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インタビュー企画④ー大崎壮太郎(後編)

前回のインタビューの続き。前編をまだご覧になってない方は以下のリンクからどうぞ。

※インタビューを行った2024年6月時点での情報です。

[入選76回]

詰将棋パラダイス2022年11月

35龍、同馬、57桂打、同馬、85龍、75馬、
57桂、54玉、53金、同馬、65龍まで11手。

★玉方馬1回転。

大崎:これはそんなに良いと思ってなかったんですけど、想像以上に評価してもらえました。良いと思ってないから33ととか93とか乱雑に置いてます。
シ:これ良いと思わないんですか。
大崎:配置が気利かなくないですかね。91角82飛なんかも露骨な余詰防ぎの配置。こんなに評価されるならもっと真面目に作っておけばよかった。
シ:1回転って9手じゃ無理ですよね。11手の作例って何がありましたっけ?
大崎:分からないですね。
シ:相当好きな部類です。初手とかよく入った感じで。龍の位置も37で。
大崎:推敲したいなあ…。まあこれは作品集に載せます。
シ:78とはどうですか?
大崎:これは気にならないですね。自陣と金が気になります。
シ:そのタイプでしたか。
大崎:みんな気にしなくて。何なら積極的にと金にする人が多くて。
シ:金って重くないですか?
大崎:と金って不自然だもん。
シ:そういえば、サイコロトークの新人賞の回で、弘中作のと金を金にしろっていう全然本質的じゃない議論してましたもんね(笑)。
大崎:この33との酷いのが、37から引いてきてるのに、間に攻方のと金が挟まってるっていう…。
シ:ええっ、実戦から考えてるんですか。
大崎:ちょっとしたレトロみたいな。
シ:その理論だと煙詰作れないじゃないですか(笑)。
大崎:そ、そうですけど…。駒が少ないので33とが目立って、どこから来たか考えたくなるんですよ。
シ:目立つがゆえのレトロか。


[入選80回]

詰将棋パラダイス2023年4月

85龍、75歩合、同龍、65桂合、45金、同玉、
65龍、55桂合、54龍、同玉、64馬、45玉、
34銀不成、46玉、58桂、同龍、47歩、同龍、
同馬、同玉、48飛まで21手。

★アンピン状態のものをピンする。

大崎:これは桂をピンするから有利なほうに進んでるんだけど、森田手筋の逆なので。
シ:マニアのよく知るパターンの逆を行ってる。単玉で作るのは?
大崎:65龍の形で、34銀、46玉、47歩の筋が結構詰みますよね。これを詰まなくするのに、「まあええや逆王手で」と思って。単玉にしたいですけど。最初に2回合駒が出て、もう全然出来てるでしょって。
シ:これも森長さんっぽさがあるかなと思いました。
大崎:馬が残るので、どうにかならんかねとは思うけど。75歩中合出て嬉しかったですよ。
シ:そこかなぁ?(笑)
大崎:出そうと思いながら出たんでね。
シ:まあ打歩の歩ですからプラスはありますね。
大崎:うん、良い作品。これは載せましょう。


[入選82回]

詰将棋パラダイス2023年6月

97角、42金打、33香、22玉、32角成、同金、
同香成、同玉、24桂打、22玉、31角成、同玉、
32金まで13手。

★6手目13玉の変化で合駒を稼ぐための最遠打。86角は53銀、75角は53香合、64角は42香合でそれぞれ詰まない。

大崎:これ順位戦で降級しちゃったやつなんですよ。
シ:ああ、さっきの、鈴川さんが仰ってたという。2個下に引いた時の話ですよね。
大崎:これも原田清実さんの作品が元で、原田さんは角の引きが1個で、全部香打でやってたのかな。
シ:これって86角だけ特殊じゃないですか?
大崎:そうそう。で、2個引くことにして、さらに61飛を開けるという2つの違いがあって、原田さんをパクッてるけど、前には進めてると思ってて。
シ:61飛・62銀が前に進めた部分ってことですかね。僕からすると86だけロジック変わったよという印象。
大崎:そこが面白さ(笑)。そうしないと最遠打にならないんで。64~97まで全部打てるのが前提で。
シ:53までの利きで出来てるのが主張と。作るだけなら61飛・62銀→63歩でも良いんですかね。
大崎:え?どうなんだ。そうすると64角が打てなくなって、42香合の筋が無くなりますね。それが勿体ない。
シ:なるほど。64―42、75―53、86―64と伸ばした時に、64で角を打つ場所と香合する場所がダブるから利きの与え方が難しくなる。
大崎:そこが原田さんの作品だと困ってなかったはずで。
シ:角が2段引くことで変わったんですかね。
大崎:原田さんは22玉に角引いて合駒取りに行く形だったんですよ。形的にはね。自作では13まで飛ばすことで、角の打場所も遠くなっていて。13まで持っていって合駒を取りに行く変化とか作意の絡みを。13手かな?短手数に押し込めて。もらえる合駒も歩なんで、打って終わりじゃダメなんで、手数もギリギリなんですよね。
シ:これは上手くいった感じですか?
大崎:うまくいきましたね。13玉の変化も収めて、作意は角も捨てきって。いや良いと思ったけどなぁ。
シ:降級したわけですね。で鈴川さんが言ってたと。
大崎:鈴川さん好みじゃないですか。この最後に角を捨てる感じが。最近それは意識してやってるんですけど。作ってる時は「この角、最後捨てないとな~」で、ちゃんと捨てて、鈴川さんにも伝わって、それで降級だから悲しい。
シ:こういう遠打のパターンって見たことある筋だと映っちゃうんでしょうね。例えば添川さんの17角を想起しちゃうんで。
大崎:それもあってね。見た見たってなっちゃうんでしょうね。
シ:順位戦の道は険しい。


[入選87回]

詰将棋パラダイス2023年11月

22金、41玉、96馬、85香合、同馬、74香合、
同馬、63香合、同馬、52香合、32金、同玉、
22歩成、33玉、42角、34玉、24角成、45玉、
46馬、34玉、35馬、33玉、23と、同玉、
24香、32玉、34香、33歩合、同香成、同玉、
34香、42玉、52と、同金、同馬、同玉、
53金、41玉、42香、51玉、52歩、61玉、
62金まで43手。

大崎:僕はね、連続合駒が好きなんですよ。
シ:流崎。とかですよね。でもそんなに作ってないですよね?
大崎:今回収集した作品群より前ですね。中編名作選Ⅱとかには載ってるんですけど。
シ:あー、これですね!原理のダブルというのか。まあ原理自体が2回なのでその2倍というか。
大崎:もう一個あって。イノテツさんの支え駒を飛でやったやつなんですけど。

[中編名作選Ⅱ172番]

詰将棋パラダイス2015年9月号

48馬、86歩合、同飛、76歩合、同飛、66歩合、
同飛、56歩合、39飛、27玉、67飛、57桂合、
同飛、同歩成、37馬、17玉、29桂、16玉、
17歩、15玉、24香、26銀合、16歩、24玉、
25歩、14玉、15香、25玉、26馬、同玉、
17銀、25玉、26歩、24玉、23馬、同玉、
22桂成、同玉、33香成、21玉、31歩成、同玉、
32成香まで43手。

★2枚目の合駒のための支え駒としての連続合駒。2手目56歩合は39飛、27玉、97飛、57桂合、37飛、28玉、38馬、19玉、99飛以下。手順中、97飛を入れずに37飛は、26玉で詰まない。

シ:これか。あ、これなんでしたっけ。
大崎:7段目に桂合したくって、
シ:これって遠打で始まるんでしたっけ。あ、違った。
大崎:遠打で始めるのは厳しいんですよ。
シ:若島さんのパターンに歩の支えがプラスされたパターンですよね。
大崎:桂馬が無いんでね。桂の代わりに歩を置いときたいっていう。
シ:イノテツさんのが先にあって・・・
大崎:あれを飛でやろうと思って。
シ:いつものパターンじゃないですか(笑)。でもこれは名作選に載ってますもんね。
大崎:これの凄いところは、7段目の飛の王手が、イノテツさんの作だと馬なんで、ラインを経由しないと次の王手にいけないんですよ。
シ:なるほど。この図だといきなり9段目に飛を引ける。
大崎:そうそう。飛を一個引く意味を与えないといけない・
シ:飛を引いとかないと37飛、26玉型が詰まないわけですね。やけど、経由したせいで桂合されちゃって・・・
大崎:この論理が新しい。あと収束ね。気持ちよくちゃんと詰んでる。
シ:確かに。ロジック部分が、イノテツ作の通りだと作れるはずのないものを作ったと。
大崎:そうなんですよ。だからちょっと発展はしてて、ただの2号局ではないっていう。
シ:これ意義ありますね。普通の2号局とは一線を画してますね。
大崎:良かったです。ちゃんとした作品があって。
シ:ブログにも書かれてましたよね。
大崎:連続合が好きなんですよね。

[中編名作選Ⅱ187番]

詰将棋パラダイス2016年10月

98馬、87香合、同馬、76香合、同馬、65香合、
同馬、54香合、35桂、34玉、26桂、同歩、
24と、35玉、39龍、38歩合、同龍、同と、
25と、同玉、47馬、34玉、35香、同玉、
36馬、34玉、35香、23玉、45馬、13玉、
14歩、同玉、36角、25桂合、同角、同玉、
17桂、14玉、15歩、同玉、16香、同玉、
34馬、15玉、25馬まで45手。

★4香連合。馬屋原原理の2号局。

シ:こっちの作品も発展のある2号局ですよね。原理は合駒×2だったのが×4になったわけで。
大崎:そうそう。それで嬉しいのがさ、久保さんにまた影響してさ。
シ:「パラレル」になるわけですね。「パラレル」は1枚の馬で×3をやった。
大崎:これも収束ちゃんと出来てて。
シ:あの進化の系譜は分かりやすくて面白いです。それから、進化の系譜とは逸れるけど、原理の最適解みたいな馬方四季作あるじゃないですか。
大崎:あれ凄いですよね。馬屋原さんはなぜ最初にあれを作らないのかとも思いますけど。
シ:厳しい(笑)。まあ進化という意味では馬屋原→大崎→久保ですよね。ああいう感じで、手筋というかテーマごとに作品並べてくれたらめっちゃ面白いんですけどね。
大崎:久保さんがたまに言ってますね。時系列で見たいって。
シ:進化の意味のあるやつだけ並べて。例えば森田手筋だって、まあ大井作は置いとくとして、森田作のあとに次の意味のある進化って何があるのと言われたらパッとは分からない。
大崎:なんだろうね。確かになぁ。
シ:ダブルにした若島作はあるけど、森田→若島の間には何があるのか。駒種を変えたバージョンとかはあるけど、進化じゃなくてアレンジですから。アレンジに意味がないわけじゃないけど。
大崎:それ書ける人なんて、ほんと限られてますよね・・・
シ:過去のものに精通してないと駄目ですからね。

【再掲】

詰将棋パラダイス2023年11月

22金、41玉、96馬、85香合、同馬、74香合、同馬、63香合、同馬、52香合、32金、同玉、22歩成、33玉、42角、34玉、24角成、45玉、46馬、34玉、35馬、33玉、23と、同玉、24香、32玉、34香、33歩合、同香成、同玉、34香、42玉、52と、同金、同馬、同玉、53金、41玉、42香、51玉、52歩、61玉、62金まで43手。

★4香連合。4手目52香合は作意同様に追って24角成、45玉のあと、35馬、56玉、46馬、67玉、57馬、78玉、87馬まで。以降の香合も同様の論理。

シ:だいぶ逸れましたが、もとの話はこの図です。4香連合。場所は変わるけど実質同じ論理で4香連合してますね。
大崎:そうですね。
シ:個人的には、これだけ置くなら左下に向かって収束するのかと思いました。
大崎:取った駒を使い切るのが大変なんですよね。
シ:香やから下に行ったら使うのが厳しいんですね。
大崎:もしかしたら46香、57香、68香と打っていくような手があるのかもしれないけど。頑張って収束させましたね。
シ:これは好きなタイプですか?
大崎:好き好き。まず連続合が好きだし、作品集にも載せますね。
シ:収束の非限定は気にしないですよね?
大崎:僕は全然気にしてません。そういえば、最近詰将棋一番星読んでて、連続合のページがあって、見たら僕の名前が結構載ってて。結構作ってんだなあと思ったんですよ。歩なら7枚連続合しないと一番星には載せてくれないんですけど、桂と香は作ったんで、次に銀と金を作ろうと思って。銀ができたのでおもちゃ箱に投稿してます。次に金も作って小駒コンプリート・・・歩がないか。歩7連合は誰かの作品と被るからな。
シ:横の山中作、斜めの駒場作、縦だと添川作が有名ですか。
大崎:作品集を作るまでに金も作っておきたいなあ。
シ:例えば「夕星」ですか。金はきつそうですけどね。
大崎:余詰との闘いですよね。詰将棋一番星で見たら完全作は「夕星」だけでしたよ。
シ:やっぱりきついんですね。「夕星」はあれでよく完全ですよね。


[雑談タイム①]

大崎:自分で作るなら難しいほうにいきたくなる。
シ:私は逆ですねえ。楽をしたい。
大崎:それと、よくわからないのが、「フェアリーならもっと簡単に作れるのに」っていうやつ。意味ないやんって思っちゃうんですよね。
シ:伝統ルールで綺麗にできてる作には言われないんじゃないですか。伝統ルールでめっちゃ駒数多いやつに、なんでここまで苦労して・・・みたいな。
大崎:そこは苦労してでも伝統ルールでしょう。
シ:フェアリーが好きじゃないっていうことですか?
大崎:それもあるけど、難しいほうが面白い。詰将棋って創作パズルだと思ってるんですよ。
シ:なるほど。
大崎:詰将棋って解答パズルだと思ってる人多いけど、自分は創作パズルだと思ってて、その難易度を上げたいっていう感じ。
シ:そういう考え方なんですね。


[雑談タイム②]

大崎:『酔鯨』良いなと思ったんで。
シ:よほど影響受けてるんですね。
大崎:なんかその、大駒捨てる良い感じの収束を見つけて、手を伸ばしていくみたいな創作法が存在することは知ってたんですけど。
シ:そりゃ知ってるでしょう(笑)。
大崎:その意味が分かったっていうか、その宗教が分かったっていうか。
シ:変なこと言いますね(笑)。『酔鯨』が出る前から芹田さんの作品は詰パラにいっぱい載ってるじゃないですか。
大崎:その時は「色々やって大駒捨てて、清涼詰ね」くらいの気持ちで見てるんですよ。一個の作品集になって、そういう作品がずらずら並んで、作者の解説があって読んでいくと、なるほどって分かったんですよね。
シ:宗派への理解ができたと。それで入信しようと思ったわけですか。
大崎:そうそう(笑)。入信しようと思いましたね。天啓が来たというか。こういう世界もあるなあって。
シ:そこだけ聞くとなんかアブナイなぁ(笑)。


[短編名作選399番]

詰将棋パラダイス2015年11月

63馬、54桂合、同香、76銀不成、53香成、45桂合、
48桂、47玉、74馬、65飛合、56桂、36玉、
37歩、同桂成、63馬、同飛、25龍まで17手。

★取らせ合駒。

シ:用意していた棋譜ファイルもこれでラストです。短編名作選に収録されているこれ。
大崎:取らせ合駒っていうのも何号局か分かんないけど、でも若島さんに短編名作選で取り上げられたことで、この作品の価値が僕の中で爆上がりしてますね。
シ:作者解説が聞きたいです。
大崎:普通ここで45桂ですよね。そういう作品って年1くらいで見るんですよね。ヤン詰とかで。
シ:この・・・森田というのか。
大崎:ブルータスというのか・・・。
シ:これもブルータス?この構図でいうと64角~55香って上がって37歩を打歩詰にするのがブルータスのイメージなんです。45桂をアンピンしてるから森田っぽく見える。
大崎:なるほど、ブルータス森田みたいな手だ。まあブルータスとか森田とか意識せずに作ってますね。
シ:54桂合とするのは、つまり・・・同馬だと今度こそ45桂合ができる。
大崎:そうそう。
シ:でも同香がある。取らせ合駒を、王手駒と別の駒で取るっていうのはどうなんでしたっけ。
大崎:まず若島作もそうですね。
シ:そうでした。そこじゃないか。
大崎:僕の中では、よくある構図、よくあるテーマに取らせ合が組み込まれているところに面白さがある。
シ:若島さんの解説は?
大崎:「取らせ合駒という珍手筋で、その意味付けが新しい」
シ:意味付けってどういう意味付けですか?ラインを遮断できなくするってこと?
大崎:ちょっと待って。
シ:アンピンを不可にするためってことですかね。
大崎:そうかな?
シ:いや、同香で比較したら45桂合を出さないための取らせ合駒ってことか?まあちょっと難しいんでそこは置いとくとしても、まとめ方が完璧やなと思って。
大崎:そうなんですよ。
シ:テーマも良いんですけど纏めが凄い。銀生も限定ですし、飛合が出てきて、最後もまた・・・。
大崎:打歩を打開して詰まなきゃいけないんですよね。セオリーとしては。
シ:なるほど。そうですね。
大崎:たまたま飛合と馬捨てが付いてきて。これはほんと狙ってなくてラッキーなだけなんですけど。
シ:めちゃくちゃうまいじゃないですか。
大崎:最初の想定としては75馬、同銀とかでさ、戻して詰むみたいな。柿木将棋に言われた気がしますね。飛合成立してますよって。
シ:めちゃくちゃ運良いじゃないですか。
大崎:嬉しかったですね。

シ:これで用意してた棋譜ファイルは終わりました。あと質問がいくつか残ってるんで、それだけやらせてください。好きな構想作家については既に聞けたので、好きな構想作ってありますか。
大崎:図巧1番ですわ。なんか好きな図巧の作品を聞かれて1番と答えてるようじゃまだまだっていう話もあるけど、結局1番よ。
シ:なるほど。趣向作にも見えますけどね。92の打歩打開の構想として見ているわけですね。
大崎:凄すぎる。僕は『近代将棋図式精選』で育ったんですけど、角を馬にしてる作品とかも載ってたりしてさ。
シ:般若一族ですよね。
大崎:そういう意味で、構想作の発展の仕方みたいなものも教えてくれた作品ですね。図巧1番は初形が美しく感じますよね。品があって。何よりも1番っていうね。
シ:置く順番の問題ですか(笑)。
大崎:看寿も自信あったんでしょう。そこも含めて完璧。
シ:好きな構想作は図巧1番ということですね。
大崎:好きな料理聞かれて、から揚げって言うのもな、みたいな。カレーライスっていうのもな、と思う人もいるだろうけど、そこで胸を張ってカレーライスと言う。好きな映画聞かれてさ、胸を張って「ショーシャンクの空」と言う。そういう人間になりたいですね。
シ:なるほど。痺れました(笑)。

シ:次の質問にいきます。サイコロトークってどういう経緯で始まったんですか?
大崎:うま研っていって、馬屋原さんと久保さんと、イノテツさんもいたかなあ。集まりがあったんですけど、それが無くなって、馬屋原さんも活動も無くなって、でも喋るの楽しいんですよね。喋る機会を設けたくて始めました。ほんとはYouTubeの配信とかでも良いんですよ。
シ:YouTubeだとちょっと喋りにくくなりません?失言とかしそうで。
大崎:生じゃなくてもさ。詰将棋YouTuberとして雑談ラジオとか。
シ:なるほど。めっちゃ良いですねそれ。やってくださいよ。
大崎:面倒くさいんですよね。編集とか。喋って書き起こすほうがまだ楽。
シ:サイコロトークは続けてくださいね。
大崎:いやなんかさ、馬屋原さんも復活して、久保さん、馬屋原さん、イノテツさんも日々詰工房とかでやってるじゃないですか。なんか嫉妬じゃないけどさ。入るところがない・・・。
シ:可愛いですね大崎さん(笑)。
大崎:今更声かけてもなんかさ。
シ:なんで距離感を感じてるんですか。
大崎:相手からすると「もう喋ったわ」みたいな。「もう6月号の話したわ」みたいなさ。
シ:好きな子と1年クラス離れたせいで今更話しかけづらくなったみたいな(笑)。大崎さんがそんなこと思う人間だったとは・・・。
大崎:サイコロトークはもうちょっと面白くて永続的なコンテンツにしたいですね。
シ:みんな面白いって言ってますよ。
大崎:ありがとうございます。
シ:元の想定ほど上手くいかなかった感じなんですか?
大崎:いや、想定通り面白いんですけど、マンネリというか。
シ:ゲストとか呼んだら良いじゃないですか。
大崎:それでこの前kisy呼んだんですけど。ほんとはね、詰将棋YouTubeをやりたいんですよね。
シ:YouTubeでも良いんですけど、いずれにせよ企画が必要ですよね。とりあえず、もう1回サイコロの形式でトークしてみたらどうですか。最近サイコロと関係ないことをやってますし。
大崎:確かにね。基本に立ち返ってみますかね。
シ:そうだ、新人賞のやつとかめっちゃいい企画だと思いましたよ。
大崎:そうでしょ。絶対嬉しいと思ったんですよ。詰将棋の普及がしたいわけではないんですけど、何かを提供したい気持ちだけがあるんですよ。

シ:最後に、1番の代表作を最後に教えていただければと思います。
大崎:みんなそれってパッと出せるものなんですか?
シ:過去インタビューした人はみんなパッと出ましたね。
大崎:代表作?次回作かなあ。
シ:「夢の華」みたいな?(笑)
大崎:ほんとだ。同じだった。
シ:前例あるんで却下で。
大崎:恥ずかし~。「夢の華』と同じかこれ。
シ:ここでも「いただき」が出ちゃいましたね。
大崎:やっぱり僕は山田修司の影響が大きいなぁ(笑)。うーん代表作か。いま投稿中の2作はかなり好き。
シ:それは楽しみですね。
大崎:あ、でも1個・・・『さんらん』だったかな。そこに収録されてるこの作品ですね。

【代表作】

詰パラHP 2002年11月

シ:初めて見ました。解いてみますね。
(数分後)
シ:あ、51龍までか。

42龍、同玉、31飛成、52玉、62桂成、同馬、
53歩、同馬、51龍まで9手。

大崎:そうです!『夢銀河』だったかなぁ。
シ:『夢銀河』に大崎さんって載ってなかったと思いますよ。『さんらん』は持ってないので分からないですけど。
大崎:代表作はこれかな。まあ本当の代表作はいま投稿中ですね。
シ:投稿中のを抜いたら代表作はこれになるんですね。
大崎:まあ代表作というかお気に入りというかね。
シ:紛れですよね。63銀成から入ったり、51桂成から入ったり、41飛成から入ったりってことですよね。確かにこの形で一桁手数やのに結構悩まされたんで、作者の思惑に嵌ったとは思いましたが、これが代表作とは意外でした。構想作で来ると思ってたんで。
大崎:そういう意味では、満足いく構想作が作れてないのかもしれないですね。流崎。にしても構想は新しいと思いつつ。初形に品が欲しいんですよね。
シ:図巧1番みたいな。
大崎:そうそう。

シ:そろそろインタビュー終わりにしますか。4時間近くになっちゃいました。ありがとうございました。
大崎:ありがとうございました。


★最後に特別出題の解答発表です。

【特別出題 解答】

★おそらく作者が最初に手がけた煙詰。これからじっくり解説していくことにしよう(まさか私が煙詰を解説する日が来るとは・・・)。

99龍、68玉、67と、同玉、66と、同玉、
55銀、

[途中図1]

★と金の塊をほぐしていき、8手目77玉というのが最初の変化。作意が75玉なのは明らかなので読み飛ばしても良いのだが、74角の顔を立てるためにも詰ませておこう。79龍、86玉、88龍、87歩合、85と、96玉、98龍、97歩合、95と、同玉、97龍、84玉、86龍、93玉、94歩以下。98龍で一歩稼がないと詰まないのでちょっと大変な変化だったが、これで最初の山を突破できた。

75玉、95龍、74玉、73桂成、同玉、
83歩成、同と、同と、同龍、74歩、同龍、
72銀成、同玉、92龍、71玉、61歩成、同金、
同香成、同玉、52龍、同玉、53金、同金、
同歩成、同玉、

[途中図2]

★そこからは清算を含みつつ32手目まで自然な進行だ。左半分の駒を捌き切って、さあどうするか。この局面では63金と捨てるのが良い。同龍には同馬でまた清算・・・ではなく、44馬から3手詰。よって43玉とかわす。続けて54銀と捨てるのが詰将棋らしい好手順で、同龍から53金打とすれば、もう32玉とは逃げられない。飛を召し取って、いよいよ最大の山場を迎えることになる。

63金、43玉、54銀、同龍、53金打、同龍、
同金、同玉、63飛、52玉、51と、同玉、
41歩成、同玉、43飛成、31玉、21と、同玉、
41龍、

[途中図3]

★ここで実は22玉が作意なのだが、私の第一感は合駒だった。まず31香合を詰ませてみよう。54馬、22玉はこれ以上進展がなさそうだ。ここは13桂と捨てるのが好手。取ってくれたら今度こそ54馬なので22玉だが、馬が45に残っているため23と捨てが成立する!同玉は34馬以下、同とは21桂成、同玉、54馬、22玉、32馬、同香、11龍まで。これはなかなかの好変化と言えよう。

★さて、31に打てる合駒は香だけではない。先ほどの変化手順中の21桂成を取り返せるように31飛合(金合は54馬~31龍)とするのが強靭なディフェンス。これで13桂以下の筋は詰まなくなってしまった。しかし面白いことに、今度はいきなり54馬とする手が有効になる。22玉に対して13と、同とのジャブを打っておくのが肝要で、以下31龍、同玉、21飛、42玉、22飛成、51玉、43桂、61玉、72馬まで。

★これでようやく作意が22玉と分かったわけ。結構読まされて冬なのに汗をかいた。

22玉、13と、同と、同香成、同玉、
25桂、同桂、14歩、同玉、25と、同玉、
34馬、36玉、

[途中図4]

★同香成、同玉の時点で玉の周辺に攻方の利きが無くなり、ちょっと捕まり辛さを感じる。11龍としてみたいが、12桂合が限定合で逃れ。つまり14歩、同玉、12龍、13歩合と進んだ時に持駒が桂2枚になって頭に叩く駒がないのだ。少し捻って、25桂、同桂、14歩、同玉、12龍という追い方も考えられるところで、ここも13歩合だと詰んでしまうのだが、香合か桂合をしておけば大丈夫。

★作意は25桂から14歩。25で桂を召し取って34馬と指せば、いよいよ下段の収束ブロックが見えてきた。長い旅もゴールを迎える。

45龍、37玉、49桂、同成香、38歩、同金、
同と、同玉、16馬、28玉、29金、同玉、
49龍、39飛合、38馬、18玉、19香、同飛成、
同龍、同玉、29飛、18玉、28馬まで87手。

[詰上り図]

★桂捨てで成香を呼び、最後は飛合が出てきて幕。
★総手数87手は煙詰としては相当短い部類か?

★それでは作者の言葉を。

作者―ただ煙るだけなので投稿先が無い煙詰。

★確かに、今の目で見ると取り柄に乏しい煙ということになるでしょうか。厳しい時代ですね。ただ、中盤の変化紛れの綾は面白く、新作にはなっていると思います。

★図面と作意を再掲しておこう。

99龍、68玉、67と、同玉、66と、同玉、
55銀、75玉、95龍、74玉、73桂成、同玉、
83歩成、同と、同と、同龍、74歩、同龍、
72銀成、同玉、92龍、71玉、61歩成、同金、
同香成、同玉、52龍、同玉、53金、同金、
同歩成、同玉、63金、43玉、54銀、同龍、
53金打、同龍、同金、同玉、63飛、52玉、
51と、同玉、41歩成、同玉、43飛成、31玉、
21と、同玉、41龍、22玉、13と、同と、
同香成、同玉、25桂、同桂、14歩、同玉、
25と、同玉、34馬、36玉、45龍、37玉、
49桂、同成香、38歩、同金、同と、同玉、
16馬、28玉、29金、同玉、49龍、39飛合、
38馬、18玉、19香、同飛成、同龍、同玉、
29飛、18玉、28馬まで87手。

★それでは解答者の皆さんの短評を。

冬眠蛙―実家帰りのバスで解きました。41龍に飛合のときの13と捨が見えず、あれ、どこで間違えた?と悩みました。25桂~14歩もギリギリの細い手順で、長い道中、退屈せずに済みました。

ほっとー自力で解きました。煙詰としては短手数ながら、意外と考えどころが多くて悩まされました。既成手順はほぼ無く、短編的な打ち捨ても散りばめられており、良い出来と思います。
印象に残った箇所としては
・33~37手目 63金打~54銀~53金打
・52手目31合の変化
・59手目14歩を取らずに逃げる変化
辺りでしょうか。
今後は堂々と煙詰作家を名乗っていいと思います。

★大学院担当のお墨付き!

馬屋原剛―柿木で鑑賞しました。序と収束の場所が近いので、成香を動かす伏線が入ればいいなと思いました。妄想ですが。

★煙では序と収束をリンクさせるような伏線を入れておくのが定跡なのでしょうか?有名なところでは伊藤正さんの「天女」(詰将棋パラダイス1983.11)などがそういうパターン。

★短評をくださった御三方、ありがとうございました。
★厳正な抽選を行った結果、当選者は冬眠蛙さんになりました。

★Xで「何かあげます」と書いたのですが、大変申し訳ないことに、今のところ賞品の準備がありません。出世払いとさせてください(笑)。何年後になるか分かりませんが、私の作品集が出た時に贈呈させていただきます。

★それでは、これで大崎壮太郎インタビューを終わりたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。感想はnoteのコメント欄かXでお願いいたします。

★次回の収録はまだしていませんが、近年話題沸騰のあの人にお話を伺うことを予定しています。お楽しみに!

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