複数解をゆる~く語る(1)
たま研の課題が「ダブル」だったり、Twitterでツインとか複数解の話を見る機会も増えて、こっち側の人間を増やせるチャンスだと思うので、個人的見解を書きたいと思います。
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複数解は殆どフェアリーみたいな、伝統的なかしこ詰をやられてる方には完全に異質なものとして扱われるわけですが、全部が全部異質なわけではないと、私は考えています。
例えば、テーマ×2を表現したい時に、1つの作意の中でテーマを2回やるか(伝統ルール的作法)、2つの作意の中でテーマを1回ずつやるか(複数解的作法)の違いってなんでしょうか?
わたしは、作意を縦に並べるか横に並べるかの違いだけだと思っています。どちらが優れてるとか劣っているとかではない。それなら、縦型作意と横型作意のうち、やり易い方で作れば良いとは思いませんか?
具体例を以下に。
【縦型】
『青い鳥2020』 自作
本作のテーマは「合駒されてラインが止まるから先に捨てておく」で、それを55馬捨て、45馬捨てと2回やっています。テーマ×2というのはこういうことです。構成は伝統ルール的に、縦に作意を並べて作っていますね。横に並べることも可能なのですが、縦型で素直に作れるものはそのままで良いでしょう。ちなみに今回の短コン発表作は本作の派生で、そちらも同様に縦型の作りになっています。
【横型】
2019年9月詰パラ 自作 『Two Pairs』
色んな意味で例として良くないのですが、もっと良い例はどれも未発表のためにこの作品に落ち着きました。(注)
本作のテーマは「駒余り回避限定合のダブル」で、それを飛・金だけでなく角・桂でもやるというテーマ×2で作っています。もしこれを縦型で作ると駒余り回避の限定合を4回ということになるわけです。勿論出来なくはないと思うのですが、配置も手順ももっと本格的な短編(場合によっては中編?)になりそうですよね。また作者の主張として「5手で合駒4回」というのもあるので、その実現のためには横型の構成が必須です。横型の構成は短い手数に内容を詰め込めるので、テーマを極力最短で表現しようとする現代作家には向いていると思います。例えば、7種合の最短手数は田島秀男作の17手ですが、横型の構成で作れば記録更新も可能なはずです。それに価値がどれくらいあるかは、また別の話ですけどね。
((注)複数解の話をしているのに複数解ではないというのが一番の問題。変同利用の亜種ですよね。あと、複合合駒の複合という実質×4の構造になっているのもややこしいポイント。詳しい解説は『青い鳥2020』に書いているのでご覧ください。)
以上のように、私はテーマ×2の表現において縦型と横型のどちらが優秀か(または、作り易いか)という思考をふまえて作っています。何でもかんでも複数解でやりたいというわけではなく、表現の1つとして必要に応じて使うということです。こう考えると、複数解系の表現も悪いものとは思えないのですが、どうでしょうか?
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テーマ×2の話をずっとしてきましたが、これは複数解の本流ではありません。というか、複数解でテーマ×2を作ろうとしている人間が自分以外にいるのかすら分かりません。
複数解において一番よく作られるのは解の対照性(コントラスト)をテーマとした作品です。そちらは従来の詰将棋の考え方からすると相当異質なものとなります。その話はまたいつか………
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