コテンと眠るための読書・・エドガー・アラン・ポー・・古典海外短編小説の楽しみ方・・訳者を選べます。
以前、記事にしました、阿刀田 高(あとうだ たかし)の
『短編小説のレシピ (集英社新書) Kindle版』を読み始めました。
このところ、オー・ヘンリー、カズオ・イシグロなど海外短編小説を巡っていますので、『短編小説のレシピ』もいきなり、
「第九章 E.A.ポー 〈メエルシュトレエムの底へ〉そして、その他の短編」から読みはじめました。
推理小説の本道を示す
さて、話をポーその人に戻して、一八四一年、ポーは〈モルグ街の殺人事件〉を発表する。
文字通のエポックメーキング。これをもって推理小説の嘴矢(こうし)とするのがミステリー界の一般常識である。
『短編小説のレシピ』より
『モルグ街の殺人』 (The Murders in the Rue Morgue, 1841年)は、今からなんと180年前の作品です。
日本は江戸時代、桜吹雪の「これが目に入らぬか」の「遠山の金さん」、天保の改革の頃です。
日本文学では、この改革前には、弥次さん喜多さんの『東海道中膝栗毛』や戯作三昧(芥川龍之介)にでてくる『南総里見八犬伝』、源氏物語の新訳?『にせ紫田舎源氏』。日本もなかなかのものです。
さて、ポーをはじめとした古典的海外短編小説の楽しみ方
そのひとつが、訳者を選べます。
青空文庫では、ポーの作品を文豪・森鷗外(林太郎)が訳していたり、佐々木直次郎が訳しています。
青空文庫では、 佐々木 直次郎。
ひところ、江戸川乱歩訳としていたものは、渡辺温と兄の啓介の代訳です。
「世界文学全集11 ポー傑作集」は 松村達雄の訳です。
比較的新しい訳では、「ポー名作集」の丸谷才一の訳があります。
以前の記事で書いたように『光る源氏の物語』(上・下)、丸谷才一と大野晋の対談はちょこちょこ何かにつけて読んでいます。
丸谷才一(ご贔屓の作家)のポーを好んで読んでいます。
もうひとつは、読み比べができます。
E.A.ポー 〈メエルシュトレエムの底へ〉では、
題名もバラバラで、
森鴎外は、『うづしほ』
佐々木 直次郎は、『メールストロムの旋渦』
渡辺啓介では『メヱルストロウム』
小川和夫では、『メエルシュトレエムに呑まれて』
松村達雄に至っては。『大渦にのまれて』
短篇小説は、タイトルが命です。
これは、タイトルの読み比べ・・・【…なわけないでしょ!】
訳者を編者としてみると、作品の選び方、並べ方の彼方にみえるもの・・・
丸谷才一の『ポー名作集』は、
目 次
・モルグ街の殺人
・盗まれた手紙
・マリー・ロジェの謎
・お前が犯人だ
・黄金虫
スフィンクス
黒 猫
アシャー館の崩壊
と選び、並べています。
ポーの作品のうち、ミステリーのジャンルに入るのは5作品と言われています。
〈モルグ街の殺人事件〉を書き、推理小説の父とも称されるエドガー・アラン・ポーだが、その実、はっきりと推理小説に分類される作品をそう数多く発表しているわけではない。
ほかには〈マリー・ロジェエの怪事件〉〈盗まれた手紙〉〈黄金虫〉〈お前が犯人だ〉など都合五作ぐらいのものである。
『短編小説のレシピ』より
こうしてみると、丸谷才一は、ポーを「推理小説の父」とみているようです。【シランケド】
みごとに、
・モルグ街の殺人
・盗まれた手紙
・マリー・ロジェの謎
・お前が犯人だ
・黄金虫
と並べています。(ちゃんとジャンル別けしただけかも)
まとめ
短編小説の魅力のひとつ、「短かい」ということは、短時間で読了できることです。【うん、ほんまやで!】
読み比べや再読ができます。
以前記事にしました、『源氏物語』の現代語訳では、読み比べはたいへんです。
与謝野源氏、谷崎源氏、瀬戸内源氏、田辺源氏・・・【あゝ、しんど】
こうなると、「私本・源氏物語」にしとこか!
森鴎外と丸谷才一との読み比べはできませんが、
『モルグ街の殺人』の冒頭のややこしい文章は、丸谷才一です。
このややこしい文章を鴎外で読んでみたかった・・・