シリーズ「誰かやって」2:音楽スタジオのある老人ホーム
以前、こんなツイートがバズったことがある。
すごいなーこれ、いいなーと読んでいたが、考えてみれば、そういう世代がホームやデイに入る時代が確かに来ている。
ハードロックに限らず、1960~70年代あたりから活動し、今の音楽の礎を築いた国内外のミュージシャンが亡くなったり引退したりする時代である。先日はKISSが東京ドームで日本最終公演を行って、私も観に行った。御歳73歳のジーン・シモンズが「この衣装が重くてもう辛いんだ」というようなことを呟くのをドキュメンタリー番組で見ていたので、幾度かのメンバー交代は経つつも活動を続け、花道を飾り、自らの手で幕を引けるというのは本当に幸せだよなあと、"Rock and Roll All Nite"を歌い踊りながら思っていた。
そして当然、その音楽を愛した世代も老人の仲間入りをしつつある。若い頃は水玉のスカートを穿いてグループサウンズのコンサートに行っていたという私の母(ジュリーのファンだった)も、いまや70代後半の所謂おばあさんである。超ラジオっ子で、聴いていて新旧問わず気になった曲はメモを取る癖がある。ある年帰省したらBUMP OF CHICKENの『jupiter』が棚に並んでいた(「天体観測」が気に入ったらしい)ときは目が点になったが、まあそういう人だ。
ホームやデイで、カスタネット叩きながら童謡や唱歌を歌うというのは、リハビリの一環としては有効なのかもしれないが、若かりし頃にバリバリやっていた人にとっては苦痛に違いない(きっと私もそうなる)。むしろ若い頃に楽しんでいたことをそのままできる場所があった方が、生きる活力になるんではないかと、件のツイートを読んで思ったわけだ。
騒音が心配なら離れとかに防音室があればいい。扉は引き戸式にすれば車椅子でも出入りできる(多目的トイレにある押しボタン式の自動ドアとか最適だ)。ほどほどの機材が揃ってて、自前の楽器も持ち込めて、仲間が見つかればセッションもできる。外から仲間が訪問してもいい。
ついでに言うなら、思う存分ゲームができる部屋もあっていいと思う。ガチゲーマーも当然年を取っていくのだから、何台か昔のゲーム機や専用PCを設置し、懐かしいタイトルから最新のゲームまでインストールしておいて、自由時間に好きに遊んでいいとか。運用やセキュリティ面はネカフェのノウハウでカバーできそうな気がする。
私が老人になるウン十年後にはこんなホームができていないだろうか。あったら間違いなく入居する。そのためには完全に初心者レベルに戻った演奏能力を取り戻さねばとGRIP-MASTERで手の筋トレを再開した私は、相当な阿呆なのかもしれない。