『自分の持ちもの』#毎週ショートショートnote
(410字)
たろは、お爺が好きだ。
お爺は還暦をとうに過ぎた。
たろは、おむすびが好きかい?
たろは梅干しと、おかかのおむすびを
2つ、明るい色のハンカチにのせて
お爺の目の前に差し出す。
お爺の好きな方を選んでけろ
たろは、カエル語にはまっている。
これは、ご飯机からいくつでも出てくるんだけろよ。
たろは自分の勉強机を指差して、引き出しを開ける様子をジェスチャーで見せた。
机から、おむすびが?
お爺は目を丸くした。
先週の雨の日、カエルのケールちゃんから
魔法を教わったけろ。
「この中からおむすびを出してけろ」と言ったら、それ以来おむすびが机から出てきた。
お爺は、たろのおかかむすびを口にして、感嘆の声をもらした。
お爺はいつも組み立て式の杖を持っていた。
これに魔法をかけてけろ。たろは言う。
杖からご飯を出してけろ、とお爺。
杖の取っ手の部分を外すと、きりたんぽの細いのが一本飛び出した。
ごはん杖だけろ。
いや
きりたんぽ杖だけろ。
2人喜んだ。
※きりたんぽは、秋田県の郷土料理。
すりつぶしたうるち米のご飯を杉の棒に先端から包むように巻き付けて焼いたたんぽ餅を棒から外し、食べやすく切った食品です。
◇たらはかにさんの企画に参加します。
お題の「ごはん杖」です。
11/11(土)深夜が〆切りです。
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