アイ’ll be there②(歌詞・メロディ・シンセ)
今回はちょっと長いのですが「メロディ」「歌詞」「小室哲哉さんのデータ」について書いてみます。
楽曲制作はどこからどのように手をつけてもすべてが正解、あくまでわたしの例でございます。
自己流も多分に含まれておりますのでご了承くださいませ。
◆ステンレスは歌モノ制作の強い味方
楽曲にはコード・歌詞・メロディ・トラック・声などいろいろな要素がありますが、まず「小室さんのシンセ通りのコード進行にしよう」と決めました。
ただ同時に「シンセのリズムパターンが個性的だな」(小室さんらしさであるとも思います)とも感じたので、いったん骨組みだけの状態…シンセをミュートして、ピアノでコードを弾きながらでたらめな言葉で歌う=いわゆるステンレスで、メロディ&歌詞のラフを同時進行で考えていきました。
そうするうちに「もっとテンポを落としたい」「その分音符をぎっしり詰めたい」とか「重めのトラック・サウンドにしたいな」「跳ねない8ビートでときどき四つ打ち」と、だんだん具体的なアイデアも交じってきました。
もともとの小室さんのシンセは約2分20秒…すっきりしすぎているので、ブリッジ、ラスサビ、アウトロ…と「もっと尺を伸ばしたい」とも思いました。
メロディを考える際に鍵盤で弾くだけ、作詞もフレーズを紙に書くだけという方もいらっしゃるかもしれませんが、本番の歌い手さんでも作曲家さんや作詞家さんでもいいので、そこからさらにもう一歩…実際に歌ってみて確認するというのは非常に重要なプロセスだと思っています。
音域やハマりの確認、ブレスの位置、聞こえ方…シンセメロや紙面の文字だけよりもいろんなことが見えて・聞こえてきたり、もしかしたら「キー変えようか」という判断をする可能性もありえます。
わたしが長年ステンレスを含む「仮歌」というお手伝いをしまくってきたことからそういうふうに思うのかもしれませんが、音痴だからとか歌うのは恥ずかしい…という人にもだまされたと思ってぜひ試してみてほしいです。
仲間内で聞かせるステンレスや仮歌なら、スマホのボイスメモでも構わないと思います。
ということで制作のスタート時、「コード進行」以外は全て自由でした。
さらにわたしは『infuse new breath』の参加者でもあったので、既に歌詞やメッセージは大きく異なりそうでしたが、サウンド面でも意識的にinbとの差別化を図りたいなという考えもありました。
このあたりがなんとなく固まったところで、いったん小室さんのデータを軽く繋げる作業に入りました。↓
◆小室哲哉さんのデータとの遊び方
①BPM
110から100に落としました。
※DAW(Logic)の標準機能を使ってテンポ調整
②ドラム
結論としては↑でわたしが目指したリズムパターンと違ったためほとんど使いませんでした。
このドラムデータが特徴的だと思ったのは以下の2点です。
1)中盤以降、3拍目がスネア
個人的には普段3拍目にスネアを打つことがないので新鮮な驚きでした。
…が、わたしのプランとは合わないのが悩みどころで、「3拍目だけ消してループ化」みたいなかなり手荒なマネも試しました。(そして失敗しました)
結局2・4拍目にスネアが来るスタンダードなパターンを自分で打ち直しました。
逆に前半はリムなので、汎用性があるかも。
あぁでも…本当なら全編しっかり使ってみたかったな。
2)Internet for Everyoneの名残
原曲はスタジオでバンドが一堂に集まってレコーディングしたようで、ドラムのデータの中にご近所のストリングスの音色がうっすら…いや、結構入っています。
原曲とドラムの試聴ページを聞き比べるとなんとなくわかるかも。
ノイズキャンセリングをがんばるのか、二次創作の醍醐味だと割り切るのか、一から打ち直すのか…その他にもたくさん選択肢があるのだと思います。
③シンセ
曲の展開に合わせて尺伸ばし&細かな切り貼りをした以外は、ほとんど加工せずそのまま使いました。
◆メロディ
シンセのフレーズが個性的なので、シンセと調和させるならメロディの選択肢が限られてくると思いますが(キーGmの中でラが頻繁に入ってくる)、わたしはあえて気にせず我が道を突き進んでしまいました。
告知文でも書きましたが、この曲の大半はわたしのひとりごとです。
そのひとりごと感を出すためにメロディを作りこみすぎないようにしました。
急に早口で畳みかけたりぼそぼそ呟いてみたり、2オクターブちょいを乱高下、最後の方はコーラスが連続してどれが主メロだかわからない…わたしの日常の脳内を皆さんに見聞きしてもらうような、とにかく非常に不安定でめまぐるしくめちゃくちゃなメロディにしました。
このへんまでが『infuse new breath』の制作と同時進行で進めていたステップ。
その後、腰を据えてこの曲に専念したタイミングで中盤にnarrativeなラップっぽい語りセクションを増やしました。
もともとはトンネルのシーンの8小節からすぐラスサビに行くつもりだったのですが、どうにも物足りなくて…。
過去から現在に繋がる長い橋(ブリッジ)として効果的な役割を果たしてくれた気がします。
こういったセクションを入れるとglobeっぽさを感じてくださる方が増えるのかな。
ちなみにちよ的に最近のお気に入りのラッパーくんはedhiii boiくん(15歳!)です。
0:51から息を止めてしまう。そして3人とも好き。
◆歌詞
そしてここからはちょっと特殊だった歌詞の話。
あまり参考にならないと思いますが、興味のある方はどうぞ。
歌詞のテーマを一言で
あちこちで書いている通り「10年分のひとりごと と きみへのラブレター」です。
そして後述する映像とのリンクも考えながら、わたしが日常的に目にしているトーキョー(今回は渋谷周辺)を舞台にしました。
裏読み深読み
「サビの歌詞の意味は〇〇です」とか説明するのは無粋かなと思うのですが、せっかくなので2パターンそれぞれでちょっとだけ問題提起。
①英語版
あめなーさんのチャンネルで出すので、小室哲哉さんへのファンアート感を歌詞の中で強めてみました。
せっかくなのでもう一つ下の層へようこそ。
「get wild」と2回出てくるのですが、それぞれの日本語訳と照らし合わせてみると、どんな景色・状況が思い浮かぶでしょうか…。
②オリジナル版
英語版でもかなり仕掛けていますが、わたし自身に一層フォーカスしてみました。わたしの過去作の中に出てきた景色や街がいくつも再登場します。
あの頃見た景色を今また目にした時、時間経過と感情の変化をわたしは描けたのでしょうか。(深刻な自問自答)
英語版を書いたきっかけ
もともと日本語と英語が半々ぐらいの「オリジナルリリックバージョン」として公開されている方を先に書き始めていたのですが、企画者のあめなーさんとのやり取りの中で
「あめ)英語字幕も付けて公開するけど、字幕も考えられそう?」
「ちよ)あーじゃあせっかくだから英語と現状案とどちらでもメロディにハマるように2パターン作ってみようかな」
というその場のノリで決めました…!!!
これまで幸運にも英語の楽曲に関わる機会に恵まれてきましたが、一人だけの力で英詞を書き上げるという経験はありませんでした。
そしてパスポートを持ったことすらない日本人です。
英語圏にルーツがあるわけでもありません。
でもまぁ他者を傷つけるような表現でなければ多少おかしな言い回しでもわたしが恥をかくだけのこと。
実際に文法的にNGって言われているフレーズも普通に使ってます💦
「言語が違う2パターンを同じメロディに音的にも意味的にも違和感なくはめる」というのは結構高度なことだなと思っ…たけどやるって決めました!
なぜなら楽しそうだから!
ということでかなり個人的な実験として挑戦させてもらったのでした。
ありがとうございました🙏
ちなみに今回の縛りとはちょっと違いますが「音もメロディも同じで言語が違う」の2言語クロスオーバーの最高峰はこちらの『留学生』だと思ってます。
一生に一度でいいからこれぐらい緻密で芸術的なデュアルリリックを仕掛けてみたい。
日本語訳を可視化させたこと
わたしという日本人が英語で歌っても、それはあくまでJ-POPであり、きっとリスナーさんの大半も日本語が母語の方だろうという予想をしていました。
英語との距離感も人それぞれでしょうし、何よりわたしの語学力では英語だけで伝えたいニュアンスを表現しきれないだろうな…と思って「日本語訳も問答無用で画面に入れ込む」という手荒なマネをしました。
大学時代の話になりますが「ライ麦畑でつかまえて」の原書講読の授業で村上春樹さんの訳本に出会って衝撃を受けました。
…悪い大学生だったので、訳本と原書を読み比べて内容を理解する…という予習の仕方をしていたのです😅
訳本は内容を理解するために和訳された説明書。と割り切っていたのですが、村上さん訳は文字が自由に踊っているように見えたのです。
とにかくめちゃくちゃおもしろかった。
「言葉で表現することを仕事にする人」ってこんなことができるのかと感動しました。
語彙力や表現力、全く足元にも及びませんが僭越ながら英詞・日本語訳共に目標にしたのは、あの頃感じた驚きと自由奔放さです。
あぁ…もっともっとことばと仲良くなりたい。
「耳で聞こえてくる言葉」と「目で見る文字」が違うとリスナーさんは混乱しないかな…と思ったけれどいかがだったでしょうか。
はちゃめちゃですみませんでした…!!!
歌詞が担うのは「意味」か「音」か
日々修行を重ねる中で「文字を見て美しいだけじゃなくて、メロディと一心同体になった時に『いい歌詞!』と伝わるのが最高の歌詞なんじゃないかな」と思う今日このごろです。
最近はリリックビデオとして視覚的にも補足できる作品が多いと思うので、それほど気にする必要もないかもしれませんが、子音や母音の組み合わせ、言葉と音符の切れ目、韻を踏む踏まないなどなど…
わたしはテクニカルに攻めるというよりは、まず「実際に歌ってみて気持ち良いか」と自問自答。
そこでもしうまくいかない場合に原因を突き止めるために理論のお世話になる。
わたしは決して天才でも技巧派でもないので、そんな合わせ技で何十回と練り直しながら作ってみました。
ちなみに良い例かはわかりませんが、サビアタマの「count down and up and up」はステンレスをしていた時に偶然口から出てきた謎の呪文でした。
響きが気に入ったので「なんだこれ」と思いながら意味を後付けして使いました。
わたしは一人で作っているので歌詞とメロディを同時進行で作りましたが、詞先、メロ先、どちらの場合でも両方を尊重しつつ、馴れ合わず、より良い方向性に制作が進んでいくことを願っています。
次回はトラックメイクとボーカルRecの話などです。
どろん🥷
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?