ピストルの音を考える 〜川口市発砲事件に寄せて〜
昨日、埼玉県川口界隈でタクシー運転手がピストルで撃たれたと報道がありました。命に別条がないということで、まずは安心している所です。
さて、報道では防犯カメラに集音された「発砲音」がしきりに放送されていますが、この音からどのような事がわかるかを少しだけ考えてみたいと思います。これまでも幾度かピストルの音を鑑定した経験がある立場上、捜査に影響を及ぼしてしまうかもしれないので、あまり多くは語らないようにします。
<ピストルの種類>
最近、シティハンターが放映されるとのことで冴羽獠の発砲シーンなどが格好良く描かれていて、実はピストル好きの私もシビれています(もちろん私が趣味で持っているのは全てBB弾ですよ)。
そこで、ちょっと考えてみて欲しいのですが、冴羽獠が発砲する時の音は
「ズキューーーーン!」
という、まさにわかりやすいピストルの音です。あの銃は「コルトパイソン357マグナム」という大ぶりなピストルです。現実世界で、しかも日本であんな銃をぶっ放したら「何か爆発したのか?」と半径200m圏内の住民は飛び起きます。
防犯カメラの小さなマイクで集音されていたとしても、もし今回の銃がコルトパイソンレベルの拳銃であったなら、こんな乾いた音では済みません。
小中学校の運動会で使用する「よーい、どん」用のピストルを想像してみてください。火薬量など、、、つまりそういう事です。
<乾いた音とはなにか>
音の反響や残響から車内で発砲されたか、屋外かがわかります。
報道を見る分には「パァァァァァァン」ではなく「パンッ」といった音でした。
一般的な認識として、こういった残響が少なく、低域周波数成分が少ない音を「乾いた音」と表現します。
恐らく「音量」はある程度大きかったのだと思います。車内で発砲されていたとして、防犯カメラのマイクにこれだけの音量で集音されているわけですから、低音周波数成分が車内クッションでミュートされ、高音周波数成分が車外に漏れたのだと推定されますので、そのピストルの大きさもおよそ見当がつきます。
あとは、もう少し現場の状況として発砲現場と防犯カメラ間の距離と角度、その間にある遮蔽物がわかれば、あぁ、だいたいあのあたりの銃かな?という事がわかってきます。