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塔の魔導師 free

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「君には魔導師の才能がある。」 奴隷階級の少年リンは、旅の魔導師ユインからそう告げられる。 その日からリンの魔導師を目指す旅が始まった。リンはユインに連れられて魔導師の街グィンガ…
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2018年3月の記事一覧

第128話「交換条件」

第128話「交換条件」

前回、第127話「精霊縛りの印」

各話リスト

「バカな。なぜ発動しない」

 ユインはイライラしながら部屋の中を歩き回って行ったり来たりしていた。

 リンは部屋の隅っこで憮然としながら座っている。

「確かにシルフに印を押したんだろうな」

「ええ、間違いありませんよ」

 リンは億劫そうに答えた。

「だったらなぜ生贄魔法が発動しない」

「知りませんよ。そんなこと」

「召喚魔法すら発動

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第127話「精霊縛りの印」

第127話「精霊縛りの印」

前回、第126話「ユインからの指令」

各話リスト

 フローラは魔導師協会の人間に話しかけた。

「もし。そこのお方」

「ん? 何かね?」

「あなたは立派な身分の公明正大な方とお見受けします。お聞きしたいことがあります、主の命令を破った奴隷はどうなりますか?」

「そりゃあ罰を受けることになる。主の命令を全うするのが奴隷の務めだからね。主に逆らえば最悪死刑もありうるよ」

「そうですか。やは

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第126話「ユインからの指令」

第126話「ユインからの指令」

前回、第125話「たとえ高位魔導師になれなくても」

各話リスト

 リンは『生贄魔法』のクラスで単位取得手続きを行っていた。

 教授が儀式を行う。

「魔導師リンに『生贄魔法』の単位を授ける。腕を出しなさい」

 リンは服の袖をまくって腕を晒す。

 担当者が呪文を唱えると紙に書かれた魔法文字がリンの腕に纏わりつく。

「これで君は『生贄魔法』を使う許可を得る代わりに、禁止されている生贄魔法を

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第125話「たとえ高位魔導師になれなくても」

第125話「たとえ高位魔導師になれなくても」

前回、第124話「別れ」

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 その密談はとある貴族の館で行われていた。

「では法案には反対ということでよろしいですね」

 ヘルドが念押しするように言った。

「ああ、約束しよう。王室にもそう伝えておいてくれたまえ」

 貴族の男はそう言った。

 リンは近くで見ながらヘルドに感心した。

(凄いな。ヘルドさん。ついにエディアネル公以外の貴族を説き伏せてしまった。)

 ヘルドは精

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