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秋田犬とすごす冬❄️

私は生まれたその日から、ずっと犬や動物とともに生きてきた。今はペット禁止の住まいにつき、動物は物理的に飼えないが、基本、生き物が好きだ。

0歳のころは、真っ黒い牧羊犬のモサモサした毛の塊り(犬種は、多分プーリー)と一緒に座布団で遊ぶ写真がある。父親が、大の犬好きで、家族の同意なしで連れて帰ってくるのだった。プーリーまでは洋犬が多かったようだが、私が中学生くらいに突然、飼う犬が秋田犬に限定された。チビは、2匹目のメスだった。

秋田犬(あきたいぬ)は、赤毛、白毛、虎毛、胡麻毛などがあり、性格は温厚、忠誠心が強く、保守的。運動が必要な大型犬であり、体重は大人になると35〜50kgになる。
だから、散歩のときのチビは、名前はちびでも走るとリードを引っ張られて、こちらが転びそうなくらいパワフルだった。

畑のミニトマトを食べて、よく下痢をした。だから、食べちゃダメだよ、と声をかける私を困らせた。そして、道路脇の葉っぱをよく食べた。「また、道草食ってるね」と毎度毎度あきれた。
口がゴムパッキンみたいにプルプルしていて、柔らかく、鼻先も湿っていた。鼻先が湿っぽいのは、健康の証である。鼻や口まわりを触っても甘噛みして、お互いに楽しんでいた。冬の朝、鼻や口のあたりが蒸気やら吐く息で、白く湯気が立った。山間地のため、朝晩がおそろしく冷える。静岡とはいえ、雪が降ったり、積もることもあった。

散歩道は、霜が降りて、立ち上がった土の柱は踏みしめる度、サクサク音を立てた。一番乗りの霜柱の畑は歩くのが楽しくて、チビと踏み荒らした。
寒い日、山の水が落ちる水飲み場に、氷柱が垂れ下がることがあった。水は痺れるほど冷たかったが、走って散歩するチビは、途中休憩で氷になる直前の水を飲むことがあり、手袋をしっかりはめた私はゾッとしたものだ。

また、山の中から、漬け物石のひとまわり小さいサイズの石が落ちてきたことがあった。キィキィー、っと鳴く先をみると猿が石を投げてきたところだった。チビは、もの凄い剣幕でワンワン吠えまくっていた。「犬猿の仲だな」とチビに言うと、フンッと鼻息を荒くしていた。
私を守ってくれているように見えた。

そんなチビは、13年を生きた。

最期の1年間くらいは肥大性関節症やら、お腹に腫瘍をかかえながら、散歩のときは、辛そうでもがんばって歩いた。

私がリードやおやつの袋や、排便用のビニールなどを用意すると、痛みを抱えてその場でクルクル回って喜んでみせた。
嫌なことがあって、私があまり笑えない日は、じっとこちらを見つめて、はしゃぐタイミングをずらしていた。散歩道、池のほとりや、川辺を眺めるときは、我慢強く待っていてくれた。

チビは、15年が寿命といわれる大型犬の中では『ご長寿さん』だった。
でも、よくよく考えると、チビがほんとに小さいときから、私より先輩だった。
チビが眠そうなときに、うつらうつらしつつ話を聞いてもらった。小春日和に日向ぼっこしながら、チビの背中を枕にしても怒らなかった。

エピソードは他にもあるが、今回はこのくらいにしておくことにする。

かわいいかわいい愛犬が、今も私を思い出の中で支えてくれる。

まだまだ、チビとの思い出は絶えない。

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