダルのノイズ)を調整できるようになっています。デフォルトではトーンは抑え気味、STRING RES以下はちょっと盛り気味でうるさい感じなので、プリセットそのままで弾くのは若干厳しく、多少の調整は必要です。

アコピの設定項目

エレピはRohdesのMK-1、MK-2、Suitescase、Wurlyなどなどで、こちらはDSPコントロールのパラメーターがHAMMER、OFFSET、TINE、PED.NOISEになります。エレピ系はモデリングとのことで、非常に生々しい音が出ます。

エレピ系の設定

それ以外にもいろいろ音色は入っているのですが、オケ系のサンプリングはまあまあ、シンセ系はもう一つ、といった感じでしょうか。オルガンも悪くないのですがトーンホイールではないので、コントロール性には欠けます。
各音色はディストーション、コンプ、フェイザー、コーラスといったエフェクト2種類と、それとは4系統の音色全体にかかるディレイ、リバーブ、EQがあります。

メインパネル

音色の編集や各種設定は非常によく考えられています。レイヤーは4つまで可能で、それに対応した4つのノブとスイッチで音色編集や設定を行うので、わかりやすいです。ディスプレイ横のダイヤルがJOYスティックにもなっていて、ダイヤルをグリグリ回して横やら手前やらに倒して選択、みたいなインターフェイスで、このダイヤルが壊れないか心配なのですが、まあ今のところ大丈夫で操作性もまあまあです。

特筆すべきは外部MIDI音源のコントローラーとしての使いやすさでしょうか。MIDIコントローラーは今も各社が安いのから高いのまで色々出していますが、安いものは楽器というよりコンピューター周辺機器のクォリティで、鍵盤やスイッチやポッドのクオリティが全然ダメ、NIが出しているFATAR鍵盤採用のKontrol S-Seriesも、ソフトシンセとの連携重視でハードとの連携はあまり考えられていないようで、実は何気に絶滅危惧種になりつつあります。割と最近出たKorgのKeystageもカテゴリとしてはシンセ・キーボードの括りではなくComputerGearに分類されています。これも本体上でMIDIのスプリット・レイヤーが組めないなど、PCとの連携前提で、ハードのコントローラーとしては使いづらい仕様です。もうライブでハードのMIDI機器を制御する時代は終わった、ちゅうことですかね。。。昔はYAMAHAのKXとかKurzweilのMIDIBOARDとかしっかりとした製品が色々ありましたがねえ(昔言うても30年位前ですが。。。)。

外部MIDIの設定

Numa X Pianoは内部音色の4ゾーンをすべて外部MIDIに振り分けることもできますので、1MIDIチャンネル/1台とするなら最大4台までのハードをコントロールでき、それぞれで鍵盤の発音範囲やノブのコントロール(cc番号)を設定できますし、内臓音色と組み合わせることも可能です。ベロシティ・レイヤーは組めませんが(これもファーム弄ればなんとかなるような気はしますが)、こういう使い方ができるのは国産各社だとMontage、Fantomといったフラッグシップクラスだけではないでしょうか?

4つのノブにCCを割り振れます
レイヤー・スプリットの設定画面

その右側のサウンドバンク選択スイッチも、音色カテゴリーの選択だけでなく、ライブなんかでよく使う音色を登録しておいて一発で飛べるFAVORITESの機能もあります。ボタン一発の音色切り替えって意外とできない機種が多くて、僕はライブで曲中に音色を切り替えることが多いので有難い。

BANKS/FAVORITES
背面

あと何気に便利なのが入力4系統の入力がある点です。デジタルミキサーとして使えます。ステレオ2系統、モノラル4系統、ステレオ1系統+モノラル2系統のミキシングができてディレイ・リバーブもかけられます。

USBはBがついていて、MIDIとオーディオの入出力が可能です。PCからはオーディオインターフェイスに見えますので、ソフトシンセの出力をこいつに持ってくることもできます。

コントロールはペダル・スイッチを3系統突っ込めます。パラメーターは自由にアサイン可能、ハーフダンパーも可能です。使わないけど。

とまあ、一部の海外サイトに書かれていた「Nordの半額でNordを上回る」ってのも強ちフカシではない、概ね良い楽器ですがいくつか不満点も。

Bend,MOD

まずはこのピッチベンド、モジュレーション。使えなくはないですが、普通のホイールタイプにしてほしかった。。。まあ、ピアノ系鍵盤だとここら省いてくるモデルも多い(NordElectoroなんかあんなするのに付いてないのは酷いと思います)中、付けてくれただけ良しとするか。。。

それと、音色ごとにオクターブシフト、トランスポーズは設定可能なんですが、チューニングは変えられない。2レイヤーで同じ音色を設定して、デチューンさせて厚みを出す、みたいなことができない訳です。このあたりはファームいじればすぐできそうな気もしますが、コーラスとかディレイを使えば似たような感じにはなるので不要と判断されたか?

あと、ここは好みの問題かと思いますが、電源が物理ボタンではないのもちょっと。。。電源付きタップで複数台の電源を同時に入れたいときちょっと面倒。

機能的な不満としてはまあこんなところで、先に上げたシンセ系の音が薄い、って点以外は非常に良い楽器だと思います。まあメインはピアノ系なのでシンセ系はおまけ程度の扱いなんでしょうが、価格を考えるとやむを得ないかな。
で、シンセ系の音の薄さを補うべくいろいろやってみるわけですがこれはまた別のお話。


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