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カナダ横断鉄道日記2022 #3日目【カナダの中心】

3日目【マニトバからサスカチュワンを抜けアルバータへ】

 2日目までに進んだ距離は2,300km。全行程は4,500kmなのでほぼ半分。カナディアン鉄道後半戦のホイッスルが高らかに鳴り響いた、と言いたいところだが、3日目は草原地帯の静寂で幕を開けた。起きると同時に列車はサスカチュワン州に入った。たまに長い長いベルトコンベアーがあり、その先には小麦工場だろうか、大きな建物も見えた。馬も飼われている。この瞬間、電車から見た初めての動物が自動的に馬に決定した。馬、馬か….。

小麦工場?

小麦の生産地

すぐにMELVILLEなる駅に着いた。この時点でなんと4時間の遅れがでているらしく、停車時間はわずか10分。変に1時間止まれても困るくらい何も駅だったので助かった。3日目ともなると似たような景色をみてもさほど心は動かなくなってくる。もちろん綺麗ではあるのだが。カナダの広さをまざまざと見せつけられる時間が続く。

 昼食はオーストリアとニューヨークからそれぞれ一人旅をしているおばさんと、日本人の学生と同席。エビとホタテの串焼きのようなものを選択。車窓の景色は依然として一面の小麦畑。降り続いた雨のせいで現在は沼地のようになっているが、乾燥したら小麦の栽培が始まるとのこと。すれ違った貨物列車にはThe Canadian What Bread と書かれた車両がいくつか編成されており、これで小麦をカナダ全土に送り届けているようだ。ちなみにニューヨークのおばさんのマスクは口回りが透明になっている独特なデザインだった。

まさか焼き鳥の串をこんなおしゃれな皿の上で見る日が来るとは

サスカチュワン州都サスカトゥーンのサスカトゥーン駅

おやつどきにサスカチュアン州の州都サスカトゥーンに停車。ウィニペグ以来約16時間ぶりの乗客の入れ替えだ。もうなにもない駅舎を見ても一切驚かない。ぼけーっと地図が映し出された画面を眺めているとウィニペグから乗車しているというインド人女性に声をかけられた。エドモントンに新居を建てた弟に会いに行くらしい。既に5時間遅れをたたき出している我らがカナディアン号。弟さんも待ちくたびれていることだろう。

 さて、駅舎から列車に戻るとドアの横で待っていた乗務員に"How was Saskatoon?"と笑顔で聞かれた。この何もない駅を見てどんな感想を言えばいいのだ。「すごくよかったよ」と言えば嘘になるし、「ひどい駅だね」なんて言えば失礼にあたるだろう。あらゆる選択肢から絞り出して"Not bad"と答えると、乗務員は笑いながら「なんにもないもんね」と笑っていた。そっちのスタンスで良かったのか。正直に言えばよかった。

Saskatoonの「はたらくくるま」
「サスカトゥーンが呼んでいる」

見渡す限りの地平線

部屋で仮眠をとったのち少し遅れて夕食会場に行くと、イギリスから旅行中の夫婦と同席になった。バンフやレイクルイーズに向かい、バンクーバーから帰国するらしい。なんと素敵なバケーション。ちなみにイギリス英語は本当に聞き取れないが、本場の英語の方が難しく感じるのは少し恥ずかしい。カリフォルニアロールは好きだけど握りは苦手なんだと言っているカナダ人とやっていることは変わらない。ちなみに夜は寿司ではなくステーキ。これでもかというほど柔らかかった。

ステーキ。手は調味料を盛り付けてくれる乗務員さんの手。あの調味料がなんの味だったのかは本当に謎。

 夕食後の時間はなぜか空いている展望台で、食後の休息を取った。ほぼ360度の地平線を見るのは人生初めてかもしれない。高い建物、とかではなく高い場所がなく、たまにボコボコとした岡は会現れるがひたすら平坦な土地が続いている。これだけ開けた場所に人が住まなくて済む国、それがカナダである。池で優雅に泳ぐ白鳥の中には一度も人間に会うことなく一生を終えるものもいるのだろう。かつての関東平野もこうだったと思うと、この土地も300年後には高層ビルが立ち並んでいるのだろうか。乗務員に「もうアルバータ州に入ったの?」と聞いたところ「景色が変わらないからわからないや」と返された。適当にも程がある。

360度こんな感じ。東京ドーム何個分だ?
最後尾からの写真。2車線なのは貨物列車の対比地点ゆえ。にしても天気悪いし禍々しいなこの写真。

ラスト2州!

暗くなってから通信が安定したためマップを開くと、既にアルバータ州に入っていた。オンタリオからマニトバとサスカチュワンを経て4つめの州。残された州は慣れ親しんだブリティッシュコロンビアだけである。この旅もあと1日半ほど。建物と自然が同居する1日目のオンタリオ、凍った池と氾濫寸前の川の畔に木々の生い茂る2日目のマニトバ、theプレーリーが広がる3日目のサスカチュワン。ついに明日はロッキーに差し掛かる。

なぜかしっかり日本語でも書いてある札。「邪魔しないでください。」

 間違いなくクライマックスが近づいている。暗闇のなかにまばらに家の光がまたたく車窓を眺めながら、半分ほどカーテンを開けた状態で23時ごろ眠りについた。

3日目。文字通りカナダの中心。脊髄部分。



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