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千葉ドリームスター 関東甲信越大会連覇!(後編) 決勝で戦った”盟友兼ライバル”絆の物語と”全員野球”の記録

9月3日(土)、埼玉県さいたま市の大宮けんぽグラウンドで「第28回 ゼット杯争奪 関東甲信越身体障害者野球大会」が開催されました。

千葉ドリームスターは全国大会常連の群馬アトムに5年越しの初勝利を挙げ、2連覇に王手をかけて決勝へと臨みました。

相手は創設期から11年、共に支え合ってきた”盟友”との真剣勝負です。

決勝戦の相手は名門「東京ブルーサンダース」

前の試合で群馬アトム相手に7−1で勝利し、大会連覇に王手をかけます。ただ、次も決して気を緩めることなどありませんでした。その相手は群馬アトム同様、強豪チームである「東京ブルーサンダース」です。

ブルーサンダースは、1997年に設立した歴史あるチーム。関東甲信越大会優勝9回、秋の選手権大会準優勝3回を誇る名門。

”もうひとつのWBC”と呼ばれる「世界身体障害者野球大会」の日本代表にも選手を輩出しており、身体障害者野球を題材にした平山譲著「4アウト」のモデルにもなっているなど、身体障害者野球の象徴とも言えるチームです。

実は、両者は同地区で覇権を争うライバルであるとともに10年来の絆があ理、ドリームスターにとっても強い恩を抱いているチームです。

11年にドリームスターが本格始動した当初、野球経験がない選手が多く在籍していました。

そこで、Webで選手募集記事を見たブルーサンダースが「千葉でチームを立ち上げるのなら私達も手伝います!」と初練習に駆けつけてくれました。

10年以上交流があり、ライバルでもある東京ブルーサンダース(写真は2019年大会時)

そこで、キャッチボールから片手で捕りそのままグラブからボールに持ち替えて投げる“ワンハンドキャッチ・ワンハンドスロー”、そして片手でのバッティングといった、身体障害者野球ならではの技術をドリームスターの選手たちに伝授してくれたのです。

当時、ちょうど初めてドリームスターの練習に参加し、本大会ではリードオフマンを務めた土屋大輔も

「『絶対自分にはできないな』って思うプレーを見せられてとても衝撃を受けましたが、同じ障害を持っている人のいいお手本を見て刺激になったのでやってみようと思いました」

と野球を始めるきっかけになるなど、同じ関東地区で産声を上げたチームにとって大きな存在でもありました。

合同練習で技術を教わったことがきっかけだったという土屋大輔(7月撮影)

そして11年の時が経ち、その間17年にドリームスターが関東甲信越大会でブルーサンダースに初勝利を収めると、19年も同点からのタイブレークで勝利するなどまだ胸を借りる思いがありつつも、戦えるまでに成長できました。

この2年間も、ドリームスターの練習にブルーサンダースの選手も一部参加したり、チーム同士の合同練習や試合も行うなど、コロナ禍で制限がありながらも共に支え合い絆を育んできました。

しかし、今回は関東甲信越の覇者を争う真剣勝負。忖度なしの決勝戦は14:48にプレーボールとなりました。スターティングメンバーは以下の通りです。

1 土屋大輔(中)
2 城武尊(三)
3 土屋来夢(遊)
4 梶本祐介(右)
5 中䑓陵大(二)
6 山田元(捕)
7 山岸英樹(投)
8 石井修(一)
9 宮内隆行(左)

苦節11年、”完全優勝”で大会連覇を達成

先発は初戦に引き続き山岸がマウンドに立ちます。初回を3人で抑え上々の立ち上がりを見せました。

この試合も先発マウンドに立った山岸(提供:東京ジャイアンツ)

裏の攻撃では、ドリームスターが初回から打線の繋がりを見せます。2番の城から5連打で2点を先制、前の勢いそのままにここでも試合の主導権を握ります。

山岸はその後も安定した投球を見せ、3回まで無失点に抑え、味方の更なる援護を呼び込みます。

宮内も後日、「相手のペースにはまらないよう、我々の攻撃を1秒でも長く、制球見極めて好逑を打つ事を意識していました」と語ったようにその意識が確実にチームへと浸透していました。

この大会も投打で活躍した城(提供:東京ジャイアンツ)

先頭5番の中䑓が出塁し、ランナーを溜めると打撃陣はボールを慎重に見極め押し出しなどで3点を追加します。3アウトとなったところで規定の100分を迎えたため5-0でゲームセット。

ドリームスターが本大会を制覇。苦節11年、大会連覇であるとともに群馬アトム・東京ブルーサンダースと全国大会常連チームを相手に勝ち抜いて初の”完全優勝”となりました。

発足11年を経て初の完全制覇を達成(提供:東京ジャイアンツ)

この2試合、富田寅蔵スコアラーも「全員野球でした」と語っており、選手個々の能力を引き出した監督の采配が光った大会でもありました。

選手権に向けて「結束したチームに」

ドリームスターを率いたのは小笠原一彦監督。日本身体障害者野球連盟に加盟前の13年に就任し、現在まで指揮を執っています。

翌年の連盟加盟後から17年の本大会準優勝、昨年の初優勝そして選手権初参加とチームが強くなる過程を肌で感じてきた一人です。チームが強くなってきた実感について問うと、

「私は指導経験がないので、土屋純一ヘッドが練習メニューや試合の手配などサポートしてくれました。いかに実地訓練を重ねるかにポイントを置いて練習や試合を組んでくれたので、必然的にレベルアップしていったのたと思います」

とヘッドのサポートも大きかったことについて感謝の気持ちを表します。

本大会でも采配が冴えわった(写真は7月ドリームカップ時)

また、この2試合についての采配面については山岸が「監督がいいタイミングで代えてくれた」と語っており、投手の起用については

「集まった選手で最高のパフォーマンスを!がモットーですが、今大会は強豪相手ということで厳しい戦いになることが想定されました。山岸、城ともに切替のタイミングを概ね2人とも共有していました」

と語り、両エースに信頼を寄せるとともにコミュニケーションを取っていました。また、野手についても

(特別指名打者制度:EDHを使った)10人打ちをせずに、小林(浩紀)を温存し、ユーティリティに使えましたので、打者走者や選手交代時の選択肢が増えました。老体(54歳)にビシバシ鞭打たせていただきました(笑)

とユーモアを交えて語り、選手個々の特徴を活かした起用で優位な試合運びができました。

※小林のユーティリティさはコチラでご紹介しています!↓↓

そして、この大会を振り返り、

「自分たちの野球=『活気ある雰囲気とミスをしない堅実な野球』が出来た事です。力量としては、両チームに追い越せたと思っていないです。ただ、平常心でチャンスを取りこぼさなかったのが、勝利に繋がったと思います」

試合後には歓喜の胴上げが行われます

と語りました。次は11月に神戸で行われる秋の選手権大会。もう2ヶ月をきり、5月に続いて全国大会の舞台が待っています。それぞれ、両者は

「ミスをしない確実なプレーを心がけるよう、準備したいです。健常者チームとの試合や練習を通じて繰り返し反復させます。各自の能力は高いので、
主将として、結束したチームにしていきたいです」(宮内主将)

「選手権も、集まったメンバーが最高のパフォーマンスを出せるようにしていきたいと思います。皆さんを、”あ!”っと言わせるような楽しい試合をしたいです」(小笠原監督)

と意気込みを語ってくれました。昨年は初戦のタイブレークで7チーム中5位と悔しい結果に終わりました。余韻に浸る間も無く、大会への準備は始まっています。その雪辱の舞台はもうすぐですのでチーム一同、全力で臨んで参ります。

昨年の秋の選手権大会の様子はコチラ↓↓

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