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なぞなぞ part2

「まだモヒンガ-も食べてないのかい。いったいミャンマーにきて何日経ってるのか?」
タクシー運転手があきれて言う。こちらの挨拶は、ごはん食べましたか?だ。この一週間は気がついたら夕方だった。
「もう仕事は終わったのかい。翡翠色のモヒンガ-を食べに行こう。」
まだ天高く、お日様は「あと半日いけますけど?」というような明るさだが、すでに5時を回っている。
 そうめんのような細いお米の麺に魚のだしがきいたスープは、定番の朝ごはんだが、そのお店は夕方まで開いているという。緑色の麺に練り込まれた野菜は心臓に良いといわれ、モヒンガ-を控えなければいけない人でも安心して食べられるらしい。
「ヘルシー・モヒンガ-ですね。」
そうともいうねと笑うと、大きな交差点をクルッとUターンした。
揚げた豆か、揚げパンか、トッピングを選んで店内へ入る。これがスープと合わさると冷やしたぬきの天かすか、味噌汁のお揚げくらい重要なパートとなる。とてもおいしい。
「普通のモヒンガ-は豆の粉が多いけれど、こちらのは魚がたっぷり本格派なんだ。」
長い友人の兄妹である運転手の家族は手術室ナースで、受付前にATMが並ぶ地元の病院は高くてとても利用できないなど、一般目線でたくさんのことを教わった。こんどは彼の兄妹でもある友人も連れてと来ようとお店の名前を尋ねると、
「店名は私ではなく母の名前なのです。先日、他界しましたが。」
お店のカードをもって女性が現れた。
「サンキュー!〇〇さん。」
とお店の名前をいって手を合わせると、
「ありがとうございます。」
と店主は笑った。開店からまだ半年、毎朝通う日本人もいるという。

さて、緑色の正体は?
長ーい緑色の野菜で市場でよく見かけるもの。日本にあるかはわからない。ごぼうでも香菜でもない。セリでもなく、ハーブのようなさわやかな味。麺に練り込まれているタネを見せていただいたが、結局わからず店を出た。

数日後、タクシーがオフィスの前に停まる。
「調子はどうだい?」
おかげさまで。ところであの野菜だけど、レモングラスでは?
「ノーー、ドラムスティック!!」
というとダダダダダダ、ダダダッと小太鼓を打ちはじめた。
なぞなぞは続く。

ドラムスティックの種

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