The Problemist 2014.11 後編
Selected Problemsの続き。
久しぶりにStudyを1作紹介しよう。
Martin Minski
4th Prize ARVES Jenever Tourney 2014
Win
1.g7 Ba2というのは普通の序奏。続く2.c4!のNovotnyが作者の狙い第一弾である。これを2...Rxc4と取ると3.g8=Qで簡単で、2...Bxc4も3.Kh4以下早い(Novotnyの効果でRxd4の受けがない)。そこで黒は工夫して2...Bd6+ 3.Kh4 Bg3+ 4.Kxg3と黒Bを原型消去する。以下4...Bxc4 5.Kh4 Ra5。Bを消したことでRの利きをg5まで通したのである。さて、この局面には妙手があるが、流れに沿ったものであり発見は容易だろう。6.d5!、この2度目のNovotnyが決め手であり、6...Rxd5/Bxd5 7.g8=S/g5#でWinだ。
Novotnyの繰り返しというテーマをシンプルに描いた好作品。
Marjan Kovacevic
1st Prize Chepizhny-80 JT 2013-2014
S#6
詰上りの形はRg5かRh6しかない。黒の駒は2枚ともpinされているのでこれをどうやってunpinするかが問題となっている。特にRの方は黒Kをラインから外さなければならない。
まず1.Bf6でSをunpinする。同じようでも1.Sf6では1...Sxd8と取られてダメなので注意だ。以下1...S~ 2.Bh8+ Sf7 3.Sf6と今度は白Sで黒Sをunpinし、3...S~ 4.Se8+ Sf7 5.Sg7+ Kf6。BとSの位置を変え、ついにe6への2枚の利きを両方外すことができた。これで黒Rがunpinされ、当初の目標6.Qg5+ Rxg5#が達成される。
さて、手順中に2度出てきた黒Sのrandom moveについて、correctionがあるので確認しよう。まず3...Sxh8とBを取る手。この時は4.Re4!でe-fileを押さえ、4...Sf7 5.g4+ Kxf6 6.Qh6 Rxh6#という手順があって詰み。
もう1つのcorrectionは1...Sh8として2.Bh8を潰しておく手だ。それには2.Se8 Sf7 3.Sdc7!とSでe6を押さえて、3...S~ 4.Bh8+ Sf7 5.Sg7+ Kf6 6.Qg5+ Rxg5#という風にメイトに持ち込める。勿論この手順の3手目にもcorrectionがあり、3...Sh8がそれなのだが、対して4.Qf2!が絶妙手。以下4...Sf7 5.g4+ Kf4 6.Bg5+ Rxg5#までだ。
unpinのための試行錯誤、黒のSh8という受けに対する3パターンの白の着手が楽しめる秀作。
Frank Richter
Special Prize Sochi Olympic Tourney 2014
S#13
1.Bd3 (2.Bxd2+ exd2#) Rh1
2.Bh7 (3.Qxd2+ exd2#) Rh2
3.Qg7+ e5
4.Qg4 Rh1
5.Qd7 Rh2
6.Bd3 Rh1
7.Be4 Rh2
8.Qc6+ Kd4
9.Qd5+ Kc3
10.Bd3 Rh1
11.Qxe5+ Kxd3
12.Qd5+ Kc3
13.Qxd2+ exd2#
d2のSを取ってexd2までが狙いだが、その実現に13手もかかるという作品。まず、Bを邪魔にならないように最遠移動し、その内側をQがRundlaufするというが妙手順。その上でBを元の位置に戻し、7手かけて初形から黒Pを1つ吊り上げることに成功したわけだ。その意味付けは9.Qd5+で明らかになる。最後は白Bを取らせて無理矢理Qxd2を決めてセルフメイト。収束は少し長い感じもするが、とにかく序盤の手順が面白い。