武尊に感情移入してしまう
那須川天心 vs 武尊は誰にでもわかる形で那須川天心の判定勝ちとなった。
考察なんてするつもりはない。
那須川天心が勝った。武尊が負けた。
それだけでもう胸がいっぱいになる。
レギュレーションの問題もあるだろうし、たらればの話もある。
でもそれは語りたい人に語ってもらおう。
那須川天心はたしかに天才だった。
「負けたら死のうと思ってました」は本気だろう。
それだけ勝ちにこだわったことのメタファーだが、死ぬほど強い気持ちで臨んだということは間違いない。
気持ちもそうだが実際面で武尊のペースに巻き込まれないために理論(対武尊対策)も完璧に仕上げていた。
直前の試合「野杁正明 vs 海人」で海人があの怪物野杁を攻略してしまったこととその点では似ている。
ただ正直、那須川天心に感情移入するには彼が凄すぎてピンと来ない。
立ち居振る舞いにしても戦い方にしても彼は完全無欠のスーパーヒーローに見えてしまう。
スーパーヒーローには感情移入するのが難しい。
自分はやっぱり武尊に感情移入してしまう。
敗戦、それも完敗。
これほどの大舞台で神童那須川天心との戦いで。
「死んでもいい」と思って自らもこれ以上ないほど動いて準備したし、多くの人の尽力によってようやく実現できたこの戦い。そのことを誰よりわかっている武尊だけにこの結果はあまりにも不甲斐ないと思えるものだったのだろう。
それが「申し訳ない」の言葉として表現された。
武尊はいつだって不器用だ。
言葉の選び方とか、会見での態度とか、試合での戦い方にしても、とにかく表現がまっすぐ。ヒリつくぐらいまっすぐ。そのヒリつきが画面越しにでも伝わってくるぐらい。
不器用すぎて見ていると胸が苦しくなることがある。
背負う必要のないものまで背負おうとしているように見えてしまう。
戦っているときはそれでもいいのだろうけど、それ以外でもいつも武尊はそんな風に見える。
「肉を切らせて骨を断つ」
武尊の戦い方はまさにそんな感じなんだけれど、生き方がそう見える。
武尊に対して心無い言葉を投げかける人もいるだろう。
ただそれに対しても武尊は真摯に向き合おうとするところがある。
そんな武尊を見ていると不器用な自分たちの代表みたいに思えてしまう。
不思議と自分を重ねて考えてしまう。
今回の戦い関しては、多くの人が謝る必要はない、むしろ感謝を伝えたいと思っているんじゃないだろうか。
試合内容は納得いかないかもしれないけど、自分は武尊にありったけの感謝を送りたい。
もちろん天心にも。
ありがとう。
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