大人の話
(約490字)
「なんで男の人は、純粋なのかしら」
ある先輩に聞いたところ、
「女が狡猾で、でも腕力では勝てないと分かっているから、純粋になるしかない」
と言われた。
「女子はね、わざと可愛い女を演じているんだよ」
と教えてあげたら、
「ぶりっ子やってることなんか、とっくに
分かってんだよ」
「陰で、クソハゲとか、オヤジとか、文句を言ってるけどね」
と、ぶりっ子の一面をひとりごちた。
「でも、いいの。かわいぶって欲しいの。
裏で何言われても、その場で癒してくれれば、
なんだっていいの。だって、可愛いにこしたことないでしょ」
と続けられた。
身も蓋もない話。
彼には通用しないのに、
一生懸命、
女の子を
演じている可愛らしい悪魔がいて。
結局、あの悪魔は、
3番目の彼と幸せそうな結婚をしてたな。
「女性は、少しばかの方がいいんだよ」
「いや、ばかなフリしてた方がね」
って、そのひとは言ってた。
彼にはかなわなかったな。
結局、誰とも婚姻届を出さずに、
旅立ってしまったな。
彼となら、事実婚でもよかったな。
何を話してても、楽しかった。
求められることに慣れると、
感情が雑になってしまうのか。
人たらしの彼が、懐かしい日々。
という、フィクションのおはなしです。