しつけ糸
東京書房の現代国語高校1年の教科書に載っている、こそそめスープの話を覚えているだろうか。
コンソメスープのンとソを見間違えて、
ずっとこそそめスープだと思い、大学生になってから初めて、コンソメスープはあるけれど、こそそめスープはない事を知る話。
高校の教科書でも、東京書房以外は内容が違うだろう
これは単純に似ているンとソを見間違えたもので、初めに見たものが手書きだったのか、フォントだったのか知らないけど、
筆者は見間違いをしたのだ。
そういえば子供の頃、『ツ』と『シ』を書く時に、きちんと差をつけるように、先生が教室で厳しく指導していた事を思い出す。
ツとシを間違えると、ツツジ(つつじ)が
ししじになったり、つつづになったりする。
しっかり読めばカタカナは普通は分かるけれど、パッと見て思い込んでしまう場合があるんだろう。
私も勘違いしていた事がないか考えたところ、しつけ糸について勘違いしていた事を思い出した。
これは読み方ではなく、
用途についての勘違い。
しつけ糸
家庭科でしつけ糸の用途について教わったんだろうけど、たまたま聞いていなかったか、その部分を私は読まなかったんだろう。
私はしつけ糸とは、きちんと縫う糸だとずっと思っていた。
子供をしつける、と言うから、しつけ糸とはしっかりと、きちんと糸で塗う糸の事だと思っていた。
手芸屋さんに糸を買いに行って、糸を選ぶ時、しつけ糸を見つけると「あった」と買っていた。
家で何か縫っていると、糸がプチっと切れた。
「最近の糸は切れやすいんだな。不良品かも。」と思って、縫い物はうまくいかなかった。
それを母に言って見せると「何だしつけ糸じゃない。これじゃあすぐに切れるわ。」と言われ、えっ?しつけ糸って縫うためのものじゃ無いの?とそこで驚いた。
調べると、しつけ糸とは簡単に留めておくためのものだと言う事が分かった。
子供のしつけとは大違いだ。
子供のしつけとは、簡単に留めておくものではなく、間違えると取り返しのつかないような、きちんと織り目正しく教えるものだ。
私が家庭科の教科書をよく見なかったんだろうけど、仮止め糸と名付けてくれたら分かりやすかったのに。
でもそこには、きっと『しつけ糸で仮止めをしましょう』と書かれていたのかもしれない。
元々家庭科は得意ではなかったので、裁縫箱の中にはいまだに使い方のわからない道具がある。
大人になって、時々ボタン付けぐらいはするけれど、手芸屋で間違えてしつけ糸は買わなくなったし、ちゃんと縫い糸で縫うようになった。
なので糸は切れない。
知識とは学校の教科書を学べば身につくし、本を読んだり、興味があることについて自分で調べたりしていくうちに覚えていくもの。
家庭の中でも教えていくものだ。
私は最近、よくこの社会をうまく生き抜いてきたな、と自分で感心する。
知らない事が多いからだ。
それは言葉がよくわからない地域に行って体当たりで生きていく事に似ている。
英語も適当な単語だけでやり過ごし、あとは身振り手振りで全て何とかしたパラオ時代もそうだった。
知識を増やせばもっと自分の世界観が広がるだろう。
だから私は勉強をする。