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【葬送のフリーレンvol.1】エルフが泣くとき

千年以上生きるエルフが泣くのは、どんな感情なのか。

「葬送のフリーレン」は、魔王討伐を終えた魔法使いが再び旅に出る物語だ。主人公のフリーレンはエルフ族の出身で、長寿故に感情の起伏に乏しい魔法使い。物語では戦闘シーンもあるが強調されず、低いテンションで淡々と展開されていく。

物語が魔王討伐という偉業達成後から始まる斬新さに加え、フリーレンの達観しきった言動も意外性があり新鮮である。彼女は、すべてを見通しているのか、一喜一憂することを嫌っているのか。しかし、理屈では理解できないことも行うのが愛嬌。99%の確率でミミックが潜んでいる宝箱をあえて開けて食われそうになる。わずかな可能性に欠ける無鉄砲さがかわいい。

さて、本題に戻る。
物語の冒頭、フリーレンが勇者ヒンメルの死に臨み、涙を流すのである。千年以上の人生の中で10年しか一緒に旅しなかった人間に対して、である。

人間の寿命は短いってわかっていたのに
なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう

第1話より引用

人に無関心だったエルフであるフリーレンが、できるだけ人と関わっていこう、と決意するきっかけとなったシーンだ。

私はこのシーンで、自分を顧みた。
人間である私は心を閉ざして、人を知ろうとしていないのに、なぜ、普段は無感情なフリーレンが泣くのだろう。人の浅はかさを見せつけられた気がしたのだ。人間はその瞬間を精一杯生きて、防衛本能から一定のものに心を閉ざすことがある(と思っている)。後に、悔やんでもどうにもならない時を迎えて後悔する。もっと、できたことがあるのでは無いか。思慮の浅い自分を恥じる。

魔導書と鞄

フリーレンの涙は私の心を代弁してくれただけではなく、未来への強い意思も表している。このあと、また長い旅に出るのだ。前回と同じような道をたどる旅路。異なるのは、一緒に旅をする仲間(パーティー)。

この物語の特徴は、ドラクエのようにパーティーを組んで冒険するところ。フリーレンにとっては前回の旅のおさらいでありながら、未知の苦難とも遭遇する。大切なヒンメルの軌跡をたどっているだけではなく、フリーレン自身も人間の心に理解を深め、成長していく物語なのであろう。

取り上げた冒頭のシーンにあたり、心を閉ざしがちな私は、フリーレンの涙にまだ未来はあると救われた気がしたのである。

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