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【エッセイ】良質なザマアミロを求めて

夜型人間です。
13時に起床し、バイトへ。23時ごろ帰宅し、そのまま朝まで作業。だいたい6〜7時に就寝するという生活を、かれこれ2年以上続けています。
そもそも人間は、先天的に朝型か夜型が決まっている、という定説があります。
これはかつて狩猟民族だった時代、昼夜交代で狩りに出たり、寝床の見張りをしていた名残だそうです。
僕の先祖はさぞ、夜のスリリングな狩りを楽しんでいたことでしょう。

ただ、僕が夜型を選ぶのにはもうひとつ理由があります。
とにかく街に人が少ない。
昼間は家族連れや学生でごった返しているマックやファミレスは、まるで自分のために営業しているかのような人の少なさ。
車の通りも少ないので、夜のドライブは最高です。
そんな快適さを味わうたび、「ざまあみろ」という感情が胸に湧いてきます。
心底性格が終わっています。でも、思っちゃったんだからしょうがない。
昼間の窮屈な世間しか知らない人々に比べて、自分はこんなにも優雅な街を闊歩しているんだという、小さな小さな優越感。
これこそが僕を、日々の劣等感から解放してくれる唯一の救いになっています。

このエッセイを書くにあたり、今一度この感情について深く考えているのですが、なんだかそんなに悪いことじゃないような気がしてきました。
だって、誰も傷つけていないし。
僕が勝手に昼間の世間をドロップアウトして、許される環境の中で夜を謳歌している。
しかも今は人混みが悪とされるご時世にまでなりました。
率先してピークシフトを行う自分が高尚な人間にすら思えてきます。
そして心の中だけで、小さくガッツポーズをする。
こういう些細で人畜無害な「ざまあみろ」をどれだけ集められるか、というのが人生のテーマである気すらしています。
カーナビの到着予定時刻より速く着いたときの優越感、皆さんも経験があると思います。
そういう感じ。
少なくとも僕は、心の機微に目を凝らしてそういった一瞬をつぶさに記憶しておかないと、すぐにダメになってしまう人間です。
その鉱脈を夜に見出した、というお話。

「花柄の気分もまた一日のうちたった六秒」

THE YELLOW MONKEYの『プライマル。』に出てくる生涯ベストパンチラインです。
一日のうち、ほんの一瞬だけ手放しで人生を肯定できる時間帯があります。理由は分からないけど。
太陽の遷移や人の往来がない分、夜はこの六秒が時に十秒や十五秒になってくれる気がします。

(完)

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