『親切な暗殺者』#毎週ショートショートnote
(410字)
「ねぇ、シルちゃんは死ぬとき、一人と二人のどっちがいい?」
と金子は、朝食のヨーグルトに手を伸ばす。
朝日は窓ガラスを通り抜けて、金子の長い指を明るく照らす。
「唐突に死ぬ話‥‥私たちの平和な朝に、人生最期の話が必要なの?
キンちゃん、悪趣味だよ」
コードネームの「銀貨」のシルバーから
シルと呼ばれた。2人は同業者だ。
熱い夜を過ごした者同士の会話じゃない。
「でも考えてみたら死にたいと思う人には、
この仕事って救世主よね」
シルはキンカに黄金色に光る瓶を両手で渡す。
「まあ、そうだね。親切な暗殺者だよ。死んだことに気がつかないほど鮮やかに一瞬で
天国に行けるんだからね」
したたるハチミツの甘さに似合わない会話。
「シルちゃん、こっちへ来て」
金子は明るい窓辺へいざなう。
「まだ、死にたい夜は来るの?」
優しい眼差しに、シルはゆっくりと頷く。
なぁに、夜の続き一と語尾を上げる間もなく唇を重ねた後、
シルの額から血が飛び散る。
金子は目を閉じさせた。
※たらはかにさんの企画に参加します。
11/4(土)深夜が〆切です。