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昭和の洋楽偏愛 ⑤音楽は世界を超えた?(Queen)
洋楽にハマったヲタクの超個人的な遍歴、今回は80年代初頭とは少し離れますが、学生最後のヨーロッパ旅行中に聞いたQueenの「RADIO GA GA」にまつわるお話を・・・
今回はQueenの「RADIO GA GA」のお話ですが、まずはそこにたどり着くまでの遍歴から。きっかけは同じ中学の洋楽マニア、K君とN君でした。
仲間を増やしたい彼らは、私に「We Are the Champions」を勧めてきたのです。静かなイントロから一気の盛り上がり、そして私の大好きなロック系コーラス、盛り上がるだけ盛り上がっておいて最後の「ジャジャーン」、ほぼオペラじゃん、そもそもタイトルかっこ良すぎ。彼らの思惑通り、呆気なく沼に落ちました。
そして、K君は「Somebody To Love」、N君は「Bicycle Race」という二人の推し曲に挟まれた私がハマったのは・・・、
「いやもっとすごいオペラあるじゃん!」。そう「Bohemian Rhapsody」でした。アカペラコーラスから静かに始まったと思えば、曲調が変わって聖歌隊のような合唱からロックチューンへ。いやその前にガリレオって何? 混乱が収まらないうちに静かなエンディング。こんな曲聴いたことない! 完全に打ちのめされました。それからは推し曲の三つ巴の戦いとなったのです。
やがて同じ高校に進んだ3人は、「Queenが映画の主題歌を歌う」ということで、「フラッシュ・ゴードン」を見に行きました。緊張感のある小刻みなリズムから「Flash Ah, Ah」とお得意の超絶コーラス。オペラというよりまるで絵巻物のような曲展開。効果音のようなシンセ、まさに "Flash" 、まさにヒーロー、期待は爆上がりです。そして・・・
「まあ、音楽は良かったよね・・・」、トボトボ歩いて帰る三人。
私の中の「主題歌に騙された映画ランキング」で見事第2位になりました(ちなみに第1位は「エンドレス・ラブ」です)。
その後、高3の時に「Hot Space」がリリースされました。「Flash Gordon」に続くアルバムで、ワクワクしながら貸しレコード屋で借りてきたのですが、「あれ? 俺がハマったQueenは?」。
当時も賛否両論はあったようですが、残念ながら高校生の私にはまだ早かったのかもしれません。せっかくダビングしたカセットはほとんど聴くこともなく、私の興味は他の数多の80'sの洋楽へと移って行きました。
Queenから離れてしばらく経った大学時代、MTVでたまたま目にしたのが「RADIO GA GA」でした。シンプルで親しみやすいメロディ、レトロ感満載なビデオクリップ。"FAVOURITE YEARS" として自分達の過去の映像も入れて、「俺たちは成し遂げてきた。そしてまだここにいる!」と言わんばかりのパフォーマンス。
「あのQueenが帰ってきた!」。明るくて、ドラマティックで、ワクワクと懐かしさが入り混じった、まるでQueenの集大成のような曲でした。そして中学時代はカセットテープに録音していた音楽を、今度は新しく買ったビデオに録画して、それこそテープが擦り切れるほど見まくりました。
時は過ぎて大学卒業直前、ヨーロッパを鉄道で気ままに巡る一人旅の終盤。最終経由地のザルツブルグに向かう日の朝、ドイツのヴュルツブルクのユースホステルで朝食を取っていた時のことでした。地元の音楽らしきものが流れていた食堂のラジオから、不意に「RADIO GA GA」が流れてきたのです。遠い異国の地で聞こえてきた大好きな曲。すると突然、食堂にいた若者が、なんとクラップをしながら「All we hear is Radio ga ga」と歌い始めました。
何人かがつられて歌い出す。嬉しくなって私も一緒に(サビだけ)歌い出す。ヴュルツブルクのユースホステルの食堂が、その時だけウェンブリー・スタジアムのLive Aidの会場になったのです。歌い終わった後、笑顔で握手をして別れて行ったのですが、世界的な大ヒット曲だからこそ起きた、今でも忘れられない学生生活最後の出来事でした。
旅行から帰ってからは、引越し、就職と慌ただしい日々が続き、それを期に高校時代から続いた洋楽への熱狂の日々は終わりました。
そして時が経ち入社3年後。新しい職場で同期のバンド野郎と意気投合しました。Queenの曲も何度も演奏したという彼が、私にものを尋ねる時のお決まりのセリフは、「What do you mean Flash Gordon approaching?」。
何年経っても私の周りは、やっぱり「Gordon is alive!」だったのです。