「Fairy World」を読む(17)
このあたりから3解の作品が少し増えてきています。思えば(1)の頃から10年以上経っており、作風変化は当然と言えるでしょう。とはいえ、Tempoに関する作品は常に多いですね。
135番
Al Hamishmar 6th Prize 1974 (FIDE ALBUM 1974-76収録作)
H#3 3solutions
1.Kd6 e4 2.Rc2 Sg5 3.Rc7 Sf5#
1.Rh3 Sg5 2.Rc3 Sf5 3.Rc4 e4#
1.Ke6 Sf5 2.Rh6 e4 3.Rf6 Sg5#
白の着手に注目するとA-B-C、B-C-A、C-A-Bというサイクル(Cycle of moves)になっている。そして、白の手順前後を回避するための駒はself-blockに使うbR1枚のみ。Kricheliらしい作品ではないが、流石に美しい仕上がりでお見事。
136番
Вечерняя Одесса 1st Prize 1974
H#2 b)Sc8→c7
a) 1.Bc5 Sg6+ 2.Kf5 Sd6#
b) 1.Sc5 Sg4 2.Kxg5 Sxe6#
初手のc5着手(play on the same square)でラインを切っておき、最後はその駒がpinされてのpin-mate。綺麗に出来た手筋もの。
142番
Schach-Echo 3rd Prize 1975 (FIDE ALBUM 1974-76)
H#2 3solutions
wKで開き王手出来ればメイトとなる形。しかしKが動きたい6マスのうち5マスは黒の駒が2枚も利いている!黒の駒が1枚しか利いてないのは唯一b5だが、Bc6が1手でb5への利きを失うことは出来ないため、利きを外すには結局2手かかる。ということで白の初手は待ち時間ということになる。動かせる駒はh2Sのみで、動ける先は3箇所。そしてこの作品は3解。作者の狙いは大体分かったはずだ。作意は以下。
1.Sc3 Shf1+ 2.Rxf1 Kxb4#
1.Sf6 Sxf3 2.Bxf3 Kxb5#
1.Sc7 Sg4+ 2.Rxg4 Kd6#
wSによるTempo sacrifice×3!何より素晴らしいのは、黒の初手が1枚のSによるラインの遮断で統一されている点だ。とても好みの作品。