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スーパーのレジ待ちで思った事

私の住んでいる街にはスーパーが多い。
買物の用途に応じてお店を選べるし、
利用する交通手段によってもお店を選ぶことができる。
当たり前のように感じてしまいがちだけれど、
どこでもそういうわけにいかないのだろうと考えると、
恵まれた場所に居住していることに感謝したくなる。

その中でも私が毎週必ず買い物に出かけるお店は駐車場が広い。
ゴールド免許だけれど、万年初心者ドライバーメンタルの私が
安心して向かう事の出来る数少ないお店だ。

話がちょっとそれるが、
車間を空けない運転者に、この場を借りて物申したい。
交通規則として、十分な車間を空けるように習ったはずだ。
これは「空けた方がいいかもね~。」
じゃなくて「空けておきなさい。」だ。
なのにどうして、そんなにも近づくのか。
万が一、私が急ブレーキを踏んだら
どうするつもりなのだろう??

すみません。
積年の思いを吐き出させてもらいました。
皆さん、どうぞご安全に。

話を戻します。
私が一週間分まとめ買いするその店は、
品ぞろえの豊富さからとても人気があり、
その人気ゆえにいつも混雑している。

ある日、売り場を一周して買い物を終えるために、
レジ会計がもう少しで私の番となったところで、
ふと私の二人後ろの素敵な格好の高齢女性が
その風貌に似合わぬ、大きなジェスチャーで
誰かに向かって手のひらをヒラヒラと
「おいでおいで」のサインを送っているのが目に入った。
しかも口元に微笑みを浮かべながら。
どうやら私が気づくよりも前から熱心にサインを送り続けているらしい。
ずっとヒラヒラしているのは、かなりの羞恥心を伴うだろう。
照れ隠しの微笑みなのだろうか。

「誰にヒラヒラしているの?」と思い、高齢の女性の視線の先を追った。

一人の高齢の男性が目に入った。
身長は低いが、白髪をきちんと整えた、
紳士なおじいちゃんだった。

そのおじいちゃん、人の邪魔にならぬよう
壁際にそっと立って待っていたのだが、
やっと奥さんのジェスチャーに気づき、
レジの機械の横まで進み出てきて、小声で

「何?どうしたんだ?」と奥さんに問う。
眉間にシワをよせてちょっとだけ面倒臭そう。
でもなぜかちょっと嬉しそう。
きっと仲が良いのだろうという事が伺える。

二人の間には私を含めて四人並んでいるので、大きな声は出せないし、
おじいちゃんは、無理やりに上流に逆流してこようとはしなかった。

まるで天の川を間に向かい合う織姫と彦星のような構図だ。

「ちょっと、こっちに来て欲しいのよ。お願い。」
おばあちゃんの方も、小さな声で話した。
それじゃあ聞こえないでしょう。って言うほど小さい声で。

それなのに、おじいちゃんはちゃんと理解した。

「ぐるっと回らにゃならんなあ。」
ぶつぶつと小声で文句を言いながらも、
ちゃんとおばあちゃんのところに向かう。

あうんの呼吸。
ツーと言えばカー。
夫婦は寄り添って生きているからこそ、
長年連れ添う中で二人だけの共通言語を生み出していくのかもしれない。

聞こえないだろう環境で、
内容を理解できるほどに、
相手の欲していることに想像が働く。
幾度となくコミュニケーションをとってきた証だ。
必要とし、必要とされること。
人間としての最高の幸福だろう。


混雑して殺伐としたレジ待ちの時間に、
理想を見た気がする。


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