独白Remix/廣川ちあき

東京の草花が一斉に死ぬときも
多分こんなふうな夏の夜だろう
重たい水を含んだ空気が
体から魂を引摺り出すような

等間隔で並ぶということに
なんの疑問も持たない人々
視線の先には愛よりもヘイトを
まき散らす宣伝文句ばかり

人間どうしで人間じゃなくしあう
やりかたをどこで覚えてきたのか
たった今プールから上がったばかりのような
瞳ですべてを見つけ直したい

自分がいつから生きていたのか
知らないくせに今ここにいる
後ろから追い抜いて遠ざかる
無灯火自転車の群れ、幻の子どもたち

途切れないストーリーの夢を見ること
明らかな悪意をやり過ごすこと
世界の途中から隠されている
いつかまではそうだと信じられていたこと
僕らの手のひらの数だけ地上に
紙飛行機の滑走路が存在する──はずだったこと
そして、それらはなかったことにされているということ

どこかの草原で馬が斃れ
年老た星が音もなくはじけて
針葉樹林の樹々には
透明な血液が脈打っている
それらすべてをフィクションとして
受け流してしまうならそれまでだ
だがそのフィクションが
リアリティに輝きをもたらすとしたら?

対向列車とすれ違うたびに
大きな力で吹き飛ばされてしまうことを考える
それが例えば
僕たちの望まぬ力かもしれない

自分がいつから生きていたか
知らないくせに今ここにいる
後ろから追い抜いて遠ざかる
無灯火自転車の群れ、幻の子どもたち

(2019.06.30)

【この作品について】ラッパー・DUSTY-Iさんの作品「独白」が、共同制作者のPay a.k.a Wildpit¢hさんによってリミックスされ「独白Remix」として新たな作品が生まれました。これをきっかけに、「独白Remix」と題した作品を募るコンペが行われました。本作品はそのコンペに最終日ぎりぎりですべりこみ参加したものです。
詳しくは→ https://jpn-hiphop-ch.com/2019/07/06/dokuhaku/amp/?__twitter_impression=true

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