初音ミクの誕生日はいつ祝ってもいい
初音ミク、お誕生日おめでとう!
いきなりタイトルを回収しました。どうも、chia* と申します。この記事はobscure.様主催の #ボカロリスナーアドベントカレンダー2023 の5日目の記事になります。
前日の記事は、フォルテさんによる『【最速】マジカルミライ2024セトリ予想【確実】』でした。
さて、この記事では先日行われたマジカルミライ2023のレポート「のようなもの」を書きたいと思います。実は本題はレポートではなく別の所にあるのですが……(勘の良いフォロワー諸氏におかれましてはサムネだけ見て何の話をするのかわかるかも)
前振り- 今年のマジカルミライの概要
今年のマジカルミライはこれまでとはかなり変わったものになりました。メインビジュアルに関してはこれまでのザ・アイドルのような衣装とは異なり赤をふんだんに用いたかなりファンキーなもので、今までとは一線を画す新たなマジカルミライを予感させるものでした。
ライブのセットリストにもそれは反映されていて、『ヘッジホッグ』や『フェレス』といったアッパー系の曲が多く流れ、落ち着いたバラード曲はKAITOの『敗走』の一曲のみというかなりハイテンションなライブとなりました。また、今年はめでたく初音ミクが16周年となり設定年齢の16歳に達するという、ある意味記念的な年でした。それもあってか、ライブ後半では初音ミク16周年に書き下ろされた楽曲『ブループラネット』がサプライズで演奏されたり(大阪公演当時は『ブループラネット』の動画は公開前でした)、リン・レン・ルカ・MEIKO・KAITOがミクの誕生日を祝うという内容の楽曲『Birthday Song forミク』が演奏されたりと、初音ミクの誕生日を盛大に祝う演出がなされました。総じて今回のライブはこれまでのような我々の情緒をぐちゃぐちゃにするようなものではなく、最初から最後まで非常に純粋に楽しめるライブとなりました。一曲を除いては。
その一曲とは?それは、和田たけあきさんの『ブレス・ユア・ブレス』です。そうです、またこの曲の話です。noteでこの曲の話を投稿するのは3回目です。繰り返しの多いコンテンツそしてこれからこの曲の内容を説明するのですが、文章の内容が過去のものとほぼ同じです。ごめんなさい。そういうわけなのでこの曲のことはお前の文章でもう読んだぜという方は「***」←こちらの目印で囲まれている部分は飛ばしていただければと思います。
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『ブレス・ユア・ブレス』はマジカルミライ2019のテーマソングです。この曲のテーマは「初音ミクという "いきもの" の過去・現在・ミライについて」(マジカルミライ2019公式サイトより)と書かれています。
これまでは「初音ミク」は楽曲を代わりに歌ってくれることで、自分の気持ちを代弁してくれる、そんな存在でした。しかし時代が経つにつれ多くの人物からいろいろな感情を投入されていった結果、「初音ミク」そのものに文脈や感情が生まれるようになり、その姿はもはや一人の人間と同等になってしまった。そのようになっては自分の気持ちを代弁する存在としては不適切であり、マスターは「初音ミク」に別れを告げるのです。
別れを告げたところでこの楽曲における「マスター」は気付きます。自分と「初音ミク」は同じ人間、同じアーティストとして対等な存在であり、それを認めて別々の道を歩くしかないということに。
この楽曲のPVの一番最後にも、恐らく「マスター」の役割を持つ少女と初音ミクが互いに笑顔を見せ合った後に背を向けて反対方向に歩いて行く様子が見られます。このように『ブレス・ユア・ブレス』は互いに違う道を歩いていくことを受け入れた上で、初音ミクが新しい道を進むことを祝福する、そのような歌になっています。
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本題 - ある「コール」に関して
実はこの曲に関してライブ後にX(旧Twitter)上で物議を醸していた話題があります。それは、この曲のあるコールに関して。
マジカルミライ2023では新型コロナウイルスによる規制が緩和され、実に4年ぶりとなる声出しOKのマジカルミライでした。観客は思う存分コールを楽しむことができたわけですが、その中の一つが話題になっていました。それは「そんな君の誕生日を お祝いできるかな」の後の一瞬の空白で観客が「おめでとう!!!!!」と叫ぶことです。大阪の初日ではあまりしている人はいませんでしたが、東京の千秋楽ではかなり多くの人がこのコールをしていたというふうに聞いています。このコールをすべきかどうか、X(旧Twitter)上では賛否両論の意見が見られました。
先に言っておきますがこのコールについて私は肯定派です。しかし公平のためまずは否定派の意見を紹介します。否定派の理由は様々ですが、一番の理由として挙げられているのは「曲の趣旨にあってない」というものです。前述した通りこのシーンは元の姿から変わってしまった初音ミクのことを「必要ない」と切り捨てようとしているシーン。「そんな君」というのは一人の人間になって我々のことが必要なくなった初音ミクのこと。そのためそこでおめでとうと言うのは場違いであるといった意見が寄せられていました。
しかし、曲の趣旨がそうであったとしても、それはあくまで和田たけあきと初音ミクの関係に過ぎません。マジカルミライというライブ会場において、その楽曲を聴いているのは「自分」であり、舞台上には「自分から見た初音ミク」がいるのです。いわばマジカルミライは一つ自分と初音ミクの関係を見直す場だと思っています。そして『ブレス・ユア・ブレス』という楽曲は自分と初音ミクの関係を試そうとしているのです。
和田たけあきが初音ミクに書いた詞は初音ミク自身が発する詞となって我々の元に届けられます。舞台上の初音ミクは自ら「僕に君も必要ない」と我々のことを切り捨てます。そして問うのです。もし初音ミクが自分の望む姿とは遠く離れたものに変化してしまったとしても、あなたはそれを受け入れ、初音ミクの誕生日を祝うことができるか。Cメロが終わって無音になる、その一瞬でそれを考えるべきなのかもしれません。一瞬過ぎて無理では?じゃあ今考えてみてください。
考えましたか?長年『ブレス・ユア・ブレス』について考えてきた私はその答えをもう出しています。答えは「祝う」です。なぜなら、私にとっての初音ミクは心の中にいて自分の支えとなる存在だからです。これまで初音ミクに出会ってから多くの曲と出会い、そして助けられ、知らない間に自分を作る要素のひとつとなっていました。もし一度初音ミクと別れることがあって、お互いにどれだけ姿が変わってしまったとしても、心の中に初音ミクがい続ける限り再会を果たすことができる、私はそう信じています。あの一瞬で「おめでとう!」と叫ぶこと、それは自分にとってこれからも初音ミクを心の中に宿し続けるという決意表明に他ならないわけです。
もう一つ私があそこで「おめでとう!」と叫ぶ理由があります。それは和田たけあきの「呪い」を克服したかった、そのような気持ちです。『ブレス・ユア・ブレス』の一節に、
という部分があります。夢とか願いはまぁ分かると思いますが、じゃあ呪いって何でしょうか。そのうちの一つは「この曲がマジカルミライで歌われ続けること」だと思っています。この曲がマジカルミライのテーマソングである以上、今後初音ミクはマジカルミライの舞台でこの曲を何度も歌い、そのたびに我々に別れを突きつけることが予想されます。嫌ですね~。
去年までの私はその突きつけられた別れに対して指をくわえてただ見守ることしかできませんでした。しかし今年は違います。今年は声を上げることができるのです。あそこで「おめでとう!」と叫ぶことで、別れを突きつけられ続けるという「呪い」に対して少しでも抵抗することができるのではないか、そしていつまでもこの曲に囚われ続ける自分の気持ちを克服できるのではないか、そのような気持ちがあったのです。
まとめ - 私がマジカルミライを見て思ったこと
私が今年のマジカルミライの講演を始めて見たのは大阪公演の初日、2023年8月11日のことでした。そしてそこでブレス・ユア・ブレスを見て、前述の理由からあの部分で思わず「おめでとう!」と叫んでいました。大阪の初日はそのように叫んでいる人もわずか(少なくとも自分の席周辺では自分だけ)だったため、あぁこんなこと考えてるのって俺くらいかな、まぁめんどくさいオタクの考えだしなとか思っていたのですが、アンコールで『Birthday Song forミク』が流れ、みんなで初音ミクの誕生日をお祝いしよう!といった演出がなされたとき、とても多くの人が初音ミクの誕生日を祝っているのを見て救われた気分になりました。でもできたらもう『ブレス・ユア・ブレス』をマジカルミライで演奏しないでほしいんですけど………それはそれとして初音ミクの実際の誕生日は8月31日。若干早くね?とも思いました。しかし、先ほども言った通り私は初音ミクとは自分の心の中にあるものだと思っています。またそれぞれの人に違う思い出があるように、それぞれの人が考える異なる初音ミクがあります。もし今日の公演を見ることによって自分の中の初音ミクが少しでも変化したら?それは新しい初音ミクの誕生と言えるでしょう。そう思うことで一つ納得しました。もしかしたら今この瞬間も誰かが新しい初音ミクに出会い、そこで初音ミクが誕生しているかもしれません。だったら祝わないとね。少々こじつけにはなりましたが、初音ミクの誕生日っていつ祝ってもいいらしいです。それでは最後に、皆さんご唱和ください。
初音ミク、お誕生日おめでとう!
蛇足的追記
これで終われば非常にきりがいいのですが、もう少しだけ話したいです。
なぜこの記事を書こうと思ったか。それは、和田たけあきさん本人のこのツイートがあったからです。
和田たけあき、そういうところが俺は好きだぜ。でもお前は言わない派だろうなぁ
実をいうとマジカルミライのあのコールで個人的にかなり救われていた気持ちがあっただけに、最終公演のあとのTLで否定派が多く現れているのを見てめそめそとしておりました。しかしこのツイートを見て、他人の意見を見てめそめそするのではなく、しっかりと自分の意見を主張すべきだ、と思いこの記事を書くことにしたというわけです。
というわけでこれを読んだ皆様の意見・感想・思想、お待ちしております。私はどんな考えでも大歓迎です。決して否定しません。人には人の初音ミク。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。では。
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