非常識を疑わない不幸
(約900字)
「流れ星になりたいな。
今生の命は要らないから、誰かのために最期に尽きる命が焼け落ちる前にたくさんのひとたちの願いを託されながら、消えるの」
素敵な想像だと思った
「ちょっと待って、流れ星は一瞬だよ。
星は宇宙空間にあるでしょ、地球から見る大空のたった一つの星って、タイミングよくても見上げている人がたまたま見つけるものだから、自分の命をかけるには願いを叶えてほしい人が見るかどうかなんて、砂浜でゴマ粒を見つけるくらい確率が低いでしょう」
たしかに、もっともなご意見。
砂浜にゴマ粒が落ちていても探せない。
「じゃあ、どうすれば願いを叶えてほしい人に流れる瞬間を伝える流れ星になれるの?」
「無理だね、そんな方法があるんだったら、世の中に不幸なんてない」
「ん〜、流れ星は名案だと思ったんだけどなぁ」
「男ってね、抱けないと思った途端にその女子を敵視する人種がいるらしいよ」
「いきなり何の話?」
「流れ星にかける願いはメルヘンだけじゃないってことよ。あれ、そういう話をしてた訳じゃなかったの?」
「メルヘンの思考で話してたのよ、私は。
夢がない、大人は何だかんだそういう快楽の話に持っていくから詰まんないの」
「つまる話でしょう。願い事がバイオレンスな輩だっているのよ、あの人が事故で痛い思いをしますようにとか、私の知らないところで昇格試験に落ちますようにとか、家庭不和で家族バラバラになれとか、悪い願い事だって祈る人間がいてもおかしくないのよ」
「はぁー、もっと酷いことを望む人だっているかもしれないもんね」
非常識を疑わない思考って、健全な心のようで、ある人には不幸だったりする。
「他人の不幸は楽しいと思う人が世の中に多いから、ネットの誹謗中傷があって、全く当事者には関係ないヒトが正義を傘に着て、その騒ぎを焚きつけたりする。問題の原因は、意外と暇つぶしの道楽だったりするものよ」
「深い話なの?」
「ぜ〜んぜん、薄っぺらい浅すぎる話」
非常識を疑わないって、ある意味
幸せなんだわ
※企画に参加します。〆切は9/1(日)23:59。
#天地始粛
#秋の七草
#語呂合わせ
#暦の上では暑気がおさまる頃
#ハスキーなおふくろ
出典『花の名前』より