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Ce(III)がCe(IV)に酸化されると色が変わる?

CeO2のナノ粒子について書かれている。Ce(III)を含むナノ粒子を過酸化水素で処理するとCe(IV)になる。このとき無色から黄色になるのだが,光触媒で使用している粒子(ナノ粒子というには大きいと思うが)のときと振る舞いが違うな。なんだこれは。引用元の論文はこれ。ref. no. 53である。

ここからは引用元の論文の内容だ。酸化セリウムのナノ粒子を合成した。XPSによってCe(III)とCe(IV)の混合物であることがわかった。XPSは表面の数nmしか観察できないことは気をつけないといけない。HR-TEMでは,粒径が3 - 5 nm とのことなので,おおよそバルクまで観察できていると思って良いのだろうか。

この酸化セリウムナノ粒子の水溶液(懸濁はしていないので,おそらくコロイド溶液)は「無色 - 薄い黄色」である。ここに過酸化水素を加えると,「深い紫色 - 黒色」になる。これは過酸化水素が開裂して生成した水酸化ラジカル(OH・ー)によってCe(III)がCe(IV)に酸化されたためであると書かれている。これを放置しておくとCe(IV)がCe(III)へと還元されて,薄い黄色になるため,繰り返し使用できると書かれている。Ce(III)が無色で,Ce(IV)が黄色であると主張しているが,ならば紫色になるのはなぜなのだ。

彼らの論文の主張には,合点がいかないところがある。

  1. 過酸化水素の酸化還元電位的にCe(IV)がCe(III)に還元されると思う。酸化還元電位については調べておく必要があるが,昔から滴定で使用されているのではないか。

  2. 空気中に放置しておくとCe(IV)がCe(III)へと還元されるというのは不自然である。逆に,Ce(III)がCe(IV)へと空気酸化されたというのであれば自然である。

  3. Ce(III)が無色なのであれば,全てのCeがCe(IV)で存在するセラミック(CeO2)が白色なのはなぜだ。

以上のことから,この論文を鵜呑みにして引用することは,今の段階ではできないな。


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