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悪評高い兵庫県・兵庫方式(8)

 祥伝社の『入江塾の秘密』は、次のような刺激的なタイトルで本屋さんで売られておりました。
一流校合格100パーセント ~学力3・人間7の学習法を公開~

 という本です。当時のベストセラーで有名なのは、『ノストラダムスの大予言』(同じく祥伝社 NONBOOK)です。「1999の年7の月、巨大なマルスが降ってくるだろう~」という人類滅亡の予言は誰もが知っているとは思いますが、この予言を日本人全員に知らしめたのが五島勉の『ノストラダムスの大予言』でした。この本は、200万部以上売れたはずですが(調べてみると250万部でした!)、同書を皮切りに、小さな本屋でもNONBOOKを置いておくのが当たり前となっており、一番勢いのある出版社だったのですね。

 話を『入江塾の秘密』に戻しますが、
 まず、「一流校合格100%」というのが、なんともうさんくさい。
 知らない人も多いので、前書きに、「入江塾とは」という新聞記者による解説が数ページで載っています。入江塾とは、正式名称・伸学社。毎年灘高に、約20名合格しているそうなのです。私が中学生だった1978年には灘高合格者33名という驚異的な数字を残しています。灘高は募集人員60名なので、半分以上が伸学社。これはものすごい実績です
 なぜ、普通の中学校では大学進学は無理なのか、という疑問について――。
 冒頭で、当時の中学校の必修英単語数の話が出てきます。この数、670語です(今は何語なのか知りません。むしろ、学力低下・ゆとり教育が問題になっている昨今、力を入れるため、少しは語彙数が増えているのかもしれません)。
 一方、大学入試に必要とされる英単語数は約6000語。
 ということは、中学の最初の3年間で覚える670語、高校入試で合格と浮かれている間に勉強しないまま1年を過ごし、「そろそろ高2。勉強しないとな…」と勉強に気が向いたとたん、残り2年で5000語をクリアしなければいけないという現実に直面する。
――これでは、高校生が途方に暮れてしまうのも無理はありません。
 これは、『入江塾の秘密』に書かれているほんのさわりにすぎませんが、私は、この本の内容に一気に引きずり込まれてしまったのです。
 伸学社のモットーは、「謙虚・貪欲・明朗」。しかも、入りたいという生徒に対し、伸学社の門戸は誰にでも開かれているというではありませんか(入塾したいと申し出てくる生徒は、誰も拒みません)!
 私は、伸学社に夢中になり、志望校を甲陽から灘高に途中で変更するに至ったのです。思えば、私は失敗すると、それより困難な目標を打ち立てる傾向があります。
 私の目標は灘高。
 目標の大学は、東大理Ⅰ!ーーこう変わったのでありました。
 小6の3月、私は母親にこう告げました。
「ねえ、お母さん。中学校に入ったら、入江塾に通いたいねんけど……」(続く)

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