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美しく彩られし貴き世界ーー『冬色シンフォニーII』
今野美彩貴さん 脚本家デビューに寄せて
9月、三栄町LIVE『見上げた先の花曇り』が千穐楽を迎える前に発表された『冬色シンフォニーII』
(え?脚本!?……今後の活動……そういうことか)
また美彩貴さんが生み出す新しいものを見て、感じて、生きていける
気持ちが高ぶった一方で、『花曇り』の千穐楽でもらった美彩貴さんの作品、「死」という言葉が気になってしまった
(こういう言葉が出てくるのはなぜなんだろう)と疑問だったんだ
今回初日に話を聞けて、当初の疑問と不安は吹き飛んだ
大学で「安易に作品と作者を結び付けた作家論に陥るな」と習ってきたのに、陥って余計なことを考えてしまっていたかもしれない
ただ美彩貴さんの作品に、美彩貴さんが紡ぎ出した言葉に心を掴まれた衝撃は大きかった
美彩貴さんの作品から「命」を考えることになったんだから
これまで他の人の作品でも「命」をテーマにしていたものはいくつもあって、見る度に心を掴まれ時に苦しくなっていたのに
まして、このnoteに作品の感想と合わせて美彩貴さんへの想いを綴る度に過去の傷を見せつけてしまう自分が、大きく重なって見えて切なくなってしまった
でも結末を前向きに捉えることもできた、素敵な作品だよ
俄然『冬色シンフォニーII』への期待が大きくなってた
そして迎えた11月26日、遂に美彩貴さんが書いた脚本が、実際に舞台になる
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『冬色シンフォニーII』初日
⑦『みかん戦争』
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初日、実にまったりした時間が流れていた気がした
ホームドラマを見ているような、そんな気分
ここ数年、そんな穏やかな年末年始を過ごしていないような気がして、少し昔を懐かしく思ってた
みかんを巡ってゲームや尻相撲を繰り広げる女子大生たち、楽しそうだった
山田さんの美卯、7月の『最後の一票』紗綾のサイコパスっぷりとのギャップが見ていて面白かった
劇場隣のローソンストアに並んでいたみかんがおいしそうだった(買ってないけど)
⑨『最後のバレンタイン』
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主人公の加賀さん、健気な姿に心の中で(うまくいってほしい)と応援してたけど、ちゃんと伝えられる子で安心した
女子高生の人間関係、個人的にいろいろ思うところがあって、(ああ……)って思ったり、(わかるわあ)と思ったり
岩寺君がしっかりしてて感心したし、展開やオチも明快で面白かった
⑩『アイする人とクリスマスを』
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出演・今野美彩貴 (胡桃秋果)
今回の本題
(これはコメディなのか?)っていう初見のインパクトは強烈だった
美彩貴さんが描く「命」の物語、心を掴んできたんだ
"ウケツケ"で天国へ行くか地獄へ行くかを自分で決める、って最初の説明、『誤解のBar』を思い出しながら見てた
美彩貴さんと初めて会った作品を思い出して、もうそこから引き込まれてる
「31階=生き返る」ことはできないってのは違うけどね
タイトルから見えたのは「アイ=愛」
父と娘、恋人同士
大切な人と特別な時間を一緒に過ごしたいというのは、人間にとって自然な感情だと思ってる
旅立ってしまった大切な人と、死後の世界で再会できるのかなって想像、生きている方はよくすると思うし、切ないけど温かい気持ちになるよね
ただ、それが歪んだものになってしまうと、「アイ=I」つまりは「自分」で選ぶはずの道も決められなくなってしまう結末が待っていたのは、何とも皮肉だと思った
なぎさへの「愛」が浅葉への憎しみと表裏一体のものとなってしまった謙信は、強制的に地獄行きになった
浅葉は結果が明示されることもなく、消えてしまった
どちらも「自分」で決めることができなかった点は共通しているが、この扱いの差は生前の行いに「愛」があるかないかで決まったのだろうか
浅葉の行いは救いようがない、天国にも地獄にも行く資格がないということなのか
(台本読み返してみたら、浅葉だけ季節が名前に入ってないんだね)
さらに言えば、なぎさと百合のカップルは言及されることすらなかった
「生前に人を殺した」その上さらに自分の命を他人に委ねてしまった、「愛」も「I」もなかったせいなのだろうか
3人は何処へ行ったのか、五十嵐だけは答えを知っているのか
胡桃は目的を果たすまで「自分」を貫いて、「愛」にたどり着けるのか
「自分」を生きることができない脆さ、人間の弱さ
「愛」のかたち
「命」の儚さ
美彩貴さんの作品から様々なことを読み取り、考えているこの時間を貴いものに感じてる
人間誰もが迎える「死」さえ、ただ悲しいだけで終わらせることなく、美しさを纏わせ彩ってしまうあなたの世界観に惹かれてる
俺は美彩貴さんの色を、もっと知りたい
また新しい物語が生まれたとき、その世界に触れていたい
その日を迎えられることを楽しみに、現実の世界も一緒に生きて支えたい
今回の『冬色シンフォニーII』、美彩貴さんの脚本家デビュー、大切な時間を一緒にお祝いできたことが心から嬉しく、幸せです
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7月と同じ花屋さん
今回もイメージ通り素敵に仕上げてくださいました
3本それぞれの全く異なる色、美彩貴さんが紡いだ言葉、創り出した世界
自分の言葉を人に伝え、まして人を動かすことがいかに大変で難しいことか
言葉を使うことを日常的にやっている身として、そういう困難を感じるときが確実にある
それでも伝わったときの安心や、心が温かくなる感覚は、何ものにも代えがたい喜びであることも事実
俺には美彩貴さんの芝居、言葉、創り出したものはちゃんと伝わってるし、いつも支えてもらってる
脚本だけでなく、これまで通り魂の込められた全力の芝居が見られて嬉しかったし、役毎の衣装もかわいかったし、心から楽しいと思える時間を過ごすことができました
本当に、何度言葉にしても足りないくらい、「ありがとう」と「大好き」をいつも心に置いて、生きています
自分の言葉を真剣に受け取り、「大好き」と言ってくれる人は何人かいるけれど、自分から「大好き」を直接伝えられる人は、美彩貴さんだけです
出会って1年と半年、これからも素敵な思い出をたくさん作ろう
いつも支えてくれてありがとう
俺は美彩貴さんを、心からアイしています