ちょっとニッチな児童文学⑧ 『スペシャルQト(キュート)なぼくら』
初めましての方も、お久しぶりの方も新年あけましておめでとうございます。maemichiです。noteの更新、すっかり停滞しておりました。去年も新年明けてしばらくは定期的に更新していたのですが、いくつか更新してその後、まったく続かず……。今年はどれくらい更新できるやら。
ということで、新年初更新してみようと思います。
新年1発目の更新は如月かずささんの『スペシャルQト(キュート)なぼくら』です。私の大好きな児童文学作家さんの作品です。
ここからちょっとしたネタバレを含みつつ話を進めていきます。ご注意を。
物語に出てくる人物
物語の中心にいるのはこの2人です。
宮地直行(ナオ)
もともとかわいいものが好きだったが、親に「男なのに(かわいいものが好きなのは)変だ」といわれて、かわいいものを好きだという気持ちを封印。誰にもいえないでいる。久瀬がかわいい格好をしている姿を偶然見たことをきっかけに「ボーダーレス男子」になる。
久瀬優英(ユエ)
クエスチョニング男子。後にアロマンティック・アセクシュアルであることをナオに告白する。キュートな格好が好きで、親にバレないように女装して出かけたり、服やコスメを買ったりするのを楽しんでいる。
先ほど「ボーダーレス男子」や「クエスチョニング」「アロマンティック・アセクシュアル」と聞きなれない言葉があったかと思います。
「ボーダーレス男子」は男子だけど一般的に言われる女子のようにかわいいものが好きだったり、服装も女性のようだったり、見た目や雰囲気が何となく世間が想像する女性っぽい男性のことです(大ざっぱな解釈ですが)
芸能人で言えばりゅうちぇるさんや井手上漠さん、氷川きよしさんを思い浮かべていただけるとわかりやすいかと思います。みなさん中世的で美しい顔立ち、外見をしておられますね。
「クエスチョニング」は自分の性別を男性とも女性ともまたその他の性とも決められない、自分の性別に迷っている状態です。(こちらも大ざっぱな解釈です)
「アロマンティック・アセクシュアル」とは他者に恋愛感情を抱かず、性的感情も持たないセクシュアリティーです。
『スペシャルQトなぼくら』感想
如月かずささんの『カエルの歌姫』からおよそ10年、今回はL G B T Q+のうちのQ(クエスチョニング)やまだまだ知られていない性のグラデーションの細かい分類に焦点を当てた作品になっています。
ナオも性自認をクエスチョニングとしていて、ポリセクシュアル(多性愛・複数性愛)とも考えています。
「いくら悩んでもわからないものはわからないままにしておいてもいい」と作中でナオが自分の性について一つの思いに行き着きます。
作者の如月さんが『カエルの歌姫』を執筆するときに調べた性的マイノリティを題材に、『カエルの歌姫』とはちがった切り口で書かれた物語です。ジェンダーレスという言葉が世の中に浸透してきて、「こんな中学生もふえるだろうな」と思いながら読みました。
さきほどから話題にしている『カエルの歌姫』を紹介するnoteはこちらです。
最後は、「どんな形でもいいから、このままユエと一緒にいたい」というナオ気持ちに尽きます。必ずしも恋愛感情や性的な感情でその人との関係が成立するわけではありません。
同じ時間を一緒に過ごして、楽しい、安心するという気持ちがあれば、それは人生の中でものすごく価値のある時間なのではないでしょうか。セクシュアリティーに縛られることなく、自由に好きな人といられる。そんな幸せな人がふえる世界になってほしいです。
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