オニタビラコ
春先から我が家のブロック塀に沿って何箇所か、黄色の小さな花が咲いているのを見つけた。
雑草(?)の類だと思うが余りにも可愛いので、調べてみると オニタビラコ と言う山野草であった。
漢字だと鬼田平子と書くそうだが、その愛らしい姿には似つかわしくない難しい名前で笑ってしまう。
そもそも雑草などとは失礼で、どんな植物にもれっきとした名前があるのであり、私は彼らを野草と呼んでいる。
確かに畑や庭にはびこって、雑草と言われても仕方がないような厄介なものもあるが、このオニタビラコのようにとても可愛い野草も多く、私は大好きである。
その中で子供でも誰でも知っているのが、いち早く春の訪れを知らせてくれるタンポポであろう。
だがそれよりももっと早く咲く真の春の使者は、オオイヌノフグリではないだろうか。
まだ北風の冷たい二月だと言うのに、道端の陽だまりに小さな青い星のような花を健気に付けていると、嬉しくてつい足を止めてしまう。
次に好きなのは草むらに咲いているカラスノエンドウで、濃いピンクの小さな花と小さなエンドウマメが愛らしく、子供の頃はママゴトの材料にして遊んだものだ。
我が家でもスミレ、紫カタバミ、ツユクサ、ドクダミなどが庭の片隅に顔を出すが、腹立たしいのはそれらを雑草だと言ってひっこ抜いてしまう夫である。
もちろん増えすぎないように遠慮がちに、でも大切に育てているのに夫はそんなことなど全くお構いなしだ。
そのくせ毎年春になると、どこの桜が咲いただの、やれ花見だのと大騒ぎをする。
確かに満開の桜は例えようがないほど美しく感動するし、世界中で桜に勝る花はないとさえ思う。
しかし夫の花への興味はそこだけであり、他の花や庭の花には何が咲いても枯れても殆ど関心がないのだ。
ましてや野草が付ける小さな花など目にも入らないのだろうが、桜ばかりが花ではないと私は言いたい。
イラスト(アクリル)