『届いた花束』#毎週ショートショートnote
(本文 410字)
ーもう、いい、疲れたー
都会の古ぼけた金網の間に指を入れ、黒く広がる眼下の景色を睨んでいた
ー何をやっても上手くいかないー
上司には叱り倒されるし、
同僚の飲み会にはハブられた。
彼氏からの連絡は途絶え、
近親者の葬式には間に合わず、八方塞がりだ。
ー生きていて、この先いい事なんてないー
金網を乗り越え、眼下のキラキラしたイルミネーションめがけて飛び降りた
ーおい、大丈夫か。
私は元彼の運転する車で目覚めた
「誰?」ー咄嗟に出た
声が元彼と違う
いつぞやの黒猫だよ。あんた、俺が飛び出した道路で、2日後に手を合わせに来てくれただろ。
そうだ
3年前、Xmasの配達物を運んでいた夕方、バイクで進んだ先に黒猫がいた
私がブレーキをかけた瞬間、黒猫は慌てて道路に飛び出したんだ。ゴムのタイヤが破裂するような音で一週間、肉を食べられなくなった
私が黒猫を殺したとー
涙の目を閉じて開けると、
あの日配達したバラの花束が横たわる部屋にいた。
◇たらはかにさんの企画に参加します。
お題の【助手席の異世界転生】です。
12/8(土)深夜が〆切りです。