【読書メモ】都市の〈隙間〉からまちをつくろう
久しぶりにまちづくりの本を読みました。
読んだきっかけは、ひとなる図書館の館長さんがトークイベントでオススメされていたこと。
リノベーションまちづくりの実践者の方の勧めとあって、読んでみることにしました。
幸い、ひとなる図書館で借りることができました。
本書の舞台はドイツのライプツィヒ。
まちのハード面が刻一刻と変化していく中で、人々がそれらに対して起こしたアクションの事例が紹介されています。
ライプツィヒの30年
まず、ここ30年のまちの様子を紐解くと、人口予測がことごとく外れるほど、急激な変化に見舞われています。
1990年代初頭には、東西ドイツが統一されたことにより、ライプツィヒの主要産業は衰退し、人口が激減。空き家が増え、老朽化も進みます。
その状況に対処するべく、2000年代前半、行政が動きます。「最悪のシナリオ」として、保全する建物や取り壊す建物を明示し、それぞれに助成金を出しました。
しかし、地域の景観を形成する建物が取り壊されてしまうなどの問題に地域住民が反発し始めます。
そこで、2000年代後半には、「家守の家」と呼ばれる仕組みが生まれました。空き家の面倒な管理を使用者が引き受ける代わりに、家賃を無償とする仕組みです。
安価な物件を求めるアーティストや若者による拠点が次々を生まれました。
2010年代に入ると、そうした安価な空間を求めて激しい人口流入が起こります。不動産市場が高騰し、家守の家の仕組みは成り立たなくなります。
そこで、「ハウスプロジェクト」が生まれます。共同で物件を買い取り、長期的に不動産市場から切り離し、人々の活動拠点となる物件を確保します。この頃には行政からもそうした活動の必要性が認識され、支援の対象となりました。
都市の〈隙間〉とその変化
本書における都市の〈隙間〉とは、不動産価値が低迷して無償・安価で利用できる空き家や、空き家を取り壊した跡地の利用について書かれています。
それらを素人が利用し始め、当初は自分や自分たちのための活動で、だんだんと人を巻き込むようになり公益性のある活動へと発展していった事例が紹介されていました。
ライプツィヒの激動の30年の間に、それぞれの活動も影響を受けて縮小したり、逆に追い風になったり、変化していく過程が見て取れます。
大きな変化として、関わる「人」の変化と、「空間」に対する活動の変化があると感じました。
一つの活動も、同じ人がずっと運営できるわけではなく、雇用助成の廃止など行政都合でメンバーが減ってしまったり、移民難民が増えて多国籍メンバーで運営する体制に変わっていったり…。
社会情勢の影響を受けて変化していく中で、良いこともあれば、衝突などもあるわけですが、そうした課題の中から気づきもあるという前向きな姿勢が見られました。
空間については、活動が盛り上がって利用者が増えれば手狭になります。かといって、広すぎても管理しきれないなど問題が生じます。
本書では「ギチギチ」と「スカスカ」と表現されています。
スカスカの状態では問題が発生し、それを解決するためのアイディアを出すことで場が盛り上がります。
すると今度はギチギチ状態になり、衝突や不満などから離れていく人たちが出てきて場が縮小します。
そしてまたスカスカ状態に戻り…ということを繰り返していくというのです。
自分の経験を振り返っても、確かに、スカスカ状態の場とギチギチ状態の場では抱える問題が本質的に違うと感じます。
その違いがはっきりと言語化されていて腑に落ちました。
感想
私が以前見てきた空き家の活用などの事例を思い返すと、この都市の〈隙間〉に当てはまるものもあったので、言語化されていて頭の中が整理されました。
特に思い出されるのが、東京都墨田区向島界隈のまちづくりです。
スカイツリーに程近いエリアですが、昔ながらの長屋が多く、低家賃で借りれるため若いアーティストたちが移り住んで活気づいているのを、私も現地に何度か足を運んで見てきました。
そうした自分の経験から見出せた共通点もあれば、本書で初めて得た視点もありました。それが時間軸、長期的な視点です。
まちづくりの事例を見ても、今回のライプツィヒのように30年レベルで追いかけたことがなかったので、それだけの時間の中で行政施策が変化したり、人口の急増・激減があったりと、その中での各活動の変化が紹介されていたのはとても興味深いです。
どの事例も、変化の中でやり方を変えながら順応していき、得たものや、
引き換えに失ったものなども書かれています。
本書の終盤に書かれていた「まちをつくる行為は結果ではなくプロセスそのもの」という言葉がまさにそのとおりで、自分が今後関わることがあれば肝に銘じていきます。
隙間から始まる活動は小商いにも似ていると感じたので、次は小商いのテーマの
本も読んでみようと思います。
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