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大阪

知らない土地は不安である。

生き物はなるべく安全に生きようとする。生きる為に外敵の少ない安全な土地、家を持とうとする。土地への愛着や執着を生む原因を突き詰めれば、おそらく生存本能なのだろう。

「あの道を行けばあの場所に辿り着く、あの場所にはあれがあって、あの景色があり、あのような人がいる。」頭の中に張り巡らされた東京の地図、結びついた膨大な記憶は、私を安心にさせる。大好きな景色やお店、場所も無数にある。東京を離れる事で、それらを失うのだと思うと悲しい気持ちがするが、本当に「失う」のだろうか。

知らない土地での生活は、道を一つ一つ新しく憶えていかなくてはならない。好奇心旺盛な若い頃は「知らないこと=楽しいこと」であったような気がする。いつの間にか思い出や記憶が増えて、未知なる事よりも、過去の記憶を大切にするようになっていた。今の私の現状は、2年ぐらい使ったスマホのように、メモリー容量の空きが減って処理速度が低下して収拾がつかなくなっていたのかもしれない。

新しい土地での生活は、心機一転のチャンスだろう。

まがりなりにも日本の首都である東京と、経済的にも斜陽だと言わている大阪とでは比較してしまえば色々と不満も感じるのだが、住めば都だ。なんとなくではあるが、東京での価値観と大阪での価値観とでは少し違う気がする。大阪では人間の「情」というものが強いようだ。良くも悪くもクセが強い。表情が豊かであり、人間が動物っぽい。

真新しいスマホを買い換えるように、おそらく簡単なことだ。同じ日本であるし、実際は大して変わらない。大して変わらないのだが、失う意識を持つことで、喪失と引き換えに新しい世界がすぐそこに現れる。

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