いつかのすき焼き。
ぼくは知っている。
かあちゃんはたーちゃんにバレないように、国産の牛肉とそうでない牛肉をまぜて食卓に出したことを。
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たーちゃんは国産ものに絶大な信頼を置いている。
スーパーでも商品の裏側のラベルを見て、国産かどうかをチェックしてからカゴに入れている。
とある日、めずらしく買い物担当になったかあちゃんはすき焼きの買い出しにスーパーに来ていた。
お肉コーナーで牛肉を見ていたが、値引きシールがついたものでも国産牛は他のと比べて値段が高い。
さらにこの日は、家計簿担当のとうちゃんから「先月食費が高かったから、今月はもう少し頑張りましょう」と家族会議で言われたばかりだった。
たーちゃんだったら迷わず国産牛を手に取るだろう。
だけど、かあちゃんは思った。
国産とそうでないものを混ぜて、食べた時に分かる人っているのか?
かあちゃんは半分国産牛、半分はそうでない牛を買ってお皿に移して混ぜて食卓に出そうと考えた。
早速家に帰って、みんなが帰ってくる前にお肉をトレーからお皿に移した。
なるべくキレイに、美味しそうに見えるように心がけた。
商品のラベルがついてるラップもぐちゃぐちゃにして、まとめてビニール袋に入れて捨てた。
これで、食べたときに気付くもんならほんまもんだ!でも万がいち国産かどうか聞かれたらどうしようか、、まあやってみよう
夕食の時間になり家族ですき焼きをつつく。
たーちゃんをはじめみんな、おいしいおいしいと言って食べてくれた。
実際買ってきたお肉は国産問わず美味しかった。
数日経ってからかあちゃんはこっそりとうちゃんに打ち明けた。
「おぬしやったな…」と言われたが
美味しければいいじゃん、と思うかあちゃんであった。
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