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実はブレインな長女.2

『チアキちゃん、本当申し訳ないんだけど、チアキちゃん名義でカードローンでお金借りれる?』

歳の離れた弟の大学入学金の工面が出来ていなかった母に、そう言われた。

ことの発端はこれだった。
当時二十代半ばの私は、バリバリ働いており、地元の同い年の友達たちよりも少しばかり稼いでいた。
思えばうちは裕福な方ではなく、かと言って借金取りに追われた記憶もなく、貧乏という雰囲気はない、でもなんだかお金は無かった。父は普通のサラリーマンで、母は専業主婦。(母がなぜ働いていなかったのかはここでは伏せておく)

私の短大費用は、奨学金で賄い、入学金も半分祖父が出してくれた事もあり苦労はしなかった。
奨学金に対しても、まぁうちはお金ないししょうがないよな 位に軽い気持ちだった。
働きだしてから、要所要所で母からお金の相談はちょくちょくあった。
私もほぼ、常にその相談には応えていた。

家計の管理は全て母に任せていた父は、恐らく私が貸したお金の存在をほぼ知らないだろう。
知らないとゆうか、母はきっと
「チアキちゃんが応援してくれた」
くらいのニュアンスでしか伝えてないと思う。

私が結婚し、仕事を正社員からパートに切り替え、出産し、我が家の家計はほぼ夫の一馬力になった今も、たまにお金の相談が入る。
母もパートで働きだしたので、以前よりかは少なくなったが。
それに加え、歳の離れた弟もお金の工面を少しサポートして欲しいと私に相談してくる事も増えた。

たまに思う。
なんなんだコイツら。どうやって計算して生計立てようとしてるんだ。

でも私はこの家族が大好きだし、家族4人仲もとても良い。
母もお金の管理がヘタクソなだけで、誰からも愛される可愛らしい人なのだ。

ブーブー心の中で言いながらも、しょうがないなぁーもう なんつって長女は期待に応えるのだ。

そんな母なのできっと貯金もしてないだろうし、とゆうか出来てないだろう。

父の大腸がんの治療費は、どうするんだろう。

正直な話し、癌の話をされた時に最初に頭の中に浮かんだのはその事だった。
生きて欲しいし、最近産まれた可愛い孫(私の子供)ともっと思い出を作ってほしいし、なんせ死ぬにはまだ早すぎる年齢。だからしっかり治療して、少しでも長く生きてほしい。

だけど、治療費や検査代あるのか?

癌保険に入っていなかった父なので、想像しただけでも震えた。

もしかして、わたしに舞い込んでくる?

出来ることならサポートしてあげたい。だけど、うちも子供が産まれ、私もパートレベルしか働いてなかったし、独身時代の貯金は自分たちの結婚式の費用で使ったし、ヒトサマに自慢できるほどの立派な蓄えはない。でも、もしもの時は私がなんとかしなきゃ…

この長女特有の真面目な責任感がたまに自分の首を絞めているのは間違いない。

それと同時に、少しでも貯金しておかなかった母に憤りを感じてしまう。
そんな自分に自己嫌悪に陥ってしまう。

本当に恐いのは物理的な病気じゃない。
敵は癌細胞ではない。

病気 とゆう、壁にぶつかり、それによって心が窮屈になり余裕が無くなってしまう。
それが1番私たち自身を苦しめる。

お金のことは、まぁ何とかなるだろう。
わたし自身も変に自分を追い詰めず、そこまで責任感に駆られなくていいと思っている。

だけど、長女は何か家族に問題発生したら、恐らく大黒柱よりも事を考える、悩み、解決策がないか考える。
でもそろそろそれは苦しいんだ。

だから癌さん。
いなくなってよ頼むから。
父の身体からいなくなって。

父の身体だけではなく、その家族の心まで蝕まらないで。

父も苦しいけど、私も苦しい。

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