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時価総額10億円の壁を超えるには?現役起業家が徹底討論

こんにちは、千葉道場ファンド ベンチャーキャピタリストの木村です。今回は10月28日に開催した弊社2回目の勉強会「時価総額10億円超えNight!!」の模様をお届けします。

前回は時価総額5億円を超えるためのノウハウを語りあうトークセッションでしたが、今回はその一歩先となる時価総額10億円超えの起業家にフォーカス。千葉道場内の起業家2名をゲストに招き、ファイナンスの経緯や戦略立案、調達までに実行したアクションなど、本来であれば表に出しづらいエピソードも赤裸々に語っていただきました。

トークはほとんどがコンフィデンシャルな内容のため、本記事で紹介できるのはほんの一部ですが、当日のセッションの様子を少しでも体験していただければと思います。

ゲストスピーカー紹介

1人目のゲストは、私募社債に特化した発行・購入プラットフォーム「Siiibo」を展開するSiiibo証券の小村和輝さん。

外資系証券会社のトレーダーとしてCDSや社債などを扱っていた小村さんは、"私募社債”の領域は参入障壁が高く、ブルーオーシャンであることに注目しました。

私募社債の手間をwebを用いて軽減し、透明で公正な直接金融のプラットフォームとしての取り引きの場を構築できれば、これまで銀行借入れや株式発行など資金調達の手段が限られていた企業にも、新たな道が開けるーー。このビジネスモデルの先見性や可能性を評価され、急成長中です。

2人目の籔和弥さんは、サービス業界に特化したECプラットフォーム「MOSH」で2017年に起業。ヨガやコーチング、美容室、クリエイターなどのユーザーに向けてサービスを提供しています。

競合の多いECプラットフォーム業界でMOSHが持つ強みは、サービスの作成から運用までをスマホひとつで完結できるところです。さらにオンライン、オフラインのどちらの環境下でもサービスの予約管理ができる点が、ユーザーに支持されている理由です。

お二人の話を、元起業家・現キャピタリストの目線で膨らませていった3人目の登壇者が、弊社千葉道場ファンドのパートナーである石井貴基です。

教育分野で10年前に起業を経験した石井は、当初ベンチャーキャピタルの存在を知らず、最初の資金調達までに1年以上要しました。そのような苦労も含め、今回は起業家とVCの両者をつなぐ役割として、それぞれの立場の本音を語りました。

調達成功のためにトラクションをどう見せる?

イベントの話題は「各ラウンドの調達が成功した理由や主なKPI」へと進みます。小村さんは資金調達ラウンドを成功できた理由として「トラクションと成長ストーリーの整合性」を指摘。籔さんからも同様に「トラクション」が挙がりました。

とはいえ、お二人とも、シリーズBを実行するためにトラクションを意識したわけではなく、トラクションが出はじめたのが結果的にシリーズBのタイミングだったというのが実情のようです。

「どうしてもトラクションをつくらないといけない、という意識はなかったですね。順番としては、まず夢があって、そこへの成長ストーリーと各段階で達成すべきマイルストーンがある。トラクションってそこに至る道程ですよね。なので、何を仮説検証した結果なのか、ストーリーとの兼ね合いが大事だと考えています」。(小村さん)

「うちの場合は2020年4月頃にトラクションが急激に伸びたタイミングで、投資家さんに、『籔さん、このタイミングですぐ次の調達に動きましょう』とアドバイスを受けました。それで、じゃあ行くかってなってラウンドを始めたんですね。私たちのサービスがそのタイミングで、がっと伸びたので、このチャンスを絶対逃すまい、という意識でした」。(籔さん)

成長率が増加したタイミングでアクセルを踏むという判断をした籔さんですが、トラクションの見せ方については苦労も。

「調達でトラクションが求められる理由は、最終的な市場の仕上がりや狙いたいマーケットから逆算した経営戦略、そしてマイルストーンを今まさに順に達成しているところで、それに沿って今これくらいの実績があります、というストーリーの説明が投資家に求められているからだと思います。

私の場合、市場の仕上がりとか経営戦略が当時クリアに見えていたかというと解像度に粗さがあった。なので、市場が伸びるという大枠のストーリーがあって、プロダクトの優位性があって、それで大きく伸びてるという見せ方だったんです。

本当は『市場が〇〇という状況なので、こういう経営戦略で、この順番で実行していきます』っていう見せ方ができているのが理想的かなと思います」。

お二人の考え方は、キャピタリストである石井の立場から見ても、トラクションの本質を突いたものだったようです。

「お二人の言っていることは、かなり本質的だなと思っています。やはり、私たち投資家サイドは、将来これくらいになるんじゃないか、というところから考えて、それであれば今のタイミングはこれくらいの時価総額が適切なのかなという目線感を持つと思います」。

「そのため、トラクションの総量自体が重要かというと、必ずしもそうじゃないと思います。本当にこれから伸びるぞ、あるいはこれからくるマーケットだぞ、っていうところへの理解が得られるかどうかが大切だと感じています」。

「個人的には事業仮説が3つあるうちの1つくらいがようやく立証できたかな、というのがプレAあたりのフェーズの目安かなと感じており、シリーズAに進むタイミングで、もう一つの仮説検証を終えるか、あるいはその仮説をより深く検証できる。なので、シリーズAくらいまでのステージでは、全ての仮説検証の結果が必ずしも明確に出ている必要はないかなと思っています」。

投資家は仮説検証の目安としてトラクションは見るけど、それがすべてじゃないと思います」。

どうやってバリュエーションの相場観を得るか?

前回の勉強会でも大いに盛り上がった、適切なバリュエーションとは何かという問題。バリュエーションに対する決まった答えはなく、起業家によって投資家によって、その考え方はさまざまです。

今回のイベントでは、「バリュエーションが何かは分かった。では、そのバリュエーションの相場観はどうすれば得られるか?」という点について深く議論されました。

自身の過去の調達を振り返り、バリュエーションについて小村さんはこのように答えます。

「おすすめなのは、まわりの投資家や起業家にバリュエーションの相場観を聞くことです。ファイナンスに限らず、何か取引を行う上で相場観がないというのは一番怖いことでもあると思います。最近ファイナンスした(親しい)起業家に聞けば、バリュエーションを教えてくれることもあります。お互いに教え合って、『自分のところはだいたいこんなもんだな』という相場感を持っておくと、のちのち交渉しやすくなるんじゃないでしょうか」。

籔さんも、それに同意します。

「もっと多くお金を集めておけばよかったと語る起業家はとても多い気がします。でもその金額感って、シリアルアントレプレナーじゃない限り、そんなに金額を扱ったことがないと思いますし、難しいですよね。希薄化しすぎるかなとは思いつつも、振り返るともっと多めにしておけばよかったかなと自分でも思います」。

石井は、具体的にどんな人に相場感を相談するといいか、過去の経験から意見を述べました。

「みなさんにおすすめしたいのは、シリーズBやCにも投資するような投資家、または上場経験がある先輩起業家に相談することです。バリュエーションの相場観はもちろん、EXITまでに調達すべき金額はどれくらいなのか、お金をいつ・どう使うべきかなど、最初は本当にわからないと思うので、ある程度先のステージを見ている人に相談したほうがヒントをもらえるのではないかなと思います」。

「投資家に自社の適切なバリュエーションを聞いてみるというのは、起業家側から投資家をチェックするための、ひとつの方法だと思います。バリュエーションを適正水準よりも安く投資できたからうれしいと思う投資家は、あまりいないんじゃないかなと思いますし、企業が健全に成長するための資本政策を真剣に考えてくれるのが良い投資家だと思うんですよね。そのため、『この企業が成長するのにこのフェーズで8億円が必要だ、とすると最低でもこの程度の時価総額にしたほうが良いのでは?』というような見立ては聞いてみてもよいのかなと思います」。

起業家よ、渋谷に集まれ!

今回のイベントでは小村さんと籔さんから、コロナ禍を経て、時価総額10億円を超えるためのプロセスを語っていただきました。

次回は、「ゼロからわかるベンチャーキャピタル」と題したイベントを2022年11月25日に開催いたします。これまでベンチャーキャピタルとあまり接点を持ったことがない起業家、ベンチャーキャピタルへの理解が浅いと感じる起業家、起業準備中の方など、幅広い起業家のみなさんに向けたイベントです。ベンチャーキャピタルの基礎知識、(一般論として)ベンチャーキャピタルごとの違いと、その違いを踏まえて自社に合ったベンチャーキャピタルとは何か、などを学べる内容となっております。

次回イベントは以下のページからお申し込み可能です。ご参加をお待ちしております!

第1回のイベントの様子は以下の記事でご覧ください。


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