なぜ今「エコツーリズムなのか——「観光」と「環境」を両立する
みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、様々な領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。
今回は、キャンプと同様に非日常を味わえる「旅行」、そのなかでも「観光と環境を両立する旅のかたち」についてご紹介します。
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みなさん、「エコツーリズム」という言葉を聞いたことはありますか?エコツーリズムとは、訪れる地域の自然環境に配慮して楽しんだり、地域振興につながる取り組みをしたりする、新しい観光のスタイルです。環境省のホームページによると、エコツーリズムとは「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた」とあります。
経済発展も、環境保全も
エコツーリズムが誕生した背景には、急激に観光地化が進んだ地域での、観光客によるゴミの放置、環境破壊、落書きなどの問題が多発したことがあります。こうした背景から、まちの活性化や経済発展と環境保全を両立すべきだとの声が高まりました。そして、2000年代に入ると、官公庁の主導で、持続可能な観光に向けた取り組みが進められてきました。2008年に「エコツーリズム推進法」が施行されたことに加え、近年SDGs推進の流れが加速したこともあり、エコツーリズムが少しずつ認知されるようになってきました。
たとえば、北海道の弟子屈町は古くから観光業が盛んだったようですが、平成3年をピークに減少の一途をたどっています。そこで、
・歩くツアー(トレッキング、登山など)
・屈斜路湖や釧路川でのカヌー、ネイチャーボートのツアー
・スノーシュートレッキング
・星空観察ツアー
・雲海観察ツアー
・ホーストレッキング
というように、元々あった地域の資源をエコツーリズムの観点で見直し、観光業の再生を目指しています。観光客は自然や文化とのかかわりを楽しむことができ、地域の人々たちは地域の資源を再認識し、結果的に地域の自然や文化が守られる、そういった仕組みです。(参考:弟子屈町ではどのようにエコツーリズムに取り組んでいるのですか? https://www.env.go.jp/nature/ecotourism/try-ecotourism/certification/teshikaga/torikumi/01.html )
エコツーリズムでは、文化体験から自然散策、地域の方々との交流など、幅広いプログラムが用意されています。ふつうの旅行との大きな違いは、自然環境や歴史文化を地域固有の魅力として観光客に伝えていくことで、そこに暮らす人々が地域資源を再認識し、まちの活性化につながっていく点です。
環境省では、エコツーリズムを実践する地域や事業者の優れた取り組みを表彰する「エコツーリズム大賞」を平成17年度から実施しており、2023年で19回目を迎えます。これまでに、エコツーリズムに取り組む事業者、個人、団体、自治体などの166件の取り組みが受賞しています。
ツアーガイドの確保や参加者のニーズの把握・反映などの課題はあるものの、今後もエコツーリズムに取り組む自治体や団体は全国的に増えていくでしょう。
観光客増をかなえた、民間の「ふるさと」
2021年、三重県多気町にオープンした日本最大級の商業リゾート「VISON(ヴィソン)」(以下、ヴィソン)は、他にはないかたちで地方創生に取り組んでいます。東京ドーム24個分にもなる広大な敷地内には、マルシェ、温泉、アトリエ、農園などの観光エリアや宿泊施設があります。
「食と癒し」をテーマとし、人気パティシエが手掛けたレストランカフェや、ミシュランガイド1つ星レストランのオーナーが監修した産直市場など、リゾート感あふれる「食」の場が用意されています。しかし、ただのレストランや産直市場ではありません。余った食材をレストラン内で再利用してフードロスを削減したり、地元食材を積極的に使用したりと循環を意識しています。他にも、ウッドクラフトや森でのアクティビティなどを通じた木育、産学連携で取り組む薬草湯、地元土産の販売、EVの充電スタンド設置など、多種多様なサービスがそろいます。
年間来場者数は350万人にのぼり、「遠方からの観光客はもちろん、周辺地域の地元住民の方にも来てほしい」という多気町長の期待通り、7割の来場者が県内から来ているというから驚きです。
ヴィソンは課題解決を全面に出すのではなく、食事やレジャー、アートなどを楽しむというプロセスを通して間接的に課題解決に貢献する人を増やすという方法で、地域に貢献した成功事例といえます。地域全体としても、「ここには〇〇が無い」という出発点ではなく「ここにはヴィソンがある」と考えたからこそ、地域資源の活用、若年層の定住促進、雇用の創出などの課題を少しずつ解決し、地方創生につなげることができたのではないでしょうか。
といっても、ヴィソンはこれで終わりではないようです。ヴィソンには、式年遷宮をモデルとして、一部の建物の木造部分を20年ごとに建て替えるという構想があるようです。これからも、SDGsの聖地を目指して進化し続けていくのでしょう。
“エコ”なものさしで選ぶ
今回は「エコツーリズム」について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
旅を楽しむだけでなく自然や歴史に触れ、それらを守っていく。観光客の自分たちも地域の循環の輪に加わって、大切なものを次世代へ残していく。それを気軽にできるのがエコツーリズムです。こうした“エコ”なものさしで旅先を選んでみるのもいいかもしれません。
ウシノヒロバはエコツーリズムをうたっているわけではありませんが、エコツーリズムの考え方にはとても共感しますし、参考にできる部分が多くあります。
小さな取り組みではありますが、廃棄野菜をつかった福神漬けの商品開発や、ウシノヒロバで出た生ゴミをコンポストで堆肥化する取り組みなど、資源の循環を意識して、少しずつ行動しています。
ですが、それを上から目線でお客さまに伝えたいとは思っていません。ヴィソンの事例のように、「楽しんでいたらいつの間にか環境のためになっていた」ような、「楽しいや美味しいという気持ちがエコにつながる仕組み」を考えていけたらと思っています。
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牛が暮らすキャンプ場「千葉ウシノヒロバ」のホームページはこちら。
宿泊の予約のほかに、オンラインショップではオリジナル商品などを購入することもできます。
・ホームページ
https://ushinohiroba.com/
・定額キャンプ
https://ushinohiroba.com/flat-rate-camping
・オンラインショップ
https://shop.ushinohiroba.com
SNSではウシノヒロバの様子や、イベントのお知らせなどを発信しています。ぜひご覧ください。
・Instagram
https://instagram.com/chibaushinohiroba
・X(旧Twitter)
https://twitter.com/ushinohiroba
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(執筆:松本有樹、編集:山本文弥)