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肩書き
(約900字)
お通夜には十年以上、顔を合わせていない従兄弟がいた
私より五つ以上、年下の彼らは、昔、目指していたところとは違う場所を歩き、可愛らしさはなくなって「家の主」としての貫禄を備えていた
「お久しぶりです、おねえさんです。で、こちらが妹さん」
と従兄弟はわたし達姉妹を奥さんに紹介した
実の弟と妹は「お姉ちゃん」扱いをしてくれないが、母の弟(叔父さん)の息子さんたちは私をお姉さんと呼んでくれる
私は彼が高校生のときにギターを弾いてバンドに憧れ音楽を楽しんでいたことを知っていたし、人見知りで照れ屋なのを見ていた
現在は浮き沈みのない業界で働き、営業トークで場をつなぐ大人になっていた
もう一人は、私がかつて目指していた場所できっちり働く男性になっていた
私は勉強を途中で挫折してしまったが、彼は猛勉強を続けて試験を通り、同じステージで夫婦共に働いている
私が得られなかった肩書きを形にして、きっと大変な思いをして、その精悍な顔つきになったのだと想像できた
「体調を崩しちゃって、今年はあんまり働いてないのよ」
と話したら、人見知りだった従兄弟は一瞬昔の顔に戻り、すぐに笑顔で労いの言葉を返してくれた
人間って、成長してゆくものだな
私が人生のどん底にいたときも、彼らは変わらずに見守ってくれた
従兄弟の子供は終始、笑顔を絶やさない可愛らしさのある小学生だった
「生きていさえすればいいのよ。人さまを傷付けたり、後ろめたい人生を歩んでいなければ、それでいいのよ」
ことあるごとに、母は私に「自分を認めてあげるように」と話す
親が望んだ生き方が出来なくて、二人のきょうだいを心配させて、すぐに泣く私に皆、優しい
誰かに認めてもらえる「肩書き」が欲しかった
立派だと讃えられるものじゃなくても
「わたしはこういう者です」と胸を張って生きたかった
社会の最下層を歩いているような、ダメなレッテルを抱えている気分だった
うまく世間を渡る術はなくても、
誰の役に立てなくても、
生きるのを諦めるのだけはしまいと決めている
誰かの進む道を守っていられる人でありたい
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ポテチ🥔とラスク🍞