マガジンのカバー画像

塔の魔導師 free

154
「君には魔導師の才能がある。」 奴隷階級の少年リンは、旅の魔導師ユインからそう告げられる。 その日からリンの魔導師を目指す旅が始まった。リンはユインに連れられて魔導師の街グィンガ…
運営しているクリエイター

2018年4月の記事一覧

第133話「スラム街」

第133話「スラム街」

前回、第132話「200階へ」

各話リスト

 200階へと密航する当日、リンはユヴェンとの打ち合わせを思い出しながら、いそいそと部屋で準備していた。

 ユヴェンによると急に『ラフィユイの魔導書』が脚光を浴び始めたのには、200階で『隠れダンジョン』が見つかったことも背景にあるらしい。

「『隠れダンジョン』?」

「そうよ。魔導師が何か隠しものをしたり、魔獣や物資を保管するためのスペースを置

もっとみる
第132話「200階へ」

第132話「200階へ」

前回、第131話「ラフィユイの魔導書」

各話リスト

 次の週、その日もリンはユヴェンと一緒に建築魔法の授業に向かっていた。

 エレベーターの前で待っていると、突然後ろから誰かが抱きついてきた。

「わっ、だ、誰?」

「誰でしょう?」

「パトルナさん?」

 彼女の舌ったらずな声がリンの鼓膜を刺激した。

 例によってユヴェンは彼女を見て不機嫌な顔になる。

「びっくりした。どうしたんです

もっとみる
第131話「ラフィユイの魔導書」

第131話「ラフィユイの魔導書」

前回、第130話「禁忌魔法の研究」

各話リスト

 リンは図書室で『ラフィユイの魔導書』について文献を漁っていた。

『魔導師名鑑』をめくっていくうちに『ラフィユイ』の名前を見つける。

「ラフィユイ……魔導書……あったこれだ」

(『禁忌魔法の研究』に記載のあった魔導書。ユインが黒竜召喚の手がかりになるかもしれないと考えていた魔導師。一体、どんな人なんだろう)

『魔導師名鑑』によるとラフィ

もっとみる
第130話「禁忌魔法の研究」

第130話「禁忌魔法の研究」

前回、第129話「追放」

各話リスト

「師匠のこと、お気の毒だったね」

 学院の通路を歩きながらディエネが言った。

 リンと一緒に法律学の授業の教室へ向かっているところだった。

「うん。ありがとう」

 曲がり角に差し掛かったところで一人の生徒とすれ違った。

 彼はリンを見るなりギョッとして、そそくさと走り去っていく。

「その……大丈夫なのディエネは? 僕と一緒に歩いていて」

 リ

もっとみる
第129話「追放」

第129話「追放」

前回、第128話「交換条件」

各話リスト

 リンは魔導師協会の警吏部に出頭していた。

 取調室は窓のない殺風景な部屋だった。

 リンは部屋に一つしかない年季の入った机に座らされた。

 しばらくするとカツカツと靴音を立てながら担当者らしき男が入ってくる。

「私は魔導師協会警吏部のダミアンだ。君の尋問を担当させてもらう」

 目の前の男はキビキビとした動きでファイルを開きながらしゃべり始め

もっとみる