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マーベル作品に全てを捧げた先輩とジブリ映画を観る ③思い出のマーニー

本シリーズ(全5回)は、マーベル作品に全てを捧げた先輩・遠藤さんがジブリ映画で新たな世界を広げていく様子を記録するブログドキュメンタリーです。

3月になった。

朝、窓を開けると春めいた光が部屋の中に差し込んでくる。窓辺で育てている大根も日を浴びてどこか嬉しそうだ。

その瞬間、ふと思い出した。

あ、そういえば遠藤さん卒業するじゃん。

この企画を3ヶ月以上放置していた私は、さっそく遠藤さんに連絡を取って『思い出のマーニー』(2014)を観てもらうようお願いした。

この3ヶ月間、色々なことが起こっていたみたいだ。

なんとTSUTAYA稲毛店が去年のうちに閉店していた(これから千葉大生はどこでジブリ映画を借りろというんだ?)。

ジブリ映画を観る私たち自身も、きっとどこかしら変化しているのだろう。

そんな予感を抱きつつ、私は遠藤さんへのインタビューに臨んだ。

会ってなさすぎてもう3月なのに2024年の展望的な話から始める

徳永 2024年、近所のTSUTAYAは潰れるしMCU映画の公開は一本だけだし、結構不遇の年かもしれないですけど、最近遠藤さんは映画観てますか?

遠藤 卒業研究も終わってまた観始めた感じかな。最近すっげえくだらないの観たんだよな……Netflixの『Gメン』(2023)。

これは……あまりにも俺にハマらなすぎた。

徳永 ハマらなかったんかい。くだらないやつとかコメディって遠藤さん好きなやつじゃないですか。なのにしっくりこなかったというのは相当ですね。

遠藤 ハマらなすぎてもはや何も覚えてない。ずっとエンドロール観てるみたいな気持ちだった。

徳永 なんか怖い話ですね。

「太っちょ豚」を擁護できるか

(以下、『思い出のマーニー』について激しくネタバレしています)

徳永 そんな遠藤さんに今回『思い出のマーニー』(2014)をぶち込んでもらったわけですけど。率直にどうでしたか?

遠藤 面白かった。面白かったけど……なんか怖い。うっすらずっと怖い。

徳永 確かにマーニーとか物語の舞台となる湿っ地屋敷は海外の雰囲気ですけど、うっすらずっと怖いのは日本的な感じがしますね。

遠藤 印象に残ったシーンもいくつかあって、まずやっぱり杏奈が地元の女の子の信子に自分の書いた短冊を勝手に見られて「太っちょデブ」と言ってしまうところ。杏奈が初めて自分の不満、感情を露わにする大事な場面なんだけど……

徳永 遠藤さん、そこ「太っちょ豚」です。

遠藤 俺の方がひどく言ってるじゃねえか。まあ、そこで「太っちょ豚」と言われた信子が「あんたの言う『普通』なんて無い。あんたはあんたの見える通りにしか見えない。はい、この話はここで終わり!」みたいなことを言ってて、あれ、信子いいやつじゃね?杏奈、謝れよ……!と思ったね。

徳永 でも信子も急に核心突きすぎじゃないですか?お前、一気に踏み込みすぎだよ……!と思いましたけど。

遠藤 いやーでも年頃の女の子に「太っちょ豚」と言うのはさすがに……

徳永 擁護できない?

遠藤 どっちの言い分も分かるんだけどね。今じゃなくていいから後でちゃんと謝っときなって信子側に立っちゃったね。

徳永 保護者としての目線がすごいな。

『思い出のマーニー』の舞台となった釧路湿原

徳永 この作品の肝はマーニーの正体が明らかになる場面だと思うんですけど、そこはどう観ましたか?

遠藤 時代の違う人っぽかったり、眼の色の話もあったり、なんとなく想像はつくのかなとは思った。でも、杏奈が幼い頃に直接話を聞いていたからこそ幼いマーニーが現れたと思うし、マーニーの思い出の場所を巡ることで、なんだろな……二人の間にある繋がりを強く認識していったんだなと腑に落ちたね。

徳永 確かに結構カッチリした物語ですよね。僕結構ジブリってオチをはっきり回収しない作品が多いのかなと思ってたんですよ。

遠藤 俺もそのイメージはあった。マーニーの正体も最後まで明かされないのかなと思っていたから最後の展開は結構スッキリしたな。

徳永 信子とも最後一応仲直りするし……

遠藤 それもよかった。信子はほんとにいい子だから……

徳永 笑 でも……遠藤さん『Gメン』全く覚えていない人とは思えないくらいちゃんと喋ってくれますね。

遠藤 『Gメン』は本当に覚えてない。主演がキンプリの……岸くん……?

徳永 やっぱりここだけ予告編だけ観た人の記憶なんだよな……

ジブリとマーベルとアイデンティティ

徳永 話の中で杏奈が自分だけ青い眼をしてることに悩むシーンがあるじゃないですか。そういう自分のアイデンティティの悩みって僕個人的には結構共感できる悩みのテーマだったんですけど、マーベル作品の中で遠藤さんが共感する悩みってありますか?

遠藤 共感……?悩み無いからなあ、俺は。

徳永 笑

遠藤 もちろんシリアスな作品も観るけど、そこに自分の悩みを投影させることは無いな。ほんとに……何も考えずに生きているから悩みは無い。でもアイデンティティといえば『スパイダーマン』(2002)とかはそういうテーマを扱った映画だね。

ヒーローとしての自分と、スパーダーマンではない一般学生の時の自分との境目で悩む……という話。

徳永 最近もスパイダーマンの映画出たじゃないですか。テーマとしては共通してるんですかね。

遠藤 そうだね。アニメ映画で『スパイダーマン スパイダーバース』(2019)、『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023)が出てるけど、これらは特に、スパイダーマンとしての自分とそうではない自分、どちらが本当なのか。スパイダーマンじゃなくなった自分に何が残るのか。これはやっぱりアイデンティティがテーマになってるよね。


徳永 この企画の初回に観た『耳をすませば』は結構遠藤さんに刺さっていたじゃないですか。あと、以前『四畳半タイムマシンブルース』(2022)にグッときたみたいな話もしてくれたことがあるんですよね。だから「人生の選択」みたいなテーマが遠藤さんに刺さるのかなと勝手に思ってます。

遠藤 確かに人生の重要な判断を迫られるみたいな作品は喰らうのかもな。

遠藤が苦手なマーベル作品

徳永 『思い出のマーニー』って結構ホラー的な話でもあるじゃないですか。マーベルでもそういう怖い作品ってあるんですか。

遠藤 ある。『ドクターストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)とか。ゾンビ要素があって、ちゃんと不気味でちょいグロでもある。

展開も重い。基本的に俺はMCU映画を映画館で一回観て、配信でも二回くらい観るんだけど……

徳永 すげえ観てるな。

遠藤 この作品は映画館の一回しか観てない。ホラーはあんまり得意じゃないし展開も重いし、あと俺の好きなキャラが不幸な目に遭うから「悲しすぎるな……」ってなっちゃったな。

お約束の質問

徳永 マーニーは可愛かったですか?

遠藤 可愛かったね。

徳永 笑 

遠藤 でも俺はマーニーより杏奈の方が可愛かったな。

徳永 実際観たらそっちなんですか。杏奈はどこが可愛いんですか。

遠藤 …………顔。

徳永 笑

遠藤 あとは不意に出る笑顔ね。

徳永 『借りぐらしのアリエッティ』でも同じこと言ってたんだよな……

遠藤 序盤は特に暗い顔が多いじゃない。だから……ね?というのはあるな。でもちょっと幼すぎるな。

徳永 幼さはどの部分に感じるんですか?

遠藤 もちろん顔や年齢もそうだし、感情の抑制が苦手なところかな。コミュニケーション能力としても最初は足りないところが多いじゃない。

徳永 確かに「太っちょ豚」のシーンはそういうのが如実に出てしまった瞬間ですよね。……遠藤さんに関しては「人生の選択」とかより女の子の話題を追求するべきだったのかもしれませんね。

遠藤が最後に選んだジブリ映画は……?

徳永 次で一応最終回なんですけど、最後に観る作品を遠藤さん選んでください!

遠藤 うわーどうしよ。

徳永 なんでもいいですよ。

遠藤 『風立ちぬ』(2013)で!

徳永 おお~!多分すごく良いチョイスなんじゃないですか。『風立ちぬ』へのイメージはなにかありますか。

遠藤 マジで何も知らないな……ただ、ネットで『風立ちぬ』の夫はあまり良い奴じゃないという情報は見たことがある。

徳永 ネットだな~。

遠藤 YouTube Shortsで流れてきたね。それだけ知ってる。

徳永 じゃあその最初のイメージがどう変わるかも楽しみにしながら、次回は『風立ちぬ』でお願いします!

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久しぶりに話したが、遠藤さんの映画へのスタンスは全く変わっていなくて安心した。

エンタメを観続けていると、これはどうやって楽しめばいいんだ……?となる作品に出会うことがある。だがそんな時も、遠藤さんのようにまっさらな気持ちで作品の世界を楽しむことが一番大切なのだろう。

遠藤さんに連絡をとってこの記事を書く間、窓辺の大根が花を咲かせていることに気づいた。日光と水だけですくすくと育ったこの大根のように、私も日々見聞きするものに対してまずは素直に受け取ってみようと思った。

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大根ってこんな育て方だっけ?

④風立ちぬ に続く


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