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引きこもり浪人生が一人旅に出て大失敗した話①
資金はある程度貯まったので旅に出ようと思ったのだが僕は殆ど準備をしていなかった。
その方が何となく色々鍛えられそうな感じがしたのだ。
行きと帰りの切符と電車の時間の確認。後は着替えなどをキャリーケースに詰め込み、行った後の事は着いてから考えよう。
師匠のブログには「宿も取らずに夜間バスで京都に飛び込み、吉田寮に泊めてもらった」的な事が書いてあったので僕もそれを真似れば何とかなるだろう。
分からない事はスマホでその都度検索すれば良い。
そう考えていた僕は手の施しようの無い阿呆だった…。
京都駅に着くまでは乗り換えも少なく、難なくこなす事が出来たのだが、問題はここからである。
京都駅に着いてからは駅の構図も京阪電車の事もJR奈良線の事も全く理解していないのでそれなりに駅内を彷徨い、そこそこ態度の悪い駅員さんに呆れられた。
何回か恥をかきながらも出町柳駅にまで辿り着いたは良いもののやる事が無い。
見たいものも食べたいものも行きたい所も決めずに来たのだ。当然である。
出町柳から木屋町まで取り敢えず歩いてみたが何も楽しくない。寧ろ周囲の若者が全て京大生に見えて(そんなはずは無いのだが)ますます虚しさを感じるだけだった。
自分が憧れていたのは京都という場所では無く、そこにいた人間だった事をそこで気付かされた。
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そうだ。自分は京大生に会いに来たのだ。観光に来たのではない。
ふとこの旅の目的を思い出した僕はGoogleマップの目的地に吉田寮と打ち込み、キャリーケースを引きながら再び歩き出した。
この後悪夢のような時間が待ち受けている事も知らずに…
続く