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2023年 ビートルズの最後の新曲「Now And Then」

まだ11歳、小5だった自分。母親が友達から借りてきたというビートルズのLPをカセットテープにダビングしていたのに興味を持ち、「Please Please Me」のイントロのちょっと調子ハズレの掛け声がやたらとカッコよく、その部分だけ何度もリピートして聴いた。

あれからおよそ40年。2023年になって、今日11月2日、ついに配信リリースされたビートルズの新曲「Now And Then」。
ジョンレノンが遺したデモテープからボーカルを抜き出し、ポールがベースを弾き、リンゴがドラムを叩き、ジョージが生き写しのようなスライドギターのフレーズをポールが弾き、ビートルズのプロデューサーだったジョージ・マーティンの息子ジャイルズがストリングスを入れ、デモテープに入っていたピアノのフレーズを(恐らく)ポールが弾いて、ブリッジのメロディをポールが追加して、曲として完成させたもの。
正直、あまり期待していなかった。
しかし、さきほどタイ時間の21時にApple Musicを通じて聴いたところ、不覚にも涙が出た。
(Appleという名称はビートルズが立ち上げたレーベルの名前であり、一時はコンピューターのAppleとは名称について権利を争っていた時期もある)

何度も繰り返し聴いている。なぜこんなに感動しているのか確かめたくて。
AIがデモテープから抜き取ったジョンの声?
ポールの味のある裏メロベースライン?
ジョージっぽいスライドギターのフレーズ?
リンゴのオーソドックスなドラム?
最後のタンバリン?

それら全てであり、それだけではない気もする。
AIの最新テクノロジーを使っても、この「新作」を一から生み出すことはできなかっただろう。
この曲の噂がネット上で流れ始めた頃、「ビートルズの曲はAIを使って作られている」という情報が出て、巷に溢れるAIが作ったニセモノ曲の類のものをビートルズが作っているのではないかという誤解を産んだ。
実際には多くの人が既知の通り、音質の悪いデモテープ(家庭用のカセットテープ)からジョンの声だけを抜き取る作業にAIが使われただけだった。
YouTubeにはそのデモテープの元音源が転がっているが、海賊版に喜ぶ一部のファンを除いて、聞く価値の無いようなシロモノだった。

歌い方も歌詞もメロディも手探りで、曲の構成もあまり整っていない未完成曲である。

(なお、該当のYouTube動画は削除されてはどこかでアップされ、を幾度も繰り返しているのでいつ消えるかわからないのでご了承のほど)。

ビートルズの新曲として本日発表されたバージョンと聴き比べると、曲としての完成度がよくわかる。

芸術品と言えるほどの出来栄えだ。
はっきり言おう。
AIにこれは作れない。
どんなにAIが進歩しても、人間が作り出すオーガニックな音楽には勝てないことがはっきりした。
音に込められた魂と愛と情熱と、それを実現した人類のテクノロジーと。
それら全てに対する賛歌。すごい曲を出してくれたものだ。

Now and Then / The Beatles

I know it's true, it's all because of you
And if I make it through, it's all because of you
And now and then, if we must start again
Well we know for sure, that I will love you

Now and then, I miss you
Oh now and then, I want you to be there for me
Always to return to me

I know it's true, it's all because of you
And if you go away, I know you'll never stay

Now and then, I miss you
Oh now and then, I want you to be there for me

I know it's true It's all because of you
And if I make it through It's all because of you

元のデモテープと比べてみると、歌詞も余計な部分が削ぎ落とされて、「ビートルズ化」されていることがわかる。
(中にはその部分をなぜ残さなかったんだ、と嘆く人たちもいるようだが、ビートルズとしての決断・アレンジなので仕方ない)
きっとバンドとして活動している現役時代も、こんなふうに各メンバーが持ち込んだモチーフを組み立て、共同作業で作品として作り上げていったのだろう。
そうしたプロセスもこの曲からは感じることができる。
そう、全てが「ビートルズ」そのものなのだ。

ジャケットはシンプルすぎるし、はっきり言ってクソダサいと思う。
でも、余計な虚飾は要らないということから、もう何もジャケットで表現する必要はない、という潔さは感じられる。
この音の前には、何も言うことがない。
それぐらい、期待を遥かに超えた曲だった。

子供の頃の自分に言ってあげたい。
2023年にはビートルズの新曲が出るぞ、と。
ストーンズも新作アルバムを出してるんだぞ、と。

歴史は、真実は小説よりも奇なり。


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