風に寄せてうたへる春の歌
今回は、山田耕筰作曲の
風に寄せてうたへる春の歌
について書こうかと思います!
この第4曲めの「たゝへよ、しらべよ、歌ひつれよ」を何かの時に師匠に紹介されたのがきっかけで勉強することになり、他の曲もピアノ科の子の伴奏の試験で歌唱を頼まれたため歌うことになったりと、私にはなじみ深い曲たちです♫
さて、この作品は4曲からなる歌曲集で、山田耕筰が友人の結婚を祝して送ったものだそうです
もうめちゃくちゃ派手で、これって何かのお祝いの曲?!ってすぐ分かるような雰囲気です
詩は三木露風20歳の時の作品です
8篇からなるもののうち、1920年に山田耕筰が4つを選び、曲をつけました
I
青き臥床(ふしど)をわれ飾る
春の戀ぐさ、種々(くさぐさ)の花をつくして
また君がため白地なす
祝(ほが)ひの風の素絹もて、
熱き日光(ひざし)を避けまつらむ
青々とした野を飾りつけます
恋をよぶ春の草とたくさんの花をみんな使って
そしてあなたのために白い
絹のような祝福の風で
熱い日射しを避けてあげましょう
✴︎「われ」というのは春そのもので、「君」というのが女性のこと
✴︎臥床はねどこのことですが、青い寝床…うぶな娘に春が来た!ということでしょうか
春がうら若い乙女を賛美している様子が表されていて、春は恋する若者のための季節だ!と言っている感じがします
II
君がため織る綾錦、春の被衣(かつぎ)の戀ごろも
眞晝となれば妙(たへ)に投ぐ
あはれ床しき風の梭(をさ)
あなたのために織る綾錦
それは恋の春を迎えたあなたが身につける衣
真昼ともなると巧みに織り
心ひかれる風の梭なのです
✴︎ 「梭」というのは機織につかうシャトルのことです。左右にしゅんしゅんと動かす、あれ
「綾錦」、つまり春の野山の、草とか花とかで彩られた美しい模様は、風がシャトルのように動き回って織った着物のようだと例えています
おしゃれ!
恋ごろも、なんていう言葉も抒情的で素敵〜
Ⅲ
光に顫(ふる)ひ、日に舞へる、
汝(な)が吹く笛の 調べこそ
戀するものゝ 心にか
熱き涙と、あこがれと、
風はさあらぬ節まはし
光にふるえ、日に舞っている
お前が吹く笛の音色は
恋する者の心に
熱い涙と憧れを抱かせるのか
それなのに風はなんでもないような節回し
✴︎「汝」は春風のこと
✴︎いつか習った、係結び!!「ぞ、なむ、や、か、こそ」ですな。強調と疑問。でも「あこがれと」の後に肝心の文末の動詞がないので、補わなければなりませんね
✴︎最後の一文だけぽっと現れた感じがするのですが、意味を考えるに、こんな感じの訳かと
心を乱すだけ乱しといて、また違った風向きになってふ〜っと通り過ぎるような春風のイメージです
まさにどこ吹く風
春の風の音とか匂いとかって、恋とか関係なく心がザワザワするんですけど、私だけですかね?
Ⅳ
たゝへよ、しらべよ、歌ひつれよ
春ぞ來ぬると風の群、
たゝへよ、しらべよ、歌ひつれよ
げに賑はへる戀幸(こひざち)を、まことの幸を
讃えよ、奏でよ、ともに歌おう
春が来たと風が告げる
讃えよ、奏でよ、ともに歌おう
とても豊かな恋の幸福を、まことの幸せを
✴︎派手、とにかく派手
以上、「風に寄せてうたへる春の歌」のそれぞれの曲について書いてみました!
全体を通して文体が古く解読が難しいですが、春と恋を賛美する、美しい詩です
これに山田耕筰がつけたのが、これまたものすごい装飾の多い、美しい曲です
それぞれが短いので全部で7分に満たないぐらいの歌曲集ですが、技巧的でいて抒情的なので、歌うのにかなりのエネルギーを必要とします
ピアニストとのコミュニケーションもかなり大切になる曲かなあと思います
難しい
私はパキッとした、粒の立ったような音でキラキラと弾いて欲しいなあと思います〜
また機会があれば歌いたい曲です♫