鎌倉の海。
ぼくは知っている。
かあちゃんはふと、山や海を見たくなることを。
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ある日、ぼくは目が覚めると鎌倉の海に来ていた。
ぼくにとってはそれが初めての海だった。
晴れた青い空に、キラキラと光る水。
ぼくはぽーっと海を眺めた。
かあちゃんはぼくを抱えて砂場にしゃがみ、波がギリギリのとこに寄せてくるのを楽しんでいた。
遠くにセーリングをしている人がいたり、カモメが空を飛んでいた。
しばらく海を眺めた後、近くにいた親子に写真撮影を頼み
ぼくとかあちゃんは海を背中に記念写真を撮ってもらった。
海を見て満足したのか、ぼくはまたベビーカーに乗せられ動き出した。
昼ごはんにしらす丼を食べ、長谷寺と古着屋に立ち寄り、家族へのお土産でくず餅を買って帰った。
最後に鎌倉駅構内にある喫茶でかあちゃんがソフトクリームを注文したのを見てぼくは気付いた。
かあちゃんは気持ちを切り替えるために海を見に来たのだ。
夕暮れに家に帰ると食卓にはかあちゃん大好物のたーちゃん特製卵焼きが並んでいた。
かあちゃんとたーちゃんはソファに並んで、なにやら「ごめんね」と言い合っていた。