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ケニアの新教育課程CBCの話②~リコーダーとスマートTV~日本ではいつから学校でリコーダーを全員が学ぶようになったんだろう?
前回のnoteに続き、ケニアの新教育課程CBCの話題です。
前回のnoteはこちらからご覧ください。
1.ケニアの小学校でリコーダーが必須に。
CBCでは4年生から!
CBCでは4年生からリコーダーをやらないといけないそうだ。他にもキーボードなど楽器をやらないといけないらしいが、まずはリコーダーについて。
生徒に演奏の仕方を教えて、その評価をして、さらに実技を録画して教育省のポータルで生徒各自のページにアップロードしなくてはならないらしい。
リコーダーのような楽器は日本だったら誰もが小学校から当たり前のようにやってるが、そもそも一体いつから日本ではそれが当たり前になったのだろう?
検索してみたらこんな記載を見つけた。
日本ではいつから学校でリコーダーをやるようになったのか?
https://www.yamaha.com/.../recorder/trivia/trivia005.html
『日本で小学校の教材として使われ始めたのは、昭和34年(1959)から。つまり、昭和22年生まれの人々が小学校6年生の時からリコーダーを習っていたことになります。』
そうだったのか。いまの当たり前が昔も当たり前だったとは限らない。日本だってそうやって一歩一歩改善していったんだなぁと思うと感慨深い。
ケニアではなぜリコーダーをやるのは大変なのか?
で、私たちは今、ケニアで、その新しい挑戦を目撃しているわけだが、これは想像以上に大変なことだ。そもそも、やったことない新しい取り組みなのだから、教えられる先生がいない。先生方も研修を受けないといけないわけだが、何事もタダではない。学校側は費用を払って先生を研修にださなければならないし、そのための人員も不足している。
さらに、リコーダーそのものを生徒は自費で買わねばならない。これが決して安くない。食うや食わずのキベラスラムの保護者や、田舎の無収入の保護者にとっては、至難の業だ。
写真:「まだリコーダー買ってもらっていない人~!?」と聞いたとき、手を挙げた生徒。5年生3学期。(本当なら4年生1学期には入手していなければならなかった。)
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さらに、これは身近には売っていない。ナイロビならまだいいが、これが田舎の、さらに僻地エリアだとお手上げだ。(日用品すら売ってる店がない僻地はケニアには多々ある。)
これはケニア全土にCBCを広げるのは遠い道のりといえる。
音楽好きのマゴソスクールとしては、子どもたちもやる気満々で、誰もがやりたくってウズウズしているわけだが、保護者が買うことができた生徒はほんの数人。大多数は買えていないので、数本を使い回しすることになる。いくら洗って消毒しながら使っているとはいえ、あまりにも危険だ。
そこで、今どきケニアでも盛んなオンラインショッピングで安売りを探し、注文した。子どもたちは大喜び。
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それでも人数が多くてまだまだ足りないので、中古のリコーダーを日本から自力で持ってきてくれる人は歓迎です。(私はいつも来日しても様々なもので重量オーバーなので、事務局で集めることはできません。集めた人は自己責任で自分で持ってきてください!税金がかかるので郵送もできません。)
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2.スマートTVの導入
CBCではIT教育が義務化
さらに、CBCの取り組みでIT教育が義務化されていて、各クラスにスマートTVを設置しなくてはならず、このようにマゴソスクールの教室にも取り付けた。(地元の職人さんが鉄の箱を作ってくれて、普段はその中でカギをかけられている!)
例えば今回のこのリコーダーの授業だが、教科書にYouTubeのリンクが書いてあり、それを教室でテレビに映し、みんなで見ながら練習する、という形。
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とりあえずマゴソスクールでは涙ぐましい努力のもとにこれが出来るようになったが、果たして、ケニアの一般的な公立小学校ではどのくらいの割合でこれを導入できているだろうか?
ケニアの一般的な公立小学校では?
そもそも、電気のない村も多く、パソコンどころか自宅には水道もない家庭はケニアの地方では一般的だ。地域差もあるし、地方格差もある。
今まで私が目撃してきた田舎の学校の音楽教育では、ドレミファソラシドを教えるのに、ガラスのコップに水を入れて音階を作り、それを叩いて教えている学校があった。これは、ひとえにその先生の努力によるものだ。西洋音階を教えたくても楽器がない。ケニアの民族の伝統的な楽器は、太鼓や弦楽器、木管楽器などもあるが、いずれも西洋音階ではなく、アフリカの民族独自の音階が存在している。
ケニアの学校教育の中に、伝統文化の学びも項目として入っている。しかし、音楽の授業としてはやはり西洋音階をやらねばならない。楽器なしでそれをやるのはなかなか至難の業だ。
音楽に熱心な先生がいる学校では、その先生が工夫を凝らして、自分の自前の楽器を学校に持ってきて教えてくれる場合もある。しかしそんな熱心な先生がいない学校では、全く何もやらない場合も多かった。
熱心な先生は、ケニア音楽フェスティバルへの出場も念頭に置いた指導を生徒たちに行い、ケニア全国の小学生の競い合う場に出場していくことを生きがいにしている先生たちもいる。しかし、そんな先生がいない学校では、音楽の多様性に触れる機会はなかなか得られなかった。
やはりそれを思うと、確かに、映像でこうして様々な文化に触れることができる機会というのはとても貴重で、子どもたちが広い世界に触れて視野を広げることができるチャンスになる。また、こうしてすべての生徒が楽器の演奏に取り組むということは、合奏を楽しんだり、音楽での表現を全員が経験できるという意味では価値が高いと思う。
しかしそれにしても、自分の家にも学校にも、電気も水道もなく、基本的な生活のニーズも満たしていない生活環境にいる子どもたちに、いきなりIT教育といっても、かなりハードルが高い。
行き先がわからくなったときには、日本の歴史から学ぶ
CBCは、現状からいうと、あまりにも実際の状況からかけ離れた目標設定がされているため、一体どこに向かっているのだろう?と思うこともあるが、そういうときは、日本の歴史を紐解いて参考にさせてもらうことが私にはよくある。
例えば、私たちのキベラスラムの未来を考えるときに、日本ではどうやってスラムを解体していったのだろうと知りたくなり、私は長年の間、日本各地のもとスラムだったコミュニティと交流して学ばせてもらってきた。
この教育に関しての取り組みも、戦後間もなく、まだ貧しかった時代の日本で、どのような取り組みがされて、それがのちのちどのようなインパクトを社会や個人に与えてきたか、それを知ることは、いろんな意味で参考になる。良いことも悪いことも両方。
だから、かつての時代を日本で生きてきた人たちに教えて欲しい。そして今を生きる子どもたちや先生方、保護者の皆さんからも、日本の教育現場への想いを聞かせて欲しいなぁとつくづく思う今日この頃です。
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CBC導入にはまだまだやらねばならないことが山のようにあり、私たちも手探りで進んでいるのだけれども、この歩みを一緒に経験していただけると嬉しいです。マゴソスクールを支える会では、サポーターを募集中!
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