
原発事故後、福島で保護された大型犬「アキ」 災害救助犬目指し奮闘の「その後」 飼い主との間で育まれた強い愛【記者の思い出の記事】
「思い出に残る記事、何かないかな?」。はじめまして、千葉日報の町と申します。今回、光栄なことに執筆の機会をいただきましたが、当初はパッと出てきませんでした。
きょうは花粉症の薬を朝飲んだのか飲んでいないのか思い出せず、ゴミ箱をあさる―。そんな、記憶力に自信のない自分に落胆しながらも、アーカイブ記事を巡り始めました。以前、自分が書いた記事を眺めていると懐かしくてついつい…部屋の掃除をしようとしたら学生時代のアルバムを見つけてしまったような感覚です。思い出すと胃が痛くなるような取材もありましたが、今回は直近でうれしかった出来事をご紹介しようと思います。
記事のご紹介をする前ですが、ちょっとした宣伝を。私が今いる部署は「デジタル編集部」といって、記者が書いた記事をネットで配信したり、自分たちでネット向けの記事を書いたりしているところです。基本的には自社記事を取り扱っているのですが、たとえば学習塾を展開する「市進学院」に受験生向けの記事を書いてもらうことや、保育園を運営する「キートスチャイルドケア・キートスベビーケア」の園長に子育ての相談について回答してもらうコンテンツの配信もしています。
ほかにも、千葉日報が過去に報じた新聞記事をケーブルテレビ局「J:COM」が追跡取材し、映像番組としてお届けする「ツイセキ!!」というコラボ企画も。今回はこのコラボ企画が私にとって、とてもうれしい「出来事」となりました。というのも、この企画を担当してくれている先輩が「この記事書いたよね?」と昔の記事をみせてくれたのが始まりです。
救助犬目指し奮闘 鎌ケ谷の新たな“家族”とともに 原発事故後、南相馬で保護
■「救助犬」との出会い
この記事を書くに至ったのは、警察や消防などがともに行う「合同震災対応訓練」を取材したことがきっかけでした。
当時は、事件事故などを取材する部署にいたため、大地震やテロ対策で関係機関が一緒に訓練する様子を取材することがよくありました。恥ずかしながら、ここで初めて存在を知ったのが「救助犬」です。正式には「災害救助犬」といい、災害などによる行方不明者を捜索するため訓練された犬のこと。
取材した訓練では、ハンドラー(指導手)とともに救助犬ががれきに見立てた建物を捜索している様子を目の当たりにしました。「NPO法人日本救助犬協会浦安チーム」の方が参加されており、「そんな犬がいるのか!」と感動してあれこれ質問する私に丁寧に答えてくださいました。
そんな会話の中で、救助犬を目指す犬の中には、東日本大震災で飼い主と離れ離れになった犬がいることを知りました。ボランティアに発見・保護された犬が千葉県内で新たな飼い主と出会い、協力しながら救助犬を目指しているとのことです。
「ぜひ会ってみたい」と思い、取材を依頼。後日、飼い主の方と災害救助犬を目指す「アキ」が訓練する様子を取材させてもらいました。余談ですが、取材した訓練場所は私の地元(市川市)に近い浦安市。こんな施設が近場にあることも知りませんでした。

福島県南相馬市で育った雄のミックス犬「アキ」=当時8歳=は、震災から1カ月後、被災ペットを保護する預かりボランティアに同市内の民家で発見・保護されたといいます。詳しい内容は記事を読んでいただければと思いますが、こうして新たな家族となり救助犬を目指すことに。
ただ、アキはおとなしく、めったにほえない温厚な性格。しかし要救助者を発見したことを知らせるには「声を出す」ことが重要です。果たして試験はどうだったのか…。
■あれから8年…
さて話は戻って、先輩からの「この記事書いたよね?」の場面に。前述の企画「ツイセキ」でJ:COMさんがこの記事の「その後」を映像番組として取り上げてくれることになり、私は取材先への打診を依頼されました。
さきほどご紹介した記事はなんと8年前…。取材後に、飼い主の方からメールで状況を知らせていただいたこともありましたが、それから改めて連絡をとるのも8年ぶりでした。
8年前という事実にショックを受けつつ、以前連絡を取っていたメールアドレスは届くのか、さらには「どちら様?」と言われたら…そんな不安をよそに、「ツイセキ」の企画趣旨を説明するメールを送ったところ「わ、わ、わ! こんにちは!!」と即レス。J:COMさんの改めての取材も快諾してくださり、私自身は何もしていないのですがこの日終業後に飲んだビールはとてもおいしかったです。
そして取材していただいた動画がこちら。
東日本大震災、被災地福島で保護され千葉にやってきた大型犬「アキ」 災害救助犬の訓練を受け…それから 気になるあの記事を「ツイセキ!!」 千葉日報×J:COMコラボ第17弾
あの後どう過ごしていたのか、最初に取材した私も知らない飼い主の思いに触れ5回ほど見ましたが、5回とも涙腺が…。特に印象に残ったのは、救助犬の試験当日、あのおとなしいアキが「奇跡」を起こしたということと、飼い主との間に育まれた深い愛情。何より、昔取材させていただいた人たちの「今」を知ることができ、私にとっても忘れられない取材の一つとなりました。
冒頭では「薬も飲んだのかどうか」とお話しましたが、本当は今でも忘れられない取材はたくさんあります。千葉日報の記事はたくさんの人生の一コマが詰まっています、ぜひ他の記事も読んでいただければ幸いです。
【書いた人】町香菜美 市川市出身。整理部、社会部、市川支局から産休・育休を経て、現在はデジタル編集部。好きな芸能人は江頭2:50。
◇ ◇
▼記事はこちら
救助犬目指し奮闘 鎌ケ谷の新たな“家族”とともに 原発事故後、南相馬で保護
東日本大震災、被災地福島で保護され千葉にやってきた大型犬「アキ」 災害救助犬の訓練を受け…それから 気になるあの記事を「ツイセキ!!」 千葉日報×J:COMコラボ第17弾
◇ ◇
千葉日報の過去の記事の中には、皆さんに読んでいただきたい記事がたくさんあります。記者の思い出の記事を不定期でご紹介していきます。