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黎明期のOrthodox傑作選 10

Otto Wurzburg
First Honorable Mention
American Chess Bulletin 1940

#3

1.Rf5!
1...Ka2 2.Ra5+ Kb3 3.Qc3#
                 2...Kb1 3.Qf5#
1...Ba3 2.Rf1+ Bc1 3.Qb2#
                 2...Ka2 Qxf7#
1...Kc2 2.Rb5 (受け無し)

何と言ってもkeyが素晴らしい。こんな手を指すくらいならQやKを黒Kに近づける方がマシに思える。それくらい1.Rf5は何の得もない手に見えるのだ。
この手の意味付けは1...Ka2の変化で2.Ra5+とした時に判明する。この時Rが元の位置からa3に回ったのでは取られるだけ。またRf4〜Ra4のルートでもKb3〜Kxa4でRを抜かれてしまう。それを見越してRを遠くまで移動していたわけで、これはまるで詰将棋における遠打(遠移動)のロジックを見ているような気分である。
1...Ba3のヴァリエーションにも注目したい。この変化では、keyが全く無意味な手になるのがポイント。それから2...Ka2の時のメイトが、1...Ka2の変化で2...Kb1とした場合とのエコーになっているのも見逃せない。
作り方によってはいかにも構想作という顔になりかねないこのテーマを、名手Wurzburgはこれだけの配置で実現してしまった。


ここまでの連載では、構想派の作家を多く取り上げてきた。しかし構想ばかりがオーソドックスの面白さではない。ここからは20世紀初頭のプロブレム界を席巻した「ボヘミア派」について見ていくことにしよう。ボヘミア派はAnton Konig(1836-1911)の作品に端を発するとされ、妙手や戦略性よりも複数の変化の調和を重んじる流派。変化においてモデルメイトを2つ以上用意するのが大前提である。

これより紹介するMiroslav Havel(1881-1958)はボヘミア派の横綱だ。

Miroslav Havel
Zlata Praha 1918/11

#3

1.Sh3!
1...Kf3 2.Be2+ Ke4 3.Qe6#
                   2...Ke3 3.Qd3#
                   2...d3 3.Qg6#
1...Kg4 2.Kg2 Kf5 3.Qe6#
                2...Kh5 3.Be2#
1...d3 2.Be6 Kf3 3.Qxd3#

1...Kxh3 2.Qg6 (受け無し)

Qを動かして黒Kの移動先を減らしたいところだが、最強の手に見える1.Qf6は1...h3で逃れ。1.Sh3とするのが好手だ。そこから主要な分岐が3パターン。4つのモデルメイト(太字部分)が登場する。
keyは捨駒だし、1...d3において2.Be6で一気に視界が開ける感覚も良い。簡潔な配置から味のある手・詰上りが複数出てきて満足度の高い作品。構想は無いが、全体の纏まりで十分買えるという意味で、ボヘミア派の追い求めるものが分かる好例だろう。

今回は小品の紹介だけで終わりにしておこう。Havelの本領を発揮した作品は次回以降に解説するのでお楽しみに。

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