小学生の私が憧れたガウディ inバルセロナ
ガウディを初めて知ったのは、名古屋で昔開催された世界デザイン博だった。会場の名古屋城の中に足を踏み入れると、すっかりサグラダファミリア一色になっていて、小学生の私は万華鏡の中に入ってしまったような感覚になりすっかり圧倒され、夢中で階段を上へ上へと登っていった記憶がある。あの当時もうすでにプロジェクションマッピングがあったのだろうか、それとも巨大なパネルか何かだったのかそこらへんは記憶が曖昧だが、大人になってふと、あれは現実だったのか心配になり調べてみたところ、名古屋で本当に開催されていたことがわかった。両親はヨーロッパに行ったことはなかったが、実家にはサグラダファミリアの絵が描いてある陶磁器の置物があった。おそらくそのデザイン博で購入したものだろう。私は小学生だったのでデポちゃんという博覧会のマスコットのキーホルダーを買ってもらった。小さい頃からこの年になるまでずっとガウディのことを考えていたのかと言えばもちろん忘れていた時もあったが、テレビでサグラダファミリアのことが放送されたりすると、一生のうち一度は必ず行きたいなと頭の片隅ではずっと考えていた。そしてまさか実物に会いに行く日がとうとう来るとは!
いよいよバルセロナにやって来た日、受験に来たのかというくらい神妙な面持ちで口数も少なくサグラダファミリアの中に入って行った。教会の中に入った時に、デザイン博で名古屋城の階段を夢中で駆け上がって行った時の記憶がよみがえり、つま先から頭まで風が通り抜けるみたいにざわーっとした。『となりのトトロ』で迷子になったメイを探しに行く直前に猫バスの毛がブワーっと逆立つシーンがあるが正しくその状態だった。小学生の私が見たのは、確かにサグラダファミリアだった!
鮮やかだけど安心するような色使い。ヨーロッパを突き抜けてしまっているガウディの世界観の前では、自分がどこの国から来たのかなどもう忘れてしまう。オーディオガイドに耳を傾けると、ガウディのインスピレーションの源は自然とのこと。サグラダファミリア内部の高い天井を支える長い柱は太い一本の柱ではなく、木の幹が途中で枝分かれしているようになっているが、これは重さを支えるための工夫にもなっているそう。蔓のような装飾もあるし、色使いもほっとするようなあたたかさが感じられて安心感がある。これこそ元祖ユニバーサルデザインじゃないのだろうか?
ガウディもすごいが、ガウディに建築をまかせてくれた/発注してくれた地元の名士(貴族?)に感服せずにはいられない。ヨーロッパに来てみると、クリムトもそうだったが芸術を支える人が必ずいるのだ。グエル公園の構想がもし100%実現されて今でも残っていたとしたら??街づくりを考えていたのはそういう人たちだったとここに来るまで知らなかった。大げさだけど、死ぬ前にもう一度行きたいバルセロナ(笑)。